第2話 異世界の生活。

 エルにより異世界に召喚された主人公、高木たかぎ勇樹ゆうき

 目覚めるとどこかの宿のような場所にいるようだった。

「ここどこ?」

 何もないところに向かって話しかけてみる。

「ここは異世界、アジャルタの学園都市ドゥアリタス、4番街の長期宿だな。アパートみたいなもんだ」

「4番街って言うと?」

「この世界の魔法魔術学校ホグ…じゃなくてスぺクラヴィスを中心に、正方形にできた街を対角線で区切った中の一つだな」

「わかったんだが…学生寮とかはないの?」

 長期宿ならば金が必要になるだろう、中学生に稼ぐ方法などないため、不安になるのも当然だ。

「そこは稼ぐ方法が後々わかるから安心しろ」

「ならいい。んでこの後は何すればいいんだ?」

「ここは学園都市、わざわざここに召喚したのにも理由がある」

「通えってことか、そのスぺクラヴィスに」

 少しエルが驚くが、すぐ元の見た目不相応の態度に戻る。

「よくわかったな、その通りだ。だがそのためにも条件がある」

「受験か?」

「そうだ。ただ学校といっても大学に近い制度だからな、あまり細かくは見られないから安心しろ」

「失礼な天使だなあ」

「別にいいさ失礼でも」

「まいっか」

 入学のために必要な簡単な勉強をエルにあらかた教わり、召喚から一か月、ついに入試当日となった。

「まさか読み書きと魔法の基礎だけとは」

「まあ初等部からだしな」

「他には中等部、高等部、特等部があるんだっけ」

「本来は各三年あるんだが、先生の推薦さえあれば飛び級できる、ただ特級は無理だ」

 いつの間にか支給された服は着ておらず、街に溶け込む服装になっていた。

 かなりセンスがいいが、一人歩きできるような年齢には見えないため結局たまに変な目で見られていた。

「絵面ちょっとやばくない?中学生くらいの子供がそれより小さい子供に道案内されるって」

「じゃあ明日にでもお前の二、三歳上の見た目に変えとくよ」

「なんでそんなに幼い姿なんだ?」

「多少のやらかしなら見逃されるし、飛んだりしやすいからな」

 少し歩くと、あとはまっすぐだと言われてエルは帰っていった。

 受験は難なく突破、学習体制が整っていない時代に助けられた。

 数日後、合格発表の日になったが、やはり合格していて、一安心だった。

「これから起こる問題は何だと思う?高木勇樹」

「わからんな。なんか気にしなきゃいけないことがあるのは感じてるがな」

「(やっぱ勘いいな)問題は金だ、最初は出してやるが、入学してからは稼ぐ術がある」

「ちゃんと教えてくれよー」

「今教えても面白くないしな、明日からがんばれよ」

 服装の指定はなく、大学に近い制度のようだ。

 歴史などまともに残っておらず、社会の構造や、魔法の基礎の復習、簡単な数学、国語のようなもの等、現代日本より教育体制が整っていないことが伺えた。

 その中の社会の講義の時、こんな話があった。

「この学園都市ドゥアリタスを中心に、依頼を受けられるギルドがあり、それはドゥアリタスのあるイニティウム大陸の各大都市に設置されています。スぺクラヴィス内のギルドは大陸有数のギルドなため、卒業後も本校を依頼を受ける拠点に活動をしている人もいます」

「(まさかね…)」


 

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