第3話 鑑定と兄の決意 ※一部タンジェ視点

 営業を終え、家族で食事をしていた。転生前から料理が好きだった僕は転生してからも少しずつ料理を手伝っていた。


 今では母のユーリより料理のレベルは上だろう。そもそも、ユーリは側から見ても危ないぐらい不器用だった。


「やっぱカイトが作るご飯世界一だな」


 タンジェは相変わらず僕の作るご飯を褒める。


「そんなことないよ? 王都のが美味しいものたくさんあるでしょ?」


「父さんもカイトのご飯が一番だと思うぞ!」


「母さんもそう思うわ……私なんて……」


「ユーリのご飯も一番だ!」


「あなた!」


 マーカスとユーリは椅子から立ち上がり、熱く抱擁していた。マーブル家はいつもこんな感じで収まっている。


「また始まったね」


「そうだな。俺達も抱き合うか?」


 手を広げて待っている兄を見て、仕方なく僕もハグをする。


 このまま放置してたら、ずっとタンジェは待っているからな。


「そういえば、兄さん学園はどう?」


「無事に進級できて、3年生に上がれるぞ。今度はカイトも一緒だから毎日が楽しみだな」


 カイトは王都の学園に通い、今は最終学年の3年生だ。


 14歳になる歳から中等部は始まり、16歳で卒業する。ちょうど16歳で成人になるため、区切りが良い三年制になっているのだろう。


「兄さん? 学年が違うから流石に毎日とは――」


「いや、俺はいつでも会いに行くぞ?」


「ほどほどにしてくださいね?」


「……」


「毎日来たら嫌いになりますよ?」


「一日置きにするから嫌いにならないでくれ!」


 タンジェはおもいっきり抱きついてきた。僕よりも逞しい体に強く抱きつかれると、骨がミシミシと音がしそうだ。


「それなら……。まぁ、僕も兄さんには会いたいから来てね?」


「あー、ダメだ……。トイレ!」


 何故か震え出したタンジェは急いで立ち上がり、また前屈みになりながらトイレに走っていった。


 昔に比べて腹痛が多くなった兄が心配だ。


『鑑定』


 咄嗟に発動させた鑑定魔法には赤色ゲージはマックスの100%になり、桃色ゲージは80%まで上がっていた。


 僕の鑑定は他の人とは違っていた。これも神様の転生特典なのか、乙女ゲームのシステムに合わせてかゲージしか表記されない。


 商会の息子としては普通の鑑定魔法が使いたかったが、単にレベルが足りないのだろう。


 僕にはゲージが二種類表記されており、高感度だと思われる赤色ゲージと上下が激しい桃色ゲージだ。


 ブラコンのタンジェは見てわかるように、赤色ゲージは限界値になっている。


 一方何かわからない桃色ゲージは常に上下しているのだ。


「本当にタンジェは元気だな」


「元気なのはあなたも変わらないわよ」


「そうだな! 2人ともいなくなるからまた寂しくなるな」


「また作ればいいのよ」


「えっ? ユーリ――」


 両親はまだイチャイチャしていた。そんな二人に鑑定魔法を使う。


 鑑定すると赤色ゲージは変わらずの100%だが、桃色ゲージは少しずつ上がってきていた。


「桃色ゲージが増えてる」


「んん!? カイトすまなかったな。そろそろ片付けようか」


 僕が見ていることに気づいた父のマーカスはすぐにユーリを遠ざけた。


 それに気づいたユーリも少し頬を赤らめモジモジとしている。


「そうだね。僕が片付けてくるよ」


 居心地が悪くなった僕は食器を台所に持っていき、片付けていると兄のタンジェは戻ってきていた。





 あまりにも弟のカイトの可愛さに、股間が爆発した俺はトイレに行ってリラックスタイムをしてきた。


 俺が戻ってくるとユーリとマーカスは真剣な顔をしていた。


「タンジェ、話がある」


「父さんどうしたんだ?」


「いいから座れ」


 真剣な顔をして何かあるのだろうと察した。カイトが食器を片付けている今しか話せないことなんだろうか。


「お前はカイトのことが好きか?」


「それは当たり前だ。生まれてきた時から愛している」


 俺は生まれてきたカイトを見た瞬間虜になった。白い肌に優しい顔立ち、俺が手に触れると笑顔で握り返してくれた。


 誰にもカイトを渡す気はない。


「それは家族としてか? それとも恋愛対象としてか?」



「俺は弟としても、男としてもカイトを愛している。学園を卒業してすぐにでも結婚したいぐらいだ」


 この世界では16歳から成人扱いとなり、その年になると結婚が認められる。


 しかも、同性、兄弟関係なく結婚することが可能だ。だからカイトが良ければ俺は結婚するつもりだ。


 他の人に譲る気もないからな。


「そうか……」


「だから俺はずっと婚約者も作らなかったし、初めてはカイトと決めている」


 俺が話し終えると冷たい空気感は一転して、和やかな状態に戻っていた。


「よかったー!!」


 両親は同じタイミングで声を上げていた。


「えっ?」


「あんな可愛いカイトを知らない女や男に取られるなんて私達も嫌だもの!」


「そうだ! 俺らの大事な息子のタンジェだから許せるけどな」


 やはりこの両親から生まれた子だと俺は改めて思った。この二人もカイトを溺愛している。


「最近だと昔より魔法が発展して、男性でも子供が生める時代になったから、きっとカイトとタンジェの子どもなら世界一可愛いわね」


「そうだな……。その前に俺達の新しい子を――」


「あなた」


 ユーリとマーカスは見つめ合っていた。


「洗い物終わったよ」


 カイトは咳払いをして戻ってきた。どこか二人を見て顔を赤く染めていた。


 少しずつ体も成長してきて、思春期のカイトには刺激が強いのだろう。


「カイト! 今日は俺と寝ようか!」


「兄さんと? 僕もうそんなに小さくないよ?」


「久しぶりだからいいだろ」


「先週もずっと寝てたよ?」


 先週も帰ってきたがその時もずっとカイトに腕枕をして、抱きしめて寝ていた。カイトも嫌がる素振りはないからな。


「いいだろ?」


「わかったよ」


「うっし! カイト寝るぞ!」


「えっ? もう寝るの? 母さん、父さんおやすみ!」


 俺は空気を読んで、急いで自分の部屋に戻ることにした。きっとこの後、両親の部屋は防音の魔道具が使われるだろう。


「さぁ、子供達も寝る頃だし俺達もベッドに行こうか?」


「そうね。今日も優しくしてね!」


「当たり前だ。今日も優しくたっぷり楽しもうな」


 振り返るとマーカスはユーリにキスをし、お姫様抱っこをした状態で二人で愛の巣に戻って行った。

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