6. 髪は、烏の濡れ羽色

 8月9日。夏期講習も最終日。先生たちもお盆休みが近くてウキウキしている、そんな雰囲気が漂う。これが終われば、私たちの夏休みも後半となる。


 台風8号は猛烈な台風に発達し、日本の南を北上している。西日本の太平洋側や伊豆諸島では海は大しけとなっている。衛星画像で眼が明瞭。西日本の太平洋側の南東斜面では湿った南東風が流れ込み、局地的に激しい雨のところがある。

 台風8号は10日午後に四国~近畿地方へかなり接近し、猛烈な勢力のまま上陸する見込み。台風の進路に当たる西日本を中心に暴風や高波に厳重な警戒。台風は11日は日本海を北上して12日未明に温帯低気圧に変わる見込み。その後12日夜には不明瞭となる。

 西日本・東日本には台風や太平洋高気圧の縁を回る850hPa Θe345K以上の下層暖湿気が流入しており、台風8号の接近前から太平洋側の南東斜面を中心に激しい雨や非常に激しい雨が降り、10日昼過ぎには台風8号本体の雨雲により、西日本を中心に猛烈な雨の恐れがある。土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒。


 大きな台風が接近してきているようだ。ここは台風からは離れているところだから、直接の被害はないのだが、遠いところでも台風と太平洋高気圧はどんどん、大気を不安定にさる雲を送り込んでくるから、離れていても予想外の天気に変わることもある。

 天気予報では、晴れところにより一時雨で降水確率は50%。「ところにより」とは、予報を対象にしている地域の50%未満の地域で降ること、かつ、雨予報の分布が散在している時に使われるそうだ。降水確率も40~60%というのを見ると、コンピューターにも予報をする人にもよくわからない、とある意味、予報の利用者に判断を投げた結果、とでも言いたいようにも見える。

 どうしようか、傘を持っていくべきか行かぬべきか。

 基本的に、私は傘を持たない派だ。傘を持つかどうかは、天気図に聞く。雨宿りで済みそうなら持って行かないし、どうにもならなそうであれば持っていく。そういうポリシーだ。

 エマグラムという、1日の中で空の気温や湿度がどのようになっているか、そういうことが記された予想グラフを見ながら、朝ごはんのトーストをかじる。講習が終わって、部室に寄らなければ、もくもく雲を眺めるけれども天気は持ちそうだな~。3時にはかなとこ雲になっているだろうな。

 でも、高校のあたりで発達しても風に流されていくかもしれないし。

 微妙だな~。雨が降ったら、2時間くらいだろうし、きっと虹も出るんだろうな。降り始めたら虹の写真を撮りに、稲荷神社のあの階段のところに移動しよう。きっと、いい写真が撮れるはず。


 そういう風に、都合よく解釈して家を出る。朝から気温はすでに25℃を超えている。暑い。そして、台風のせいもあって、梅雨ほどではないがジメっとしている雰囲気もある。帰るまで、何とか天気が続いてくれればいいのだけど。


 講習が終わって、いよいよ夏休みだ~。っと心を弾ませながら下校する生徒が多数。今日までは学校の購買が開いているので、パンを買って、天気はまだ良さそうなので部室に行くことにした。

 気温が28℃を超えてくると、学校側は熱中症対策として、冷房のない場所での運動部の活動の中止を勧告するが、自主的に外で部活動を行いたい者については、体調管理等は自己責任の上で部活動を続けても良いことになっている。

 さすがに身の上に何かがあったら救急車は呼んでくれるはずだが、何があっても、自身のその時の判断が尊重される仕組みだ。

 校庭を見ると、この気象条件でまだ活動を続けているのは、個人競技の人たちばかり。やはり陸上部が目立つ。さすが自己研鑽と鍛錬の部活。スポーツドリンクや水がたくさん入っていると思われる、キャスターのついた大きな保冷コンテナがいくつか用意されている。

 それを横目に部室に行って買ったパンを食べながら、部員たちと、ここからの夏休みをどう過ごすか、誰とどこに行くか、そんな予定についての世間話を中心にワイワイと。だいたいの人は、やはりどこかに行くようだ。中には恋人とお祭りに行くだとか、花火を見に行くだとか、そこんちとそこんちは恋人同士でも家族ぐるみで付き合って、キャンプに行くとか焼き肉をするとか。

 うちは、母はともかく、父はそういう暦通りの仕事ではないから、年末年始以外の泊りがけの外出は急に決まることが多く、友達と遊んだりする予定と重なるときは、とても断りにくい。そうなることもあるから、何日も前からは予定を入れておけないという弱みがある。

