詰んだぁぁぁぁ!!!
「……ここって、結界の中なんだよな。てことは、え? もしかして、俺もここから出れないの?」
「出れないのぉ~」
のんびりとした声で、ユアンは言った。
「出れないのかよ! うわ~、詰んだ」
最悪なことに気がついてしまい、俺は頭を抱える。
せっかく異世界に来たのに、洞窟から出れないって。そりゃないだろ。
「結界って、魔法で作られてるのか?」
「一応、魔法じゃのう。この結界は、高等魔術の部類じゃ」
「ほぉ」
魔法と聞いて、俺はワクワクしてしまう。
やっぱりさ、異世界といったら魔法だよな!
「なぁ、ユアン。お前も魔法が使えるのか?」
「もちろん。じゃが……」
彼女は両手を上げて、自身に付けられた手枷と鎖を俺に見せる。
「この通り、儂は力を封印されておる。大がかりな魔法は使えん」
「大がかりな魔法じゃなくても良い。何でもいいから、魔法を見せてくれ!」
興奮を抑えきれず、俺は食い気味に言った。
「そうか。では、地味じゃが」
ユアンはゆっくりと立ち上り、俺と距離を取るように歩いていく。
ある程度俺から離れたところで、ユアンは立ち止まった。
ややあって、彼女は両目を閉じて片手を前方に出す。すると、彼女の真下に見たこともない魔法陣が水色と白色に発光しながら現れる。
洞窟内にも関わらず、風が渦を巻き、彼女の長い髪を揺らしながら吹き荒れる。
肌寒さを感じたと同時に、俺の周りの花が凍っていく。
それから、どこからかピシピシという音が聞こえた。音の方に視線を向けると、ユアンの周囲に鋭い氷の結晶が生成され始めていた。
「おおおおおおおおおお!!!!」
すっげえええええええ!!!
本物の魔法だ! アニメや漫画で見ていたことが、今、俺の目の前で起きてるんだ!
氷の結晶が三本の槍状になった時、ユアンは目を開いた。
魔法陣が今まで以上に発光し、破裂する。その瞬間、三本の氷の矢が一直線に発射された。
キィィィーーーーン。
氷の槍が発射された直後、新幹線が真横を通ったような音が響き渡る。
しかし、すぐにパリィーーーーンと大きな音がして、氷の槍が粉々に砕け散った。
槍が砕ける寸前、青い障壁が一瞬見えた気がする、もしかして、あれが結界なんだろうか?
結界にぶつかって、氷の槍が砕けた?
いや、今はそれよりも。
「すげーーーーーーーーーー!!!」
俺は両手を広げ、感動をそのまま口にする。
魔法陣の出現、吹き荒れる風、氷の槍。全てが神秘の偉業だ。
そんな偉業をやってのけた彼女は、白い冷気に包まれていた。
ユアンは乱れた髪を整えつつ、凍てついた花畑を歩む。目が合うと、ユアンは照れたように笑みを浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます