第4話 短刀。

 前回ギルドでの初クエストを完了した高木勇樹もといユウキ。

 今は拠点の長期宿にいるようだ。

「初クエスト完了おめでとうー!あははー…エルー?酒だぞー?」

 何もない虚空に話しかける。

「チッ、消毒用じゃ釣れないか。しかも原液」 

 いたずらな笑顔を浮かべながら言っていた。

「にしてもなあ…高収入ではあるんだがそれでも足りんよなあ」

 長期宿の代金は払えるものの、受験期に使った金額とは宿代を引いても合わず、足りない。

「しゃーないもっと高報酬なのに挑戦しよう」

 と言っても簡単ではない。

「武器がねえ、というか戦う手段がねえ」

 スライムは簡単に仕留められたものの、高報酬なものは頼まなけらばいけない危険な事象が多い。

 ゴブリン討伐、猪狩り、ドラゴン討伐などだ。

 このような危険なことにも飛び込まなければいけないため、何かしら戦う手段が必要になる。

「武器にこだわる必要はないよな」

 魔法に頼る方法もあるが、ある程度近距離戦もこなさねばならない。

「刀、ナイフ、短刀、弓、色々と使いたい武器もあるしなあ。いっそのこと魔法で腕とか固くして殴りまくるか。武装coror硬化!なんてね」

 いろいろ考えて妙案が浮かんだのか、少しワクワクしながら寝床についた。

 翌日。

 学校の講義が終わった後、高木勇樹は武器屋にいた。

 中に入ると短刀やナイフ、ダガー、マチェットなどが置いてあるコーナーに向かった。

「(さーてどれにするかー?)」

 実際に持ってみたり、軽く振ってみたりするが、あまりどれもしっくりこない。

 昨日の報酬がうまく、店の大抵のものは買うことができた。

 おそらくまるごとスライムとはそれほど貴重なのだろう。

 壁にかかる少しお高いナイフに手を伸ばす。

 お高いものにはあまり触れず、それなりのものを買って硬化魔法で無茶ができるよう戦闘中だけでも仕立ててやるつもりだったが、そんなことを忘れ、吸い寄せられるようにその短刀を取っていた。

 短刀は黒かった、反射している光は紫がかっていて、鍔はなく、わかりやすいように言うと全身黒のドスといった感じ。

 鞘には細く赤い紐が巻かれている。

 その短刀を持って会計カウンターに持って行った。

「これください」

「おう、嬢ちゃんかわいいから安くしとくよ」

「僕…男です…」

「おっと、すまねえな」

 申し訳なさそうに頭を掻きながら「お詫びと言っちゃなんだがそれ、半額にするよ」と言った。

「いいんですか!?こんないい短刀」

「お詫びだしな。ただこれからも贔屓にしてくれないか?あんたになら安くするぜ」

「ありがとうございます」

 お代を払って、店を後にした。

「買ったはいいものの…」

 よく考えてみれば、衝動的に振ることもせずに買ってしまったし、短刀とは不釣り合いな服装だ。

「とりあえず色々やっとこう」

 短刀片手に壁で囲まれた街の外へ向かった。

「この辺でいいかな…よーし…(ナイフに魔法を流し込むイメージで…)エレキ!」

 魔法を唱えると柄と刃の境に魔法陣が発生し、刃に電気が纏った。

「おお…杖替わりになるもんだなあ」

 杖は魔法発動の補助になり、効果増大や魔力の節約になる。

 実際いつもより少ない魔力で、いつも以上の規模である。

 ただ杖よりは消費魔力が多く、規模も多少小さかった。

「振った感じもいいな、いやーよかったよかった」

 よく見ると短刀の刃の部分に二つひし形の穴があり、その上には同じ形、同じ大きさの青い宝石のようなものがはまっている。

「なんだ?これ」

 色々それに対して試してみる。

 魔力を流してみるとビンゴ、反応があった。

「うおっ、なんだこれ」

 魔力を流すと先ほど発動した魔法、エレキが発動した。

 そして先ほど発動した時より規模が大きくなっていた。

「まさか…」

 片手でエレキ、もう片方は短刀でのエレキを同じ魔力量で発動してみる。

「比べると一目瞭然だな」

 明らかに手から発動した時、初めて短刀で発動した時、そして一回目以降の時で規模、火力が違う。

 そして決定的に違うところが一つあった。

 短刀から一回目出たはずの魔法陣が出ていない。

 それもそうだ、ただ魔力を流しているだけだからだ。

 魔法陣も魔力で作っているため、魔法陣で使う分の魔力を魔法の火力などに使うことができる。

「魔力を流すだけで魔法は発動するし、魔法陣に使う分の魔力も火力に回せるのか、いいじゃん」

 得意なもう一つの魔法、ウィンドを残りの二つのうち一つに当てはめてみた。

「えいっ」

 短刀に風の刃が纏うが、何も出ない。

「ん?」

 色々試す中、振ってみると、風の刃が描いた弧と

 付与した武器によっては違った反応も示すようだ。

鎌鼬かまいたちみたいだな」

 買った短刀を試すため、クエストを受けに行った。

「何か視線を感じる…」

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