 一通り用が終わったので、雨は大丈夫かなとお天気アプリの気象レーダーの画面を確認していると、

 

「千早センパイ、あの、」

「はいよ」

 瞳ちゃんがキャンプ場ガイドとカレンダーを持ってきて、

「お盆明けに、ここにキャンプしに行くんですけど、雲海ってどういう時に出るんでしょうか?」

「キャンプいいね。どこどこ。」

 指さされたページを見ると、山間部の小高い丘に城跡があるところで、それを、何キロかの距離から眺めることのできるキャンプ場である。

「雲海か。ここは近くに川があるの?」

 道路地図アプリを出して周りの地形について調べる。この城跡のある丘の麓には川があって、もう少し上流の方にはダムがあるようだ。

「ありますねぇ。」

「盆地だから、風のない日でよく冷える朝だねぇ。8月中はちょっと難しいかもしれないよね。来週でしょ?まだちょっと気温が高いかも。」

「そうですかー。」

「観れたらすごいラッキーかも。でも露が降りるだろうから、朝はけっこうベチャベチャになるかもしれないよ。」

「なるほど。、、、あ、そうだ。千早センパイ、ちゃんとカメラ使ってますか?」

「まだ買ったばかりだし、そんなに出かけることもまだないし。」

「どうです?キャンプ。」

「私、テントとか持ってないよ。」

「いえー、キャンピングカーをレンタルするんです。」

「おー、リッチだねぇ。」

「うち、3人家族じゃないですか、この車は4人用なので空きがあるんです。カメラ持って、どうですか?」

「楽しそうだね。2、3日中には返事するね。」

「18日に行くのと、キャンプ場に着く前に買い物をするので、返事は前の日まででいいですよ。」

「うん、わかった。」

 そういえば、と窓から外を眺めると、かなり背の高い積乱雲がだいぶ近くにある。これは、いけない、と思って。

「瞳ちゃん、まだ学校に残るの?」

「はい、ちょっとやることがあって。」

「夕立になるよ?」

「私、折りたたみ傘を持ってきてるんで、少し止んだあたりで帰ろうと思います。」

「あ、そう。私、傘持ってきてないから、先に帰るね」

 と言って、部室を慌てて出る。

 玄関を出たときにポツポツ降り出した雨は、陸上競技トラックの近くに来た時、すでにサーっと音を立てて地面を濡らし始めるほどのスピードで強くなり、あっという間に強くなった。

 わー、これは無理だ引き返そうと思ったとき、陸上トラックで練習していた最後の1人がスポーツドリンクのペットボトルを持ったまま、トラックに倒れこんだのを見た。これはいけない。と、慌ててそちらに向かう。

 雨は強くなって、私の髪の毛もぐっしょり濡らして、雨が滴る。


 仰向けに大の字になって、静かに目をつぶっている陸上部員。試合も近いのか、水着のようなユニフォームを着ていて、全身ずぶ濡れだが、倒れた時のケガは特にないようだ。


「あの、大丈夫ですか?」

 ゆっくり片目を開けて

「ん?」

「暑かったから、具合悪くなって倒れたのかなって思ったんですけど、大丈夫ですか?」

「え、ああ。そう見えちゃった?ウチね、練習の後にこういう土砂降りに当たるの好きなんだ。風呂場のシャワーより気持ちいい。」

「それはよかった。」

 私ももう、手に負えないほど濡れてしまったので、どうでも良くなって競技場に座る。

「あの、写真撮っていいですか?」

「なんだ急に。別に構わんけど。」

 リュックの中からカメラを取り出して構える。

「意外と恥ずかしいなコレ。」笑

「さっきみたいに目を閉じてもらえると嬉しいです。」


 上から俯瞰で1枚、右の横顔とショートヘアの前髪が雨で顔に貼り付いてそこから雨が滴るところを1枚。右手首に通してある水色のヘアゴムと軽く握られた手を1枚。飲み口を上にして左手に握られているスポーツドリンクと、自然に動かされた右腕で顔に付いた雨を拭っている写真を1枚。


