第4話 ナタリア・ヴァイスハーフェン

side:ナタリア・ヴァイスハーフェン




もぐもぐもぐもぐ、もぐもぐもぐもぐもぐもぐ、もぐもぐもぐもぐ、もぐもぐもぐもぐ


はぁ~、今日もタマゴサンドが美味しい♪



「よぉナタリア、また薄味屋のタマゴサンド食べてんのか?」



むむっ


私が王城の中庭でタマゴサンドを堪能している所に声をかけて来たのは


騎士団の同期で現在は第2騎士団の副団長をしているマッシモ



「ええ、薄味屋のタマゴサンドは毎日食べても飽きませんから」


「俺も薄味屋の飯は旨いと認めるが、牛肉をたっぷり使った料理が無いのが唯一の欠点だな」


「あなたは朝も夜も牛肉を存分に食べているのでしょう?お昼ご飯くらいは違う物を食べてはいかがですか?」


「たまになら良いんだけどな、肉を食わんと午後からの訓練でバテちまうんだよ。おっと!こうしちゃおれん、早く食堂に行かんと食べ放題のパンが無くなっちまう!またなナタリア」


「ええ」



ふふっ


副団長になったのだからパンぐらいいくらでも自分で買えるでしょうに


マッシモは騎士見習い時代から食堂で出される食べ放題のパンを、仲間と奪い合うのが好きでしたからね(笑)


当時は私もマッシモと一緒にパンを奪い合ったものです。



王城の食堂には昔から1つだけ絶対に守らなければならないルールがあります。


それは、食堂に居る時だけは団長も見習いも関係無く等しく『腹を空かせたクソガキ』であり


食べ放題のパンに限り、団長や副団長を含め誰であろうとぶん殴ってでも奪って良いという、最早伝統と化した謎のルールがあります。



マッシモは副団長ですから、訓練でシゴかれた仕返しに一般の騎士団員から狙われる立場なんですけど


まぁ今頃は笑顔で返り討ちにしているでしょう♪



本音を言えば私もパンの争奪戦に参加したいのですが、『英雄』と呼ばれるようになってからは自重しています。


一応騎士団に所属しているとはいえ、今は王妃様専属の護衛ですから一般の団員と直接顔を合わせる機会も無いので仕方ありません



それにしても薄味屋の料理はどうしてこんなに美味しいのでしょう♪


お店が出来たのは1年前だったかな?


今でも『だし巻きたまご』を初めて食べた時の衝撃は忘れられません!


ふわふわに焼かれたたまごをひと口食べれば、ジュワッと中から汁が溢れ出て来て、なんとも言えない旨味が♪


駄目駄目!


思い出しただけでヨダレが出てしまう!



薄味屋のご飯は人気があってなかなか買えないのが難点ではあるのですが、ある日突然シュヴァイツァー公爵家から私に


条件付きで薄味屋のご飯を優先購入させて貰えると言われたのです。


その条件は『私が直接お店に買いに行く事』


何故その条件で優先的に購入させて貰えるのかは謎ですし


もしかしたら『英雄』と呼ばれる私に恩を売りたいだけかもしれませんけど、ここは素直にありがたく受け入れる事にしました。



理由は元々食が細く立ち眩みの多かった王妃様が、薄味屋の料理だけはお代わりを所望されるほど喜んで食べて下さり


今では立ち眩みも少なく顔色も良くなられたからです。



いけない!


そろそろ王妃様に午後のおやつを持って行く時間です。


今日のおやつは『羊羮』という甘味らしいのですが、見た目が黒くて全く甘味に見えません


まぁ薄味屋でお薦めされて買って来たので味は間違い無いでしょう。


私と王妃様と専属メイド2人の分で4個買って来たのですが、、、


たっ、足りるよね?



最近は以前にも増して薄味屋のファンが増えて来たせいで


毎日薄味屋の甘味を食べられる王妃様の専属メイドが羨ましがられていると噂で聞きますし


とりあえず、明日からはもう少し甘味を買う量を増やして差し入れしましょう!






つづく。

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