第14話 推しをぐちょぐちょにして欲しいんです ※フローラ視点

 庭が見える席についた私達は椅子に座ったが、カイトだけはわざと席を少し外して座っている。


「あら? カイトはなぜ少し席を離すのですか?」


「いや、マリアさんーー」


「ーーマリアです」


 いまだ慣れてないのかカイトはマリアをさん付けで呼ぼうとするとそれに被せるようにマリアは訂正させた。


 私は目の前にいるマリアこと、チ○ポッコン先生に影響されて、前世ではいつのまにか腐沼の貴腐人会に入会していた。


 初めて会ったのは入寮のタイミングで部屋に訪れたときだった。


 私は有名な大人気乙女ゲーム"恋する魔法学園"の世界に転生したことは知っていた。実際はお願いして転生させてもらった。


 正直悪役令嬢であるマリアに虐められる覚悟を決めて、この学園に編入したが、実際のマリアは前世で憧れであるチ○ポッコン先生だった。


 彼女の机には隠された原稿が何枚もあり、入寮した時に見つけてしまったのが、ことの始まりだった。


 そこから同じ転生者で趣味が共通しているとわかったら、打ち解けるまでには時間は掛からなかった。


「フローラ嬢もそんなに離れていないで近くに来なさい」


 私もマリアに勧められて隣に座っている。立場が違うゲームのヒロインである三人がこうやって集まることは、ゲームの世界ではなかった。


 BLルートの攻略対象ルートがプレイヤー自体何ルートあるのかわからないゲームだった。だから、その中の一つにはこういう展開もあったのだろう。


 そもそも私とマリアの攻略対象が数人なのに、BLルートだけ100近くはあった。


 用務員とのBLルートとか、誰得なのかわからないのも存在している。


「それでなんでカイトは少し離れていたの?」


「あー、それは俺も思った! 今日も一緒にご飯を食べようと思ったのにもういなかったし!」


 クラウスはカイトと昼食を食べようとカイトを探した。だが、カイトは先にどこかへ行ってしまい食堂に来ていた。


 クラウスは前世で私が推していたキャラの一人だ。実物で見た時は感動するぐらいだった。


 すぐに脳内カップリングで彼を犯しまくったぐらいだ。


 そんな彼はどうやら私達ヒロインより、BLルートのカイトを気に入っているようだ。


 それだけで脳汁が溢れ出してきそう。


「いや、僕はモブなので……」


「モブ?」


 まさかカイトから"モブ"という言葉が出てくるとは思いもしなかった。マリアも同じことを思ったのか目が合ってしまう。


 ああ、チ○ポッコン先生、今日も目がバキバキで可愛らしいです。


「モブとはなんだ? 私も知らない言葉だがマリアはどうだ?」


「私も知らないですわ。モブって結局なんですの?」


 咄嗟に演技をしたマリアが代表で聞くことにした。ひょっとしたらカイトも転生者の可能性があった。


「モブってクラスの縁にいる目立たない人らしい・・・です。僕は皆さんみたいにキラキラしてないので縁で見ているだけでいいんです。むしろ僕は目立ってはいけない存在です」


 私やマリア以外も思っただろう。どの口が言ってんだと。カイトはモブにしておくのが勿体無いほど見た目が美しい。


 女性ヒロインである私達なんか、カイトの隣にいたらカイトの眩しさにホコリぐらいにしか思われないレベルだ。


 カイトは恋学の中では他のキャラと違って名前が与えられていない。


 それがこの世界では"カイト"という名前が付けられていた。単純に乙女ゲームであるモブが攻略対象者達と触れ合うことで、モブとしての役割に戻ろうとしているのだろう。


 実際にBLルートをプレイしていた時も、たまにモブとしてひっそりと隠れようとする場面があったから大変だったのを覚えている。


「それでカイトは離れてるのか。ちょっと寂しいから俺もそっちに行くわ」


 クラウスが椅子から立ち上がり、自然とカイトの隣に座る。それに合わせてタンジェも立ち上がり、カイトはクラウスとタンジェに挟まれていた。


 ぐふふ、まさかカイトの取り合いが目の前で起こるとは思いもしなかった。


 日常の中で急にBLイベントが起こるため、私とマリアは目が離せない。だから、マリアはいつも目を見開いて血走ったような状態だ。


「あー、君はカイトが言ってた友達かな? うん、ここは僕が隣に座るから友達と座ってていいよ?」


 タンジェは若干クラウスに圧をかけながら話していた。


「いや、だからその通りに友達・・であるカイトの隣に座っているんですよ? むしろお兄さんが弟離れした方がいいんじゃないですか?」


 それに負けじとクラウスも言い返していた。私は心の中で推しであるクラウスを応援している。


 だが、最近は3Pの良さを学んだからこのままクラウスもぐちょぐちょにしてもらっても構わない。


「そう、カイトの友達・・なんだね。 それじゃあ、カイトの友達・・として一緒に食べてもらおうかな?」


「そうですね。まぁ、今は友達・・・・ってだけですけどね」


「フローラさん……」


「ええ、マリアさん。私も思いました」


「クラウス×タンジェさん良いわね」

「タンジェさん×クラウスもいいですね」


 マリアと同時に発言したが、少し好みが異なり顔を見合わせていた。まさかマリアはタンジェを受けにしたいとは……。


「えっ、フローラさん? そこは年下のクラウスが攻めじゃなくって?」


 確かにチ○ポッコン先生の漫画では年下大型わんこ攻めもあった。だが、できれば私は推しが攻めているより、ぐちょぐちょにされているところが見たいのだ。


 気づいた時には私とマリアでBL論争となっていた。


「やっぱりここはカイトが居て取り合いながらの仲良く3Pが無難かしらね」


「私もそれが一番王道だと思いました」


 貴腐人は根本のBL好きは変わらないため、言い合いしたとしても固い友情の握手をすればまだ通りだ。


 いつのまにかカイトはひっそりといなくなっていた。いなくなったことに気づいたクラウスとタンジェはどこか悲しそうだった。


「ねぇ、あの二人が儚いわよ」


「ああ……推しが悲しんでるわ」


 BLモブルートは思ったよりも攻略難易度が高そうです。

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