第50話:黒、再び進軍開始

ミロンは私の小隊に。

「それはりーぜと一緒?」

そうよ、私と一緒のチームってこと。

元々私の小隊は定員割れしていた。

部隊全体としてはこんなにも人数が増えたのにずっと5人のままだった。

そして、今ここにミロンを迎えることによってメンバーが揃った。


「では諸君、探索だ、冒険だ、蹂躙だ、殲滅だ、グラニテちゃん大隊、行動開始!」

相変わらずメチャクチャな命令なんだよ・・・

でも、そんなメチャクチャな命令になんの疑問も抱かずに全員が迷わずに自分の仕事をこなす。

76階層も、77階層も立ち止まることなく踏破していく。

出てくる魔物はサイクロプスやギガンテスの上位種。

でも、なんの障害にもならない。

それどころか、食材にならないと部隊のみんなには大不評だ。


「ミロン出番ない」

80階層目のボスはグラニテちゃんがあっさりと討伐。

ギガンテス・センチュリオン。フルプレートメイルと大剣を装備したギガンテス。

大きいのにものすごいスピードで動き回る強敵のはずだったんだけど・・・

グラニテちゃんがマジックアローの檻に閉じ込めて、

大隊のみんなに好き放題攻撃させたのちに超多重マジックアローでとどめをさした。

聞いたところ、現時点では1024発分のマジックアローらしい。

まだまだシャーリーには及ばないけど、十分すぎるほどの威力だ。


「スイッチするよ!今度はマカロンちゃん大隊の番だよ!」

ここから85階層まではマカロンちゃん大隊。グラニテちゃん大隊は中継基地まで戻る。

代わりにクレープちゃん大隊が補佐として随行。このローテーションで進んでいく。


そして、マカロンちゃん大隊も順調に85階層まで到達。

「ミロンの出番が以下略!」

何かミロンのご機嫌が斜めのようね・・・


あーん・・・ぱくっ!


「ああ!指揮官さんが!」

ん?ミロンに食べられた?

「ミロンが先頭で進む!」

そう言うとすごい勢いでダンジョン内を跳ねていく。


◇ ◇ SIDE:アイリス ◇ ◇


『指揮小隊、全員ミロンを追跡!後れを取るな!』

何ということ?

指揮官さんがミロンにさらわれてしまった・・・

実際には退屈なミロンが独断先行しただけなんだけど、指揮官さんを丸飲みするとは・・・

何といううらやまけしからんことを!


「我が神を取り戻す!」

今度はシャノンまでミロンを追って突っ走ってしまった。

「副官様、自分も行くであります!」

キャンディまで!?

もう既にキャンディの姿は見えない。虚像と実像を駆使した移動方法。


せめてニニアは押さえておかないと・・・

って、どこにも居ないし・・・

さすが他では手に負えなくて余った問題児たちだ・・・

個々の能力は断トツなのにまとまりがない。協調性という言葉を知らないのか?


「副官、まあ我々が居る。指揮大隊第1中隊第2小隊、現時刻より副官の指揮下に入る!」

シシリー!すまない。

「問題ありません、命令を。指揮官の捜索ですか?階段の捜索ですか?」

こうなったら先にボス部屋に到達する。

最速で階段の探索を!


「そう言うわけだ。副隊長よ、副官の案内を頼む!」

そう言うとシシリーも歩き始める。ゆっくりと。

分岐があると分岐の数だけシシリーは分身して進んでいく。

そして最終的にはすべての通路をシシリーが埋め尽くす。

階段に到達したシシリーは次の階層に進み、残ったシシリーが迷路をふさいでいく。


「では、副官様進みましょう」

私は一本道に作り替えられた迷宮を進んでいく。

雷を身にまとったエクレアとともに。

「それにしても副官様の装備はすごいですね・・・」

私のと指揮官さんの装備は特別製だ。

大隊長の分すら用意出来なかった希少な素材が惜しみなく使用されている。

そのおかげで雷を纏ったエクレアに触れることも出来る。

ここまでの長距離行軍でもまるで疲労を感じない。

戦闘スキルをほとんど持たない私が副官でいられるのがこの装備のおかげだ。


糸で魔方陣を立体的に刺しゅうする。

最初に指揮官さんにその話を聞いた時にとてつもない発想だと思った。

指揮官さんは別の世界で魔導裁縫士って人に教わったらしい。

その人は魔導士のローブに数千もの魔法陣を組み込んだという話。

私はまだ53個の魔法陣しか縫い込めなかった。

作っているものが騎士服って言うのもあるけど、全然話にならない数だ。

でも、指揮官さんは褒めてくれたし、私だって満足はしていない。


全ては指揮官さんに勝利を捧げるために!

今は布地部分だけではなく装甲部分にも魔方陣を刻んでいる。

素材としての防御力が下がるのを覚悟しての試みだけど・・・

付与する魔方陣によって補えているはず。

さらなる高みを目指して日々精進はしている。

しかし、果たして決戦の時までに間に合うかどうか・・・

今だ敵の兵力は未知数。

魔王の出現のうわさすら聞かない。

指揮官さんを信じないわけではないけど、敵の姿も見えないのは不安だ。

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