第10話 手助け ※マリア視点

 一方視線の先にいたカイトの視線の先にいた私は婚約者であるレオンと話していた。


「マリア嬢なにかすごい視線を感じるんだが――」


「きっとカイトさんですわ。あの窓際に座っている可愛らしい子です」


 ここぞとばかりにレオンにカイトを紹介する。BLルートに引き込むには、まずレオンがカイトに興味を示さないといけないのだ。


「ああ、タンジェの弟か」


 レオンとタンジェは同学年であり、大きな商会の長男でもあるタンジェは学年でも話題だった。


 そのためレオンもタンジェの存在を知っていた。


「レオン様はタンジェさんとお友達ではないんですか?」


「タンジェはある程度の仲かな。むしろ私よりレインの方が前の時に同室だったから仲が良いだろう?」


 レオンが振り返ると、そこには凛とした姿のレインが立っていた。彼もこの恋学の攻略対象だ。


「そうですね。タンジェとは初等部の付き合いになりますが、毎日弟の話しばかりでうんざりしてました。だけど実物を見ると本当に好きなのが伝わりますね」


「あはは、確かに王族の私にもいつも弟の話をしているからな」


「レオン様も直接カイトくんに声をかけてきてはどうですか? 私も彼の魅力に当てられたのかすごい独占欲が湧き出てきましたよ」


「レインさん今の言葉は本当ですか?」


「今の言葉とは?」


「カイトを独占したいと……」


「ああ、何故かカイトくんを見るとそういう気持ちになるよ」


 私の場合は違う意味で独占欲が湧き出ている。彼を共有するのは同じ貴婦人転生者で、寮が同室のフローラ嬢……いや、花子だけだ。


 まさかこのゲームのヒロインも同じ仲間だとは思いもしなかった。


 入寮した時に私の二次創作がバレた。その瞬間、カーテシーをしようと思ったが、フローラ嬢は頭を擦り付けるぐらい土下座をしていた。


 どうやら前世では私のファンだったらしい。むしろ私が彼女をBLの沼に引き込んだと言っていた。


「ぐふふ……ジュル」


「またマリアの変な癖が出たのかい?」


「あっ、レオン様すみません。つい自分の世界に入ってしまいました」


 それにしても、まさか勝手にレインが行動しているとは思ってもいなかった。


「あのままじゃカイト様お一人になりますし、レオン様も声をかけられたらどうですか?」


「そうだな。タンジェの弟でもあるし、王族として人脈は必要だからな」


「その通りです。ぐふふ」


 カイトとカップリングするには、最大の敵であるタンジェがいる。


 兄のタンジェはカイトと話しながら、他の人が近寄って来ないように警戒していた。それがカイトが一人ぼっちになっている原因でもある。


 この間は目に焼き付けたが、今と何っては邪魔な存在だ。


「またきた時にでも声をかけてみるよ」


「お待ちしております」


 私は二人にカーテシーをして見送った。


「ぐふふ、はやくカイトくんとレオン様の絡みが見たいわ」


 レオンはまだ知らないだろう。私が密かに趣味であるBLとしてレオン×カイトのために近づけさせようとしていることを……。

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