第15話 -イベント2- 魔法実技 ※一部マリア視点

 今日は学園に入学して初めての魔法実技の授業だ。


 魔法実技は全クラス合同で各々自身の属性にあった教員に指導される。基本的には行う場所は同じで魔法訓練場で行なっている。


 そんな中、僕は保健室の先生に教えてもらっていた。


「カイトくん初めまして。光属性魔法教員および保健室の先生をやっているホバードです」


 声をかけたのは今にも後光が差し混みそうなほどキラキラしている男性だった。一言で言えば天使と思うほどだ。


 ついつい僕の目も奪われてしまう。


「そんなに見つめられても困るよ? 子猫ちゃん」


 ホバードは僕の顎を掴み、顔を上に上げて優しく見つめる。ここまで顔を直視すると、本当にあまりの眩しさに目が開けられないほどだ。


「本当に光属性魔法に適した見た目と可愛さだね」


「ありがとうございます?」


「いえいえ、良ければキスの一つでも貰おうかな」


 そう言ってホバードは顔を近づける。


 その瞬間、周囲から黄色い歓声が聞こえてきた。その中でも一際目立っていのがマリアとフローラの声だ。きっと自分の見た目の良さもわかって、人を誤解させるような行動をしているのだろう。


 それにしても、モブが魔法訓練場の中心でこんなことをしてはいけない。


「ホバード先生質問いいですか?」


「カイトくんどうしたんだ?」


「僕以外に近場に誰も居ないんですか」


 僕以外には誰もおらず、他の教員のところには十人程度は集まっている。


「光属性魔法って基本的には珍しいし、純潔じゃないと取得しづらいってこともあるからね」


 光属性魔法を使える人が学園内にも少なく、この学年には僕しかいないらしい。


「でも、カイトくんは髪色の色素も薄いから能力は高いと思うよ」


 魔力に比例して髪質や髪色に影響されることが多い中、光属性は髪色が薄くなりやすい特徴がある。


「でもホバード先生ってそこまで薄くないですよね」


「ははは、カイトくん。薄いって先生のことをハゲてるって言いたいのかなー? その悪いお口を塞がないといけないのかなー?」


 ホバードはカイトの唇に手を当て、にこやかな笑顔で僕を見つめる。周りからの歓声はさらに大きくなり、授業にならないほど騒いでいた。


「痛っ!?」


 突然ホバードは頭に衝撃を受け、頭を摩っていた。ホバードに向けて風属性魔法を発動していた人は担任のウィンだった。


 彼は口をパクパクしてホバードになにかを伝えていた。"はやく授業をやれ"という合図なのだろうか。


「カイトくん、今夜時間空いているかな?」


 ホバードは耳元で呟いた。優しく甘い声が僕の耳を刺激する。免疫がなく、キラキラな甘い声に僕はその場で崩れ落ちる。


「ぬぉ!?」


 そんな中、またホバードの頭に衝撃が走った。ホバードが振り向くとそこにはウィンが立っていた。


「ちょっとホバード先生いいかな? うちの生徒をそんな風に遊ばないでくれるかな」


「いやいや、これも授業ですよ?」


「どこが授業なんですか? カイトくんが生まれたての子鹿ちゃんみたいに……可愛いですね」


「ほら! ウィン先生も!」


 僕の姿を見て二人は笑っていた。それに若干意気投合もしている。


「って、そんなことじゃなくてしっかりやってもらわないと、周りもうるさいのでしっかりしてくださいね」


 ウィンは僕を立たせるために、一瞬で僕を持ち上げる。筋肉質に見えない体でも、実は鍛えてある細マッチョなんだろう。


 彼は自分の指導する生徒の元へ戻っていった。


「では、カイトくん?」


「はい」


「今から授業を始めようか」


 はじめての魔法実技の授業が始まった。





「あー、カイトまた一人かしら……」


 私はカイトの方を見て心配していた。教室でも見た目の良さから中々人が寄り付かず、自身も"モブ"という言葉に縛られて、一人でいることが多かった。


 実際にBLルートの主人公はモブのため、原作通りの行動をカイトはしているのだろう。


「あっ、誰あの人……えっ? まさか!」


 カイトを見つけた私は、目を双眼鏡のように細めて視点を合わす。すると白衣を着た長身の男性がカイトにちょうど顎クイをしている。


「ぐふふ……。なんて美味しいところなの……私もあちらに――」


 自然に私の体はカイト達の方は向かっていた。急に肩をグッと掴まれる衝撃を受けた。


「おい、マリアどこに行くんだ?」


 私を止めたのは同じ火属性魔法のクラウスだった。


「あら、私としたことが……」 


 体はクラウスの方に向き謝っていたが、カイトが気になる私の目はホバード×カイトに釘付けだった。


「マリアどこ見て……あの保健室の野郎カイトに近づきやがって」


 その言葉を聞いて、私はクラウスを優しく見つめる。


「マリアなんだその目は」


「いやー、無自覚なのかついにね」


「ん? どういうことだ?」


腐腐腐ふふふ、なにもないわよ」


 マリアがちらっと視線を戻すと、ホバードがカイトにキスしているように見えた。


「おい、あいつカイトにキスしてないか! カイトもカイトで近づけすぎだ」


 クラウスもカイト達を見て嫉妬心をあらわにしている。


「ホバード×カイトも良いが嫉妬にまみれたクラウス×カイトも捨て難いわ」


 目の前で繰り広げられるBLライフに私は本当に転生をして良かったと改めて思った。


「おい、お前らどこ見てるんだ! 俺の話を聞け!」


 火属性魔法の教員に怒られ、カイトの観察をやめたのだった。


 こういう時にカーテシーの出番だ。


「先生申し訳ありませんわ」

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