 私のカメラで撮った初めての写真だった。


「もういいか~い?」

「ま~だだ、、、あ、ごめんなさい。もういいです。ありがとうございます。」

「いやー、濡れたね。部室に洗濯機とかドライヤーとかあるから、使ってく?」

「あ、はい。借ります。」


 全部濡れてどうでも良くなったけれども、いくら耐水とは言ってもカバンだけはこれ以上はと思って、抱えながら歩いて陸上部の部室に案内される。


「ゴメンネ~汚くて~。オトコっぽい部活ってさ、ガサツなの多くて。あっちこっち散らかるのさ。着替えはある?って持ってるわけないよね。」

「洗濯とか終わるまで、体冷えたら困るから、私のTシャツとハーパンとウインドブレーカー着ているといいよ。」

 と、着ているユニフォームやらをポイポイ脱いで籠に放り込んだ後に渡される。

 思わず赤面して目のやり場に困る私。

「あ、ゴメン。こういうの、クセで。」笑

 荷物を置いて、水泳部の着替えでそういうのは慣れているけれど、変に意識してしまって、着ていたものを後ろを向いて脱いで一緒の籠に入れる。

「制服、どうしようかな・・・」

「ウチは気にしないで洗濯機で洗っちゃうけど、家ではどうしてるの?」

「うーん。」

「学校の安っぽいのじゃアレか。いいよ、いま着てるヤツ貸しとくから今度返しに来てよ。」

「え、でもこれは使うんじゃないの?」

「大会は、夏休みが明けてすぐの土曜日だから、それまでに返してよ。ウチら個人競技でしょ、お盆休みとかも全部自由なんだ。明日はウチは休むけど、あさってからは毎日いるし。とりあえず、洗濯終わるまで制服をそこに掛けておくといいよ。」

 ハンガーと、制服を入れるための大きな透明なゴミ袋を渡される。

「ありがとう。」


 籠のものを少し離れた洗濯室に行って、洗剤を入れてスタートボタンを押す。残り70分と表示される。

 ドライヤーで髪を乾かして、とりあえず風邪を引く心配はしなくても良くなった。


 私には少し大き目の黒いウインドブレーカー、袖が余るくらいの左袖には水色の字でTakahataとTimes New Romanの字体で刺繍されている。タカハタさんっていうのか。

 それに気づいたのか、

「ウチ、2年5組の高旗たかはた あやです。よろしくぅ」

「え、クラス一緒・・・?永野千早です。」

「まじか。お互い、初見とかどんだけ存在感ないの。私たち。」

「まぁ、私、出席番号がだいぶ後ろの方だし、まだ席替えもないから・・・。」


 17時近くなって

「そろそろ洗濯機止まったかな。見に行こうか。」

「そうね。」

 今日の日の入りは18時48分。空が夕陽に染まってきた。

 まだ小雨が残っていて、渡り廊下の東側の窓は夕陽に染まってきた。

「見て見て。虹だよ。」

「あ、ホントだ。ダブルレインボーだ。・・・ちょっとゴメン」

 急いで陸上部の部室に戻って、カバンの中からカメラを取り出して広角レンズに取り替える。夕方に出る虹はとても大きいので、画角に収まりきらないこともけっこうある。一番広いレンズで写り切るかどうかはわからないが、とりあえず・・・。

 この渡り廊下には避難路として途中に出入口があるので、そこから飛び出して、グラウンドの向こうにかかった虹をカメラに収める。


「虹がこうやって2つ出ているのは、主虹と副虹っていうんだけど、一番はっきり出ているのを主虹って言って、薄いのが副虹。虹の色の順番が逆だって知ってる?」

 後ろの高旗さんに向かってつぶやきながら。

「あ、知らなかった。ホントだね。赤が外側で青と紫が内側なのと、反対のと。」

「副虹は水滴の中で太陽の光を2回回折して、起こるから反対になるらしい。」

「え、お天気マニア?ウチ物理とか全然だわ。」

「お天気マニア、うん、確かにそうかもしれない。」


 雨が弱くなるのと同時に、陽がどんどん西に傾くにつれて、虹は消え、少しずつ暗くなってきた。

 終わった洗濯物を取って、あまり乾かなかった制服をビニール袋に入れて、洗濯した下着を着て、また高旗さんの服を着て帰ることに。途中まで一緒に帰ろうということで、部室のカギを職員室に返却して戻ってくるのを待った。

 講習の最終日ということで、最終バスの時間が19時すぎまであったことに救われた。明日からは学校の周りの路線は休日ダイヤに変わるため、さらに2km先の幹線道路まで歩かなければならなくなる。

