第16話:黒、奴隷と拠点
「何を始めるんですか?」
いぶかしげな顔をしている奴隷商に向かって叫ぶ。
厨房を貸して!
案内されるままに厨房に移動してすぐに作業を始める。
錬金術のスキルはない。でも、精霊使役と鑑定解析はある。なら、絶対に出来るはず!
まずは水、精霊魔法で水を作り出す。
コップ一杯がやっとだったあの時とは違う!あっさりと樽一杯の水が生み出される。
続いて、この水を神聖魔法で浄化する。これも以前は出来なかった。
名前:祝福された聖なる水
品質:最高品質
説明:精霊に祝福された神聖な水。HP100回復。MP100回復。
もはやこれだけでも十分かもしれない。だけど、まだ部位欠損はどうしようもない。
次は薬草の処理、まずはこちらも神聖魔法で浄化。しかる後に葉っぱと茎と根っこに分解。
『ポカポカでサラサラの魔法!』
乾燥させて乳鉢で粉末に。
あとはこれを鍋で抽出すれば・・・
-鍋にお水をお玉2杯と葉っぱをスプーンで摺り切り1、茎を1、根っこは3ですの!-
どこからともなく頭に響く声。この薬は何度も作った。
お湯を温めている間に水あめも浄化しておく。
成分がにじみ出てお湯が緑色になってきたところに隠し味の水あめを追加。
ぱぁぁぁぁぁ!!!
よし、黒いけど虹色に光った。これは期待出来そう!
布巾で漉して粗熱を取れば完成!
名前:祝福された聖なる初級ポーション
品質:★★★
説明:HP320回復。MP320回復。状態異常回復。部位欠損回復。甘くてさわやかな味。
リーゼロッテの薬にはならなかったけど、これで十分すぎる!
むしろ下手に蘇生効果や若返りが付かなくてよかったともいえる。
あとはこれを繰り返して大量生産なんだよ!
「こ、この薬はいったい・・・」
余計なことは考えないで、けがや病気の奴隷をどんどん連れてきて!
安心してみんな私が引き取るから!
奴隷商に連れられて『不良品』の奴隷が連れてこられる。
私はその奴隷たちに順番に薬を飲ませる。
薬を飲んだ奴隷は黒い虹色の光に包まれて傷がいえていく。
「こ、これは・・・」
ボロボロになってた身体の傷はあっという間にきれいに治った。
病気っぽかった奴隷も呼吸が落ち着いてきている。
問題は手足の欠損している奴隷。
さすがに飲むだけじゃ治らなかった。
ちょっと痛いけど我慢してね?
お願い、『歓喜の歌』なるべくやさしく・・・
失われた手足の先端を切り落として新しい傷口を作る。
そこに薬を塗り込めば・・・
「ぎゃぁぁぁぁ!!!痛い!痛い!痛い!」
よし、右手が生えてきたんだよ!
「え?」
両手を握ったり開いたりしている。
「私の手が・・・無くなったはずの右手が・・・」
そして、両手で私のことを抱きしめてきた。
「神様だったんですね・・・」
違う。違うけど間違ってないかもしれないけど・・・違う!
「ですけど、私の身体を治してくださいました」
私も抱きしめて頭をなでてあげる。
「ちなみに男の奴隷はいかがいたします?」
それは要らないから、引き取らないわよ?かわいそうだから治療はするけど。
「いいえ、男の奴隷に不良品はいません。そもそも買い取りませんので・・・」
じゃあ、女の子は全員購入ってことで。全部でいくら?
「全部で21人ですが、そのうちの7人が『不良品』なので、こちらはサービスとします」
残り14人分ね。
「ですが、もともと数人をお礼として差し上げる予定でしたし・・・」
そう言えば、そんな話だったわね・・・
「何よりも目の前で奇跡を見せられては・・・」
むしろこの薬のことは他言無用でお願いしたいんだけど?
「この薬があれば色々と貴族に恩が売れそうですが・・・」
そんなのは別にどうでもいいのよ。お貴族様と友達になりたいわけじゃないし。
「貴族とは仲良くなると便利ですがね?」
色々としがらみが増えると面倒なのよ。
そんなことよりも全部でいくら?
「まあ、あなたと私の中ですし、10人分で金貨200枚でいかがですか?」
結構な金額だけど払えない金額ではない。
ここは素直に支払うことにする。
「ただ、言ってはなんですが・・・こんなに購入してどうするのですか?」
一応、野望があるのよ。そのためには人手が必要なの。
「でも宿住まいですよね?全員泊まれる宿を探すのも大変では?」
うっ・・・確かに・・・私を入れて22人。小さな宿なら貸し切り状態だ。
「住居をご用意いたしましょうか?」
ありがたいけど、そこまでのお金はないわよ?
「森の中の掘立小屋ですよ。雨風はしのげます」
で、いくらなのよ?
「金貨10枚でどうでしょう?」
悪くないけど、現物を見てからね。ここから遠いの?
「馬車を使えばそれほど時間はかかりませんよ」
じゃあ、案内お願い。
馬車に揺られることしばし、確かに掘立小屋だ。
ただ、一応全員が暮らすことも可能なくらいの大きさの建物。
そう、『建物』お屋敷とかじゃない。
厨房とトイレはあるけどお風呂はない。
だだっ広い部屋はあるