第30話:黒、縄張りと木の精霊

さてと、親方を連れて外壁の計画を打ち合わせをしないと。

「また空を飛ぶのか?綺麗な道ができたんだろ?」

道は出来たけど、乗り物がないでしょ?

「歩いたって、それほどかからんだろ?」

それでも、時間を節約したいのよ。


ぎゅぃん


はーい、到着よ。

「うぅ、やはりこれは結構身体に響く・・・」

それで、この敷地の周りに壁を作りたいのよ。

「壁を作る?この周りって結構広いぞ?」

壁が無いと侵入者が入ってくるでしょ?魔物とか。

「しかし、どう作る?」

壁自体は簡単に作れるのよ。魔法でね。

「で、俺は何をすればいいんだ?」

壁を作る指示を出してほしいのよ。

そうしたらその通りに作るから。私が適当に作ると今後の計画に影響が出るでしょ?

「そう言うことか」

そんなわけで、きちんとした設計を頼みたいのよ。


「まずは、どこからどこまでがここの敷地なんだ?」

それは私が認めた範囲よ。

「また、曖昧な・・・」

とりあえずは必要な分だけを囲いたいのよ。


「そうだな、宿屋程度の建物を建てるんだろ?それも複数だよな?」

とりあえずは100人分程度ね。

「ゆくゆくは拡張もするんだろ?それも踏まえての計画だよな?」

その通りよ。

将来的には村や街と言えるレベルまで拡張予定よ。

「街は流石にそれは話半分としても、村レベルか・・・」

ちなみに門はこっち側に1箇所でいいわ。

「まあ、周りは全部森だしな。道はこっちにしか無いし・・・」

まあね。


「ところで、作るのは隊員の宿舎だけじゃ無いんだろ?今の所の計画を教えてくれ」

そうね。宿舎だけではなく職人たちの工房も必要になると思うし、畑も必要になると思う。

「畑?何を作るんだ?」

薬草よ。ポーションの材料にするの。

「それで工房もなのか?」

さすがに食料までは自給自足出来ないと思うし。

あとはお風呂屋さんとか食堂とか・・・

「確かに村って感じだな・・・」

とりあえずはね。


「嬢ちゃんの計画が壮大なのは理解した。そしてまずはその第1歩と言うわけだな?」

親方が何やらぶつぶつ考え込んじゃったね。


「よし、この線に沿って壁を作ってくれ」

親方が地面に縄を張って線を引いた。さすがに木の枝でガリガリ描くんじゃないのね・・・

「そんなんじゃまっすぐ線が引けないだろ?壁が歪んじまうよ」

なるほどね。


『グランド・ウォール』


目の前に巨大な壁がせり上がる。

「すげえな、一瞬でかよ・・・」

次はどこ?

「よし、次はこっちで、それから・・・」

親方の指示でどんどん壁を作っていく。

敷地をぐるっと囲む壁が完成したんだけど・・・これどこから外に出るの?

「あちゃー出口がないぞ?そうだな・・・ここに扉用の穴を開けられるか?」

開ける穴の指示をしてくれれば問題ないわよ。


「ここだ、この線に沿って穴を開けてくれ」

親方が扉の形に線を引く。


『ジャッジメント・レイ』


これで問題ないかしら?

指示通りの形に穴が空いたはずよ?

「完璧だ。しかし、これって崩れないよな?」

それは保証出来ないわ。だから、これをベースにちゃんとしたのを作ってほしいのよ。

あくまでもこれは応急処置の臨時の壁よ。こんな壁でも在ると無いとで安心感が違うでしょ?

「なるほど、工事期間中の保険みたいなもんか・・・」


工事にはうちのメンバーを使っても構わないわ。

もっとも、少し鍛えてからじゃないと役に立たないとは思うけどね。

もちろん、敷地内の見張りもさせるし、魔物が出れば討伐もするわ。


あとは工事前に準備しておくことはないかしら?

「そうだな、建築資材を用意して欲しい」

木材とか?

「とりあえずは木だな。木材の状態になっていればなおいい」

これも適当に伐採すればいいってもんじゃないのよね?

「木は伐っただけじゃ木材としては使えない」

乾燥が必要なのよね?

「ああ、数か月は乾かさないとダメだ。すぐには使えねぇ」

まあ、それも魔法でどうにでもなるから大丈夫よ。

「魔法、すげぇな・・・」

そりゃぁ、魔法って言うくらいだし当たり前なんだよ!


木を伐採するとして、どこら辺を伐ろうかしら?

森の生態系とかを無視するのもあれだし、森の精霊とかともめるのも嫌だし。

『ドリアードの指示に従ってほしい』

あら?

木の精霊様ね。まだ姿は見えないけど声は聞こえたわね。

うーん、やはり精霊の力が足りないのね・・・


家を建てるための木材にしたいの。結構な数が必要なんだけど・・・

『そうね。あんまり伐り過ぎると森が弱ってしまうのよ・・・』

じゃあ、伐った分と同じ数だけの苗を植えるってのはどうかしら?

『それで手を打ちましょう』

植えるのはりんごの木でもいいわよね?

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