第7話:お試し冒険

「じゃあ、少しの間だけパーティー組んでみない?」

気持ちはうれしいけど、やめておくんだよ。

私は基本的に物を運ぶ程度しか出来ないからね。

しかも、徒歩だとそれほど遠くまで移動出来ないんだよ。

「でも、トラを倒せたんでしょ?」

あれはまぐれなんだよ。謙遜とかそんなのじゃなくて正真正銘のまぐれ。

次はないと思うんだよ・・・


「ちなみに普通に戦うと魔物の討伐とかは?」

一方的に私がやられるんだよ。

なにせ『ちから』が1しかないからね。思いっきり攻撃しても向こうはノーダメージなんだよ。

そのうえ、私は魔物のどんな攻撃でも大概1撃で死んじゃうんだよ。

「なるほど、思ったよりも難易度が高いね・・・」

それに、そもそもまともな武器や防具が装備出来ないんだよ。

重くて動けなくなるからね。

「なるほど、一般人を護衛しながら戦うのと同じなのね?」

むしろ一般人の方が楽なんじゃないかな?呪われてないから。


「呪いもたくさんあるんだっけ?」

これのせいでレベルが上がらないし、魔物は寄ってくるんだよ。

「じゃあ、魔物との戦闘も多くなるってこと?」

魔物だけじゃないんだよ?盗賊や山賊もなんだよ。

馬車に乗ると大抵襲われるんだよ。

「それほどなの!?」

でも、魔物は大概私を狙って攻撃してくるから、それを守って反撃して欲しいんだよ。


「うーん、話を聞いただけじゃいまいちよくわかんない。ちょっとだけ薬草の採取でもしてこよう?」

今から?

まあ、薬草の採取ならそれほど時間がかからないかな?


そんなわけで、近くの森です。

「ここはそれほど危険じゃない森だけど?」

まあ、それはどうでもいいんだよ。

こうやって薬草を採取しているでしょ?


ひょいひょいひょいひょい・・・


「なんでそんな勢いで薬草が採取出来るの?」

レアスキルの『鑑定解析』のおかげで、鑑定が常時発動してるからなんだよ。

「もしかしてMPの消費無し?」

もちろんなんだよ!でも、膨大な情報が頭に流れてくるから本気で使ってると気持ち悪くなるんだよ・・・


ぞわわっ


背中がぞわっとしたんだよ!

あっち!あっちの方に何かいるんだよ!

「え?何にも感じないけど?」

何か出てきたらさっさと倒しちゃって欲しいんだよ!

「普通は低レベルの人が攻撃してからとどめを刺すけど・・・」

私はレベルが上がらないから気にしないでいいんだよ!

「って、本当に魔物が来たね。この距離なら私の索敵にも引っかかるよ」

私は危機が迫ってることしかわからないからね。数とか強さとかはわからないんだよ。


「この森はたまにゴブリンが出る程度なんだけど・・・なんでトロルが居るの?」

それはもちろん私の呪いのせいなんだよ。大体2~3ランク上の魔物が襲ってくるんだよ。

ダンジョンのボス部屋とかならレアな上位種のボスが出てくるんじゃないかな?

「それは最初に聞いておきたかったな・・・」


あれ?もしかしてニニアさんだとトロルは倒せない感じ?

「ランクDの魔物だからね、パーティーじゃないとキツイかな?」

じゃあ、追いつかれる前に逃げるのは出来る?もちろん私はお荷物なんだよ?

「走るのも遅いんだっけ?」

小脇に抱えて移動することを推奨するんだよ!


「えー?さすがに持てなくはないけど、それで走るのは無理かな?」

じゃあ、どうしようっか?

ニニアさん、足止め出来る?

「足止め?」

一瞬でいいから、位置を固定してほしいんだよ。

私のとっておきの攻撃を確実に当てたいんだよ。

「なるほど!一瞬でいいのね?」

当てられれば勝てなくても逃げることは出来るんじゃないかな?


ニニアさんが地面に種を蒔く。

「サモンエレメント、コード:プラント、タイプ:アイビー、マテリアライズ」

これって、召喚魔法の呪文なんだよ。

するとさっき蒔いた種から勢いよくツタが伸びてトロルの足に絡みついた。


今なんだよ!必殺のごちん!


きぃぃぃぃぃん、どすぅぅぅぅぅん!!!


よし、当たったんだよ。

「トロルがぺちゃんこだね・・・」

私の唯一の武器だからね。ちゃんと回収しておかないと。

トロルを潰した岩が消える。でも、トロルは消えなかった。


まだ生きてるんだよ!

「え?ぺちゃんこなのに?」

アイテムボックスに入らないってことは生きてるんだよ!


もっかい!


ごちんごちんごちんごちん・・・


これくらいやれば大丈夫かな?

「さっきから何やってるの?」

大きな岩をアイテムボックスから取り出してるんだよ。トロルの上空に。

「な、なるほど。結構エグイことするのね・・・」

相手の方が強いんだから手加減なんて要らないんだよ!


よし、トロルもアイテムボックスに入ったんだよ。

「トロルって言うか、トロルだったものだね・・・」

と、まあ・・・こんな感じなんだよ。

「なるほど・・・これは厳しいかもね・・・」

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