第30話 帰り道

 〜2日後〜


 俺たちは結美の完治を確認してからエルフの村を出ることにした。


「うん! よしっ! もう治ったよ!」


 ぴょんぴょん跳ねても問題ないくらいには回復しているのを確認する。


「エルフ秘伝の薬草風呂のおかげでかなり早く回復できたよ。ありがとうねレイナちゃん」


「いえ、この村が守れたのは愛川様のおかげですから。気にしないでください」


 彼女はそう呟くと名残惜しそうに愛川の手を握った。


「またいつでも来てくださいね」


「うん。また寄らせて貰う」


 2人のやりとりを見た後に出発する俺たち。


 勿論このままゲートに戻るつもりだ。


 その道中にて結美の話になった。


 その時になって彼女は重苦しく口を開く。


「1ー3の皆は...」


「言うな」


 既にレイナや他のエルフ達から話は聞いているので何があったかは理解しているつもりだ。


 愛川結美という女性は自分にできる事を全力でやったと俺は分かっているし、他の犠牲になった者達の助力がなければ突破できないほどの物量があったのだと防衛戦場を見てしまえば分からない者などいないだろう。


 木々が薙ぎ倒され、小さなクレーターがいくつも空いてある森の戦場は、まるでそこだけ小さな戦争があったのかと思わせるくらいには悲惨な場所だった。


 全員分の遺骨を埋める為にエルフ達は総出で墓を作り上げる。


 慣れない手つきで慰霊碑の如く木々を植え直し、その木々全てに死者の名前を与えていた。


 それがエルフなりの葬儀の仕方なのだろう。


 見ていた感じあれだけの人が一気に死んだ事は今までにないらしくかなり疲労している姿が見えた。


 レイナが俺たちのレベル上げにあれだけ助力してくれたのもつまりはお礼の気持ちが少なくはないだろう。


 俺は彼女から貰った杖を眺めながら、これは大切にしようと思うのだった。

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