第29話:白、平民とお貴族様について語る

「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!」


さて、くまさんを買取してもらえるかな?

「魔物の買取ですか?」

大きいくまさんなんだよ。

「それでは裏口にお願いします」

受付のお姉さんの後についていく。

「こちらなんですが、熊はどこにあるんですか?」

くまさんはアイテムボックスの中なんだよ。


「熊だと?大きいって言うとレッドグリズリーか?」

これなんだよ。


でろん


「なんじゃこりゃ?こんなもんどこに居たんだ?」

地図はある?

受付のお姉さんがどこかに行って地図を持って戻ってきた。

「この地図で言うとどの辺ですか?ここがこの街です」

受付のお姉さんが指差す街の・・・どこだろう?向きはこれであってる?


「そうですね。こう言う向きだと思います」

ミシェールが地図を回転させる。

「これが街に続く街道ですから、馬車を助けたのがこの辺だとすると・・・」

森はここだね?


「え?幻惑の森?ここは危険な魔物が多い上にすぐに迷うのよ?」

じゃあ、このくまさんも危険な魔物?

「ランクAのギガントタイラントベアだぞ?こいつが危険じゃなきゃ何が危険だって言うんだよ・・・」

だって、くまさんはグレイスが一撃で倒したんだよ?

それにしても、幻惑の森?

「迷い込むとなかなか出て来られないと言われてるのよ。よく無事だったわね・・・」

でも、結果的に隣の国に来ちゃったんだよ。


「そのおかげで命を救っていただけたのですから、感謝しますわ」

あ、お姫様。

「で、で、で、殿下!?」

解体のおじさんも受付のお姉さんも固まっちゃったね。

「リーゼロッテ様がこちらに迷い込んでいなかったら、私はすでにこの世には居ませんでした・・・」

うーん、まあ否定はしないけどね・・・


「ところで、リーゼロッテ様宿は決まりましたか?」

これからギルドでおすすめの宿を聞こうかと思ったんだよ。

「それでしたら私と同じ宿はいかがですか?」

でもお高いんでしょう?

「もちろん料金は私が出します!」

私は広い部屋だと落ち着かないんだよ。手を伸ばせば壁に届くくらいの広さが落ち着くんだよ。

「はあ・・・」


それにお姫様のお金は元は税金だよね?お姫様が贅沢をすると税金を払う人の生活が厳しくなるんだよ。

「考えたこともありませんでした・・・」

まあ、生まれた時からお姫様だから仕方が無いんだよ。

さすがにお姫様が安い宿屋に泊まるのもイメージ的によくないしね。

本当は領主様のお屋敷とかに泊まるとか、王家の別荘がある街に泊まるんだろうけど、緊急事態だったからね。

「確かに、もともとはこの街ではなく次の都市に泊まる予定でした」

でしょ?

おそらくそっちの街ではお姫様が泊まる準備をしてたはずなんだよ。

その分の用意が無駄になっちゃった上に、この街の泊まる分の余計な費用が発生してるんだよ。

「それらもすべて民の納めた税なのですね・・・」

もちろんなんだよ。


「どうやら、私は視野が狭かったようです・・・」

気にしなくてもいいんだよ。王族だとそういう風に育てられてもおかしくないしね。

あ、色々と余計なことを言っちゃったけど、不敬罪で切り捨てゴメンは勘弁してほしいんだよ?

「そんなことは微塵も考えていません!」

お姫様はそうかもしれないけど、周りの人も一緒とは限らないんだよ?


別にいつもじゃなくてもいいから、思い出した時にでも平民のことも気にして欲しいんだよ。

「そうします。今まで平民のことはそれほど考えてもいませんでした・・・」

平民が税金を払ってるからお貴族様たちは生活出来るってことを忘れちゃダメなんだよ。


そんなわけで、私たちは安い宿屋に泊まるんだよ。

あんまり無駄遣い出来ないからね。

「参考までにどのような宿か見学したいのですが・・・」

見ない方が良いと思うんだよ?


お姫様と話しているうちにいつの間にかグレイスが宿を取ってくれていた。

相変わらず、2人部屋と4人部屋なんだよ・・・

「ここが2人部屋なのですか!?」

うん、驚くよね。私もびっくりしたんだよ・・・

「何故、ベッドが一つなのですか?」

ここは1人部屋だと思います。

「そう、本当は1人部屋なの。他に部屋が無いから仕方がなかったのよ・・・」

他の部屋も空いてるように見えるんだよ!?

「4人部屋は空いてるのよ。でも、リーゼちゃんとなら問題ないかと思って・・・」

色々問題大ありなんだよ!?

でも、まあ、グレイスはがんばってくれてるし・・・


「ちなみに1泊おいくらなのですか?」

グレイス、この部屋いくらだった?

「2人で銀貨5枚ですね」

思ったよりも安いね。普通1人でそれくらいじゃない?

「リーゼちゃんが小さいから1人分の値段でいいって言われました」

おや?私の分はただってこと?

「シャーリー私たちの部屋はいくらでしたか?」

カステラちゃんじゃなくて、シャーリーって呼ぶようにしたんだね。

「2人で金貨1枚です」

やっぱりお高い部屋だったね。

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