エピローグ/魔王の復活
「何ということだ……」
薄暗い玉座。豪華な椅子に腰を下ろした国王は頭を抱え、言葉を漏らした。
顎髭を生やし、顔には深い皺が刻まれた国王の正面には、ローブを着た男がうやうやしく膝をついている。
「封印が解けたということは、あの魔竜が、ユアンが復活したのか?」
国王は顔を上げ、男に問いかけた。
男は恐縮しながらも、深々と頷く。
ダン! と、国王は苛立ったように肘掛けを強く叩いた。
「明朝。……いや、今すぐにでも城内の騎士達を、……それでは足りない。王国中の騎士団と魔導士を今すぐ集めろ! 今すぐにでも、再度封印に向かわねば! 王子を! こんな時に呑気に眠っておる愚息を今すぐに起こしてまいれ!!!!」
国王は玉座から立ち上がるなり、ぐるぐる回りながら喚き散らす。
「落ち着いてください! 陛下!」
「儂は落ち着いておる!!!」
ローブを着た男になだめられても、国王は落ち着かない様子だ。
「あの! 魔竜ユアンじゃぞ! 我が王国の歴史上もっとも深い爪痕を残した魔竜じゃぞ! あの魔竜は王国を半壊させ、国宝だった聖剣を奪ったのだ! しかも、それだけでは飽き足らず、あやつは……! えーい、やはりこうしてはおれん。この老体に鞭打ってでも、……誰か! 誰かおるか!!!!!」
居ても立っても居られなくなったのか、国王は玉座の間を飛び出そうとした。
その後を、ローブを着た男が慌てて追いかける。
「陛下! 陛下! お待ちください! 魔竜だけではないのです」
「何だと言うのじゃ! もったいつけずに、さっさと申せ!」
行く手を阻まれた国王は、男に怒りをぶつけた。
「これをご覧ください」
ローブを着た男は、円状の割れた石を震える両手に乗せ、国王に差し出す。
その石には文字のような模様が刻まれており、青く淡い光を放っていた。
「この石がどうしたというのじゃ」
「この石は魔竜を封印するために使われていたのですが、石が割れる前に一瞬だけ黒い炎に包まれたのです」
それを聞いた途端、国王は大きく目を見開く。
「何と! 黒い炎じゃと!!! 真に黒い炎だというのか?」
「はい」
「何ということだ……。黒い炎を使えるのは、世界でも魔王一人だけだったはずじゃ」
国王は天井を見上げながら、両ひざをついて崩れ落ちる。威厳のある顔は、すっかり青ざめていた。
「遥か昔、世界がまだ一つだった頃に現れたと伝えられている魔王だけ。まさか、魔王が再び現れたというのか? 何と……、何ということか。魔竜と同時に魔王までもが……っ」
俺と魔竜 セシル @sesiru-0
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