「次のバスは何時発?」

「んと~、、、20時半だね。ウチの方に行くバスは最終だわ。」

「あら、同じ時間・・・もしかして、開実台あけみだい?」

「だね。」

「行先まで一緒。まさかね?」

「まさか~。」

「ちょっと時間あるから、ハンバーガーでも食べていこうか。」

 乗り換えのバス停からそう遠くないところに、ラーメンから回転寿司まで、ファーストフードの店が集まっているショッピングセンターがあって、デフレ経済と学生の味方、ハンバーガーショップでまぁまぁの量を食べる。

 親からはメッセンジャーで、まだ帰ってこないの?と何分か前にメッセージが来ていたので、「拙者一生の不覚、傘を忘れて雨宿りを学校でしていたでござる。ハンバーガーなる西洋の食べ物を食して帰るが、晩御飯はそのままで。最終で帰るでござる。」と打電。

 返信は「キヲツケテ カエラレタシ」。


 最終バスはガラガラだったけど、左側の後ろから2列目の席に隣同士で座った。乗車率の高いバスは前の方が対面の席になっていて、後ろの方は前に向かって座る席が数列あるが、この路線はそれほど乗降の多くない、やや長距離の路線であるため、全て前向きに座るバスが走っている。

 高旗さんは運動して、だいぶ疲れていて眠そうだったので、聞きたいことはたくさんあったが、あえて静かにしていた。そのうち、私にもたれるように静かに寝始めた。私は起こさないようにリュックから本を取り出して読む。例の宮内から借りている本だ。残り50ページくらいなので、着くまでには読み終えるだろう。

 夏休みの課題と称して他にも数冊渡されているから、これで終わりではない。笑

 あと20分くらいになったところで本を読み終えて、そことそこがくっつく、あらあら百合な話だったのかと意外な展開になったなと思った。男女の恋愛も悪くはないけど、性別についてずいぶんオープンな世の中になってきたから、別にありといえばありか。ただ1920年くらいの時代にはちょっと受け入れられない恋愛のカタチかもしれない。

 最初に自分の家族と村の仲間を敵兵に皆殺しにされて、仲間だと思っていた人に村や思い出を全部焼き払われて、みんなを殺した人に復讐するために軍人になって、同じような境遇の仲間を戦争で次々といろんな状況で失っていく。そして、え、マジかっていう人とくっつくの。

 閉じた本の上に手を置いてストーリーを初めから思い出して、左の暗くなって街路灯と家の明かりだけが流れていく窓の外をぼーっと眺めていた。


 それにしても、よく寝てるな。まさか乗り過ごしてないよね?

 『次は終点、開実台ターミナル 開実台ターミナル お忘れ物をなさいませんよう、お仕度ください。』


 高旗さんは目を醒ましたようだ。

「よく寝てたけど、大丈夫?乗り過ごしてないよね。」

「終点だから大丈夫だよ。安心して寝てられる特権だよね。」


 定期券を端末にタッチして降車。

「じゃぁ、近いうちにコレ、返しに行くから~。」

「うん、頼んだ。」

 ここで反対方向なのかと思ったら、歩いていく方向は同じ。

「マジか。」

「どこまで一緒なの。」笑

「ウチ、元町のとこのy字路を左に行ってすぐのところ。」

「私、そこ右だ。」

「あー、あの通りで中学校が別だもんね。それはウチら存在感ないわけだ。」


 15分くらい歩いたところで分岐点。

「それじゃあ、今度こそ。」

「うん、じゃぁまたネ。」

「あ、返すとき連絡するから、SNS教えてくれる?」

「いいよ~。」

 QRコードを交換して、リストイン。

『テステス』

『PASS』

「なに、PASSって。」笑

「前ね、外国の文通相手とSNS交換したときに、TESTって送ったらPASSって。笑っちゃったよ。」

「なるほど」

「じゃぁ、気を付けてね~。」


 家に帰ると、どうしたその格好は陸上部も掛け持つのか、忙しいな!と盛大にツッコまれた。生乾きのビニール袋に入った制服を出すと、クリーニング行きの宣告。まぁそうなるわな。夏休み明けまでは制服は使わないし、ちょうど良かった。

 部屋に行って、そういえばウインドブレーカーは普通に洗濯してもいいのか聞くのを忘れていたことに気づく。メッセンジャーを使って送ってみる。


 ウインドブレーカーは普通に洗濯しても大丈夫?

 いいけど、悪いから洗わないで返してくれてもいいよ。

 別に洗うのは機械だから手間でも何でもないし。あさって洗って返すね。いるんでしょ?

 あさっては、暑くなりそうだから昼にはいったん止めるけど、いるよ~。

 了解~


 黒ベースで切り返しにピンクの生地が入っているウインドブレーカー。背中には大きく校名と陸上競技部と印刷されている。そういえば、水泳部にもあったけど、そんなに使わないから買わなくてもいいっていうことで、買わなかったんだよな。記念に買っておけばよかったかも。文芸部には、あるわけないよねぇ~。せいぜいユニフォームがあるのは吹奏楽部くらいだもんね。

 脱いで部屋着に着替えて全部洗濯カゴへ。

 お風呂に入る前にリビングによって、そういえばキャンプの件を。


「18日って、どっか行くとかそういう話はある?」

「今年は、ちょっと夏の仕事が忙しいから、夏休み中は無理かもね。」

「あ、そう。18日に後輩ちゃんにキャンプに誘われてるから、行ってくるね。1泊だよ。」

「それはイイね。どこ行くの。」

陣内城じんのうちじょうだって。」

「あそこか。眺めが良くていいトコじゃん。行っておいで。」

「写真いっぱい撮ってくるわ。」


 お風呂にスマホを持って行って、陣内城についてちょっと調べてみる。雲海はやはり9月からということらしい。

 地形図アプリで現地の周辺の地形を調べると、真西の方角にフタコブラクダのように山が二つあって、定規を当ててみるとちょうどこの城跡は谷間からまっすぐ真西の方角に位置している。これは城の設計の時に秋分の日には真西から陽射しがあって朱くなるように設計されたのだろうか。

 8月20日の日の入りは調べると、18時31分、方位286で、西北西までは行かないが、もしかして城の壁面がオレンジ色に染まる景色が見えるかもしれない。これは、なかなかの撮影スポットかもしれないが、キャンプ場とは正反対の方向で山道込みで城をぐるっと大回りして標高300mで片道5~6kmあるように見える。これはなかなか大変そうだな。

 街中もなんか良さげなところがあるし、ちょっといろいろ検討してみよう。


 それから、今日、グラウンドで撮った写真を見るのに、カメラからSDカードを抜きだしてパソコンに差して起動させる。

 写真を大きなサイズのJPEG画像とRAWで保存されるように設定してあるから、撮った枚数の倍の数のファイルが存在する。瞳ちゃん流の撮り方は、明るくしてしまうと、あとで修正が効かなくなってしまうから、少し暗めに撮って、明るさに不満があるときは、パソコンでいじるんだとか。

 とりあえず、編集用のフォルダを作ってそこにコピーして写真を一つ一つ見ていく。


 右の横顔の写真。整った顔立ちの顎から雨水が筋を作って首の後ろに流れていく様子、前髪の先に雫を作って、今にも落ちそうになっているところ。

 右手の写真。細い指がキレイ。

 額に手を当てている写真、この人、本当に土砂降りの雨が好きなんだな。すごい気持ちよさそうな顔して雨に当たってる。そういえば、私は、いろんな節目というか思い出に残ることがあった時は、だいたい、あとで大雨なんだよな。私はある意味で雨女なのだろうか。

 しかし、この国は世界でも有数の雨の多い国。日本で「湯水のように」という言葉は無駄に使うとか否定的な意味に使われることが多いが、雨の少ない中東では、大事に大事に使うという言葉に変化するらしい。

 雨女の私は、中東の人と結ばれれば、とても大切に扱われる?

 今のところは友達や家族と外出する大事なシーンで雨に当たることはないから、これくらいでは雨女とは言わないだろう。笑

 洗濯が終わったかなと、洗濯機へ。止まっていて、高旗さんのTシャツ・ハーフパンツ・ウインドブレーカー一式、全部洗い終わったので自分の部屋に干す。身長170cm以上あって私よりも大きなサイズの物を着ている人が同じクラスにいて気づかなかったなんて、そんなことあるか?笑

 運動部のTシャツって気分を盛り上げるような言葉が入っていて、あれ窮屈になんないのかな。この黒いTシャツの背中のプリント、I WILL leave the slow guys behind、遅せぇヤツは置いてくゾ。とかさ。3位くらいまでに入るような実力がないと着れないよこんなの。笑

 水泳部のSwim Like a Flying Fish!トビウオのように泳げ!もバタフライができない人はまぁ仕方ないとしても、まだ好戦的な陸上部のコレよりは許せる。他人に対して述べている言葉ではないし。笑


 高旗さんってどんな実力の持ち主なんだろう。

 かなり近いところに住んでるけど、何も知らなかったな。

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