第9話 デイリークエスト

 学園に入学してから、モブを極めつつある僕は今日も窓際で太陽に照らされている。色素が薄いため、髪はどこか輝いているように見える。


 あれから一人過ごすことが多くなっていた。話せる相手は視線の先にいるマリアだった。


 彼女はこの学年の首席でもあり、常に周りを見て行動してるしっかりとした公爵令嬢だ。


 そんな一人ぼっちの僕は、時折会いに来る婚約者のレオン殿下と話しているのを眺めるのが日課だ。


 レオン殿下とは職員室にもあった写真の人物だ。


 キラキラした人を間近に見たかった僕からしたらご褒美タイムだ。

 

 なんとなく気になった僕は二人に鑑定魔法を発動させた。


――――――――――――――――――――


マリア

赤:35% 桃:5%


レオン

赤:15% 桃:5%


Daily:攻略者にボディタッチをする


――――――――――――――――――――


 お互い婚約者同士ではあるがどちらのゲージもそこまで高くはなかった。まだ、お互いに距離感があるのだろう。


 それよりも入学後から以前にはなかったDailyという項目が追加されていた。


 いわゆる好感度を上げるデイリークエストみたいなものだろう。基本的に毎日やれば爆発的に好感度を上げることができた。


 むしろ何もしないと、なぜか体調を崩す日が増えてきたのだ。


「ねぇ、カイト聞いてるか? せっかく来たのに兄さんは寂しいぞ?」


 その実験台になっているのが隣にいる兄のタンジェだ。僕の健康にタンジェの犠牲は付き物だ。


 元から好感度がMAXになっているタンジェだったが、ここ最近その好感度が爆発して僕にベッタリだ。


「兄さん最近距離が近くない?」


「そうか? 俺はこれでも離れている方だよ」


 タンジェの言葉に僕は疑問に感じる。常に僕の視界に入っているタンジェ。


 キラキラしたマリアとレオンを見るために顔を動かすが、すぐにタンジェによって視界を遮られる。


「またカイトは俺を無視するのか……」


「いや、そんなことないよ? 一番は兄さんだよ?」


 あまりにも放置しておくと、だんだん闇タンジェになってくるのだ。しかも、デイリークエストを達成するようになってからその頻度は増えた。


 タンジェとは寮が同室のため、新たな犠牲者を探さないと僕の体は持たないだろう。


 誰かタンジェを拾ってくれー!


 そんなことを今日も僕は教室の中で思っていた。


「もう、また俺を無視する」


 タンジェは強く僕に抱きついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る