第205話 因縁

「...伊藤か?」


 俺の問いに彼は答える。


「ああ、探したぞ高坂...! 今日帰ってくるって愛川のSNSに粘着し続けやったからな...! 随分と楽しそうにしてたじゃないか...!」


 奴はそういいながらいきなり剣を振り回してくる!!!


「馬鹿っ! お前、状況分かってるのか!? 今は俺たち個人の因縁に構っている場合じゃない!!! ドラゴンが3体も出てきているんだぞ!?」


 と呟く俺に奴は「4体だ」と答えた。


「何っ?」


「ドラゴンは全部で4体だ。高坂。俺をはめたお前を絶対に殺す為に濃いドラゴンがボスのピンクゲートを4つ破壊したんだよ」


「...はっ?」


 俺は空いた口が塞がらないでいた。


 何言ってんだこいつは...。


 そもそも俺はこいつにはめられた側だぞ? 俺がこいつをはめたことなど一度もない。


「どう言うことだ?」


 俺がそう返すと彼はこう答える。


「お前が俺の行動を他のパーティに広めたせいで誰もパーティ組んでくれなくなったんだよ!!! パーティを組めないせいで稼げなくなって高橋の奴も俺の様なすぐにダメなバレる行動をする仲間はいらないとか言い腐るしよ!!! せっかく手に入れた【正十字学園】のメス奴隷も親が俺のことを知って娘から離れろかと言い出すしよ!!! お前のせいだ!!! お前のせいで俺の人生滅茶苦茶だ!!!! お前さえいなければ俺は今頃頂点を極められていたんだ!!!!」


 などと言いながら俺に喧嘩をふっかけてくる。


 流石にこんな状況でこいつの相手などしたくはないが、流石に今回の行動は度が過ぎている。


 俺を殺す為にゲートを破壊して一般市民まで巻き込むだと? 頭が悪いなんてもんじゃない。


 俺の中で目の前の男に対する怒りが燃え上がった。


「伊藤」


「あっ?」


「...俺は2度お前にやられた」


「それがどうした? 高坂がよえーだけだろう? レベルが50もあって強い俺が弱者の高坂を甚振る。当然の縮図だろう!」


 などと笑顔で言ってくる奴に情なんてものはいらないな。


「...その理屈が通るならお前が俺に甚振られても文句は言えないな?」


 俺の言葉に彼は笑う。


「ハハハ! 寝ぼけてんのか!? 俺はお前の戦略を知っている! くっそ弱いデバフを強力な仲間とモンスターで補う戦法だろう? しかも強い魔物である蛙と赤鎧の騎士は今別の場所にいるんだろう? しかも結美は今頃別の地域でドラゴンと戦っているだろうからこの戦闘には間に合わない。戦力分散してくれてありがとうよ! 雑魚のお前1人なら余裕で殺せるぜ!!!」


 そう言いながら銀の剣を掲げる伊藤にもうかける情けはない。


「そうか...、ならばここで死ね」


 俺は静かに杖を構えると同時にメニュー画面を見た。


『個体名【高坂和希】の感情の昂りを受けた事により、リィカ、アル子、フワンの進化条件が満たされました』

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