第7話 友人

「ねぇ。イツキさん。その制服って事は、僕達と同じ天桜の生徒だよね? 僕。今日が初めての登校なんだあ。良ければ学校まで案内してくれませんか? イツキさんと一緒に行けたら僕嬉しいんだけどな♡」


 猫なで声で首を傾げて、大きな瞳を瞬かせるセラフィス。その愛らしさに、思わずカナタが頷き掛けたが、イツキは少年を通り過ぎて褐色肌の青年の目の前に立ち止まる。


「マコさんと言ったか? 俺の名前はシキノセ イツキだ。カナタを巻き込まないでくれ」

「ファルマコンだ。親しくない者にマコと呼ばれるのが好きではない。学校であまり顔を合わせる事もないかもしれないが。一応覚えておこう」


 苛立ちを滲ませた短い会話を交わした後に、イツキは登校を再開する。


 会話の意味が分からず、カナタは不思議そうに瞬いて、少年と褐色肌の青年を気にしながらも彼の後を追うのだった。


 キーンコーンカーンコーン――。


 昼休みを迎えた校内はにわかに騒がしくなる。あちらこちらで連休の思い出話に花を咲かせる者、連休中に恋人が出来たと報告し合う者。


「あっ! ヒロフミ。いつもの戦略ゲーやんねぇ?」

「カナタには絶対勝てないから今日はやめとく。それに俺、GWゴールデンウィークに出来た彼女と、今から次の休みのデート先を決めるんだぁ」

「はっ!? ヒロフミに彼女って……マジか……」


 見た目は悪くないが、幼い頃から知る森衛もりえ広文ひろふみは気弱な少年だった。


 そんな友人からのおめでたい報告になんだか負けた気がしたのか、勝負事ではないのにも関わらず、カナタは素直におめでとうを言う事が出来なかった。


「モリリン。呼ばれてるよ?」


 ヒロフミがクラスの女子の一人に声を掛けられ、教室の出入り口を指差される。

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