第8話 異種族恋愛は成立するのか?
廊下には、小柄でがっしりとしており、頭に角の生えた、猫目で赤髪の少女が瑠璃色の瞳を揺らして不機嫌そうに佇んでいた。
「えっ? お前の彼女って異種? 価値観の相違とか、文化とか大丈夫なのか?」
「うん。可愛いでしょ? イロハっていうんだよ。確かに異種だけど優しいし、好きになったらそういうのって、あんまり関係ないと思うな」
「すげぇな。そういう恥ずかしい言葉を悪びれも無く……」
種族の違いなどを全く気にしていない様子で口にするヒロフミと、廊下の少女を交互に見遣る。
「それじゃあカナタ。またね?」
カナタの視線を不思議そうに追ったヒロフミは微笑んで、廊下の方へと速足で向かって行く。
ヒロフミと彼女の会話は聞こえないが、何か文句を言われて謝っているようにも見える。
(胸でっけぇ……ってか。確かに可愛いけど気ぃ強そう。あの子暴れたらヒロフミに止められる気しねぇけど、本当に大丈夫なんだろうか)
「いいなあ。あの子。モリリンって優しいよね。気も遣ってくれるし大事にしてくれそう」
「うん。本当そう。一緒にデートプランとか考えてくれそうなとこもポイント高いよね? 私狙ってたのになあ」
「ええ? モリリンもいいけど、隣のクラスのイツキ君もよくない? クールビューティーなイケメン」
「セラちゃんが振られたって言ってた。諦めては無いみたいだけど。モテるのに、なんでイツキ君誰とも付き合わないんだろ? 好きな子でもいるのかな?」
人の口に戸は立てられぬ。聞こえて来た友人達の噂話を聞き流しながら、カナタは手持無沙汰に教室の窓を開けた。
「恋人……なあ。誰かの為に自分がなんかするのって面倒臭そうだよな……オレならネットのデートプランとかでいいや」
新緑に反射する光と草の匂いに目を細める。不意に強い風が吹き、カーテンが舞い上がる。いつの間にかイツキがそこに立っていた。
「うわっ! びびった! お前、気配消して近づくなよ。一体どっから?」
窓の真下を指さすイツキ。常識ではあり得ない方角からの来訪にカナタは瞠目するしか無かったようだ。教室内が急に色めき立つ。
「例の転校生に追いかけられていてな。人が増えて来て、周りに迷惑が掛かりそうだったから逃げて来た」
「お前のその身体能力の高さはなんなんだよ。昔っから規格外の運動能力しやがって。歩道橋から飛び降りても無傷だったしさ。転校生って今朝のあの子?」
「ああ。妙に懐かれてしまってな。俺は当たり前のことをしただけで、何の他意も無いんだが」
昔から、イツキとカナタは対照的だった。人助けに躊躇うカナタとは正反対で、イツキは人を助ける事を躊躇しない。危険を顧みず、彼は自分から動く事が出来る。
誰とでも分け隔てなく接するイツキの周りには、いつでも人が集まって来る。カナタはそんな幼馴染が誇らしくもあり、少しだけ羨ましくもあるのだ。
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