第53話:白、問題は山積み

ウインドボール!

ソイルボール!

ライトボール!

ダークボール!


カモミールさんに見本を見せてもらった後に普通に無詠唱で使えたね。

「これで初級のボール系は全部使えるようになったわね?」

基本的にアローとあんまり変わらないんだよ。

大きなアロー?

「いや、当たった後に破裂してるでしょ?」

うーん、結局1匹にしか当たらないんだよ?

普通にアローをたくさん撃てばいいと思うんだよ?


「勇者様の魔法だからアローでもそれなりに効果が望めるんです」

これくらいの魔法が使えれば当分は大丈夫?

「回復魔法は不要なんですよね?」

魔法を使うよりもお薬を振りかけたほうが速いんだよ。

「まあ、あの薬ならそうなりますね・・・」


広範囲の攻撃も『ファイアストーム』があるからそれでいいかな?

「狭いダンジョンなんかで使ったら味方も全滅しますよ?」

なるほど。それじゃ使えないんだよ・・・


対集団の魔法が無いと困るね。範囲魔法とかそんな感じのやつ?

しかも味方に迷惑にならない感じのやつ。

「それはどんな魔法でも連携の相談や調整なんかが必要になるわ」

まあね、味方を避けてくれる魔法なんて無いんだよ。


「そういった意味ではアローをたくさん撃ち込むのが有効かもしれないわね・・・」

相手の軍勢とどこで戦うかによっても変わって来るんだよ。

大平原でお互いの軍勢が陣取って戦うような場合は極大呪文をぶち込むんだよ!


「ところで、現時点ではこちら側の軍勢はどれくらいなのかしら?」

ここに居るのが全員なんだよ?

「え?」

カモミールさんが指折り人数を数える。

「私でしょ?勇者様にグレイス様に姫様に・・・」

カモミールさんが両ひざをついてうなだれちゃったんだよ・・・

「冒険者パーティーが2組分ほどですね・・・」

でも、厳選した有力なメンバーなんだよ?

「しかし、これでは軍勢とは呼べません!」

ちょっと人数が足りないかな?


「相手は魔王軍なんですよね?」

そうなんだよ?

「おとぎ話では無いんですから、さすがに足りなすぎます」

そうなの?

相手だって魔王と四天王だけかもしれないんだよ?

「それは魔王城での最終決戦とかの話ですよね!?」

頑張ってこれだけ人数集めたんだよ・・・


「魔王軍の情報はまだ無いんですか?」

それがまだ全然さっぱりなんだよ。

そもそもこの大陸じゃないかもしれないんだよ。


「すると、別の大陸がすでに数十万の魔王の軍勢に滅ぼされている可能性もあるわけね?」

それはないと信じたいけど、否定も出来ないんだよ・・・

ところで別の大陸にはどうやって行くの?

「船では無理ですね・・・」

時間がかかるから?

「海でも魔物は襲ってきます。勇者様が撃退出来るかもしれませんが、船を狙われると危険です」

船が壊されるとおぼれちゃうんだよ!


じゃあ、やっぱりチチカカが空を飛ぶ?

「まだ別大陸に行くって決まったわけじゃないですよね!?」

でも、可能性はかなり高いんだよ。

「どちらにしてもこれっぽっちの人数では心もとないですね・・・」

無駄に数だけ揃えればいいってもんじゃないと思うんだよ?

「確かに、その通りです」

それに、人数が多くなると海を渡るのがより大変なんだよ。

「問題ない、我が運べる」

リヴァイアサンは空とか飛べるの?

「空も飛べる、そしてとても大きい」

レビと同じくらいなのかな?それなら期待出来るんだよ!


「一度現物を確認してみましょう」

タルトの言うことももっともなんだよ。

リヴァイアサンは出来るつもりでも、実際やってみるとダメかもしれないからね。

とりあえず街の外に出てリヴァイアサンに本来の姿になってもらう。


「私よりも全然大きいです!」

チチカカの10倍くらい?まあなんて言うか大きいというよりも長い?

レビと同じだね、大きな海蛇が空を飛んでる感じなんだよ。

大きさだけで言えば全員が載っても平気そうなんだよ。


とりあえず落ちても平気な人を乗せて飛んでもらおうかな?

「では私が乗ってみます」

チチカカなら空を飛べるから落ちても大丈夫なんだよ。

「どこに乗ればいいんですか?」

背中じゃないかな?

「どこでもいい」

チチカカがリヴァイアサンの背中によじ登る。

「背中に上るのも結構大変です・・・」

鱗がきめ細かくてスベスベしてるからね。

「掴まるところが無いですね・・・」

ああ、もうわかっちゃったんだよ。オチが見えたんだよ。


「じゃあ、ちょっと飛ぶ」

リヴァイアサンが空に浮かび上がって速度を上げた瞬間にチチカカが転げ落ちたんだよ・・・

チチカカは空を飛ぶ前に地面に激突したけど大丈夫なんだよ?

とりあえずお薬をどばしゃーっとかける。

「危ういところでした・・・」

魂が口からでろんって出てたからね。

「今の状態で乗るのは危険です!」

結局ふりだしに戻ったんだよ・・・

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