第54話:黒、堕天使との決着

さてと、どうせさっぱり効いてないと思うから対策を考えないとね。

『歓喜の歌』で斬りかかるか?破壊不能だから折れることは無いはず・・・

それにしても、75階層でミロンが出てきて90階層ではジブリールか・・・

この調子だと、100階層で何が出るやら・・・

こんなことなら浄化薬でも用意しておけばよかったか?

待てよ?堕天も状態異常だとすれば・・・薬で治るかも?

しかし半端な薬じゃ効かないと思う。


「この程度の拘束で我を封じることは出来ん!」

ジブリールがグラニテちゃんの結界を突き破って脱出しようとする。

マカロンちゃん、クレープちゃん時間を稼いで!

「指揮官殿の大技ですね?」

とにかく呪文の詠唱をする時間を稼いでもらわないと!


『実が成り花が咲きつぼみの同居する果樹園よ、あまたの恵みを与えしすべての根源たる祝福の泉よ、泉のほとりの小さな丸太小屋よ、すべては遥か遠い日の思い出、今一度過ぎし日の思い出をここに再現せん!エリュシオン!!!』


ダンジョンのボス部屋だった空間が草が生い茂る空間に変異する。

森の中の草むらにある泉、その泉のほとりにある丸太小屋。

ダンジョン内に無理矢理楽園の一部を再現する。

「バカな!なんだこの魔法は!?これは楽園ではないか!?」

ジブリールはまだ完全には脱出出来ていない。

「そんな、ありえん・・・ここはまさしく遠い日の・・・」

そして、楽園の中なら私の力は無限なんだよ!


行くよ精霊さんたち!

「「「「「「お手伝いは任せるのよ!」」」」」」

楽園に無理矢理6大精霊を実体化させる。


さあ、本番はこれからなんだよ!


『風よ、火とともに素材を分解、乾燥、粉砕せよ!』

『水よ、風とともに素材を混合、溶解、攪拌せよ!』

『土よ、水とともに素材を設置、固定、安定せよ!』

『火よ、土とともに素材を煮沸、浸透、抽出せよ!』

『光よ、闇とともに素材を圧縮、選別、錬成せよ!』

『闇よ、光とともに素材を変質、聖別、浄化せよ!』

『薬よ、夢とともに世界を改変、修復、顕現せよ!』


「バカな!その呪文は!」


ら・ら・ら・ららら・ら・ら・らららら・らーららー

らん・らら・らんらら・らんら・らんらんらーら・らーらーらー


「そして、この歌は!」


『歌え、歓喜の歌!』


拘束から抜け出したジブリールに虹色の薬が降り注ぐ。

「これは・・・この薬は!」

真っ黒な天使の輪は消え失せ、黒い翼も消滅し、ジブリールは気を失った。

アイテムボックスから薬を取り出し、倒れているジブリールに振りかける。

それでも目を覚まさなかったので、お尻をペチンペチンしてみた。

「ひゃぁん」

かわいい声とともにジブリールが目を覚ます。


おはようジブリール、目は覚めた?

「おはようございます、リーゼロッテ様。悪い夢を見ていたようです」

ジブリールの背中には真っ白な翼が現れ、頭上には光の輪が出現する。

堕天が解除されたみたいだ。


すでに楽園は消え去り、元のダンジョンのボス部屋に戻っている。

「リーゼロッテ様、以前とお姿が違うようですが?」

驚いた。以前の姿を知っている?別の世界なのに?

そういえば楽園も知ってたみたいだし・・・

「ところで、ここは?」

ここはラプラスの大迷宮の90階層目。

「ラプラス?知らないダンジョンですね・・・」

まあ、ここは前とは別の世界だしね。

でも、あなたがこの階層のボスだったのよ?

「なんと!?リーゼロッテ様に敵対した?この私が!?」

ああ、また黒く堕天しかけてる・・・

慌てて薬を飲ませる。

「申し訳ありません」

いいのよ、全然問題無いわ。


ボス部屋のドアが開き、避難していたメンバーが中に入ってくる。

「指揮官さん、ご無事で何よりです!」

アイリスが抱き着いてきた。

「リーゼロッテ様、この方々は?」

私が率いている『黒猫メイド騎士団』のメンバーよ。

この娘、アイリスは私の副官ね。

「では、私もその末席に加えてください」

もちろんよ!


とは言え、メンバーに加えるには街に戻らなといけないのよね・・・

「リーゼロッテ様所有の騎士団ではないのですか?」

ああ、騎士団って名前がついてるけど冒険者のクランなのよ。

「では、ギルドへの登録が必要ということですね?」

その通りなんだけど、さっきも言ったように、ここはダンジョンの90階層目なのよ・・・

「ここが階層主の部屋なら外に出るゲートがあるのでは?」

残念なことにこのダンジョンは物理的な階段なのよ。

「空間転移の魔法やアーティファクトもないということですね?」

さすが、天恵の大天使ね話が早くて助かるわ。


でも、ここまでの通路はすべて分岐を排除して一本道にしてあるから・・・

「ミロン、運ぶ」

そう言うと、ミロンが私とジブリールを飲み込んで猛スピードで跳ねていった。

「今、メイドとすれ違いましたが?」

ああ、みんなメンバーよ。なんたって、『黒猫メイド騎士団』だからみんなメイドなのよ。

それに今回は全員、500人ほどの人数を連れてきてるから。

「大人数ですね」

ダンジョンを攻略するための人員よ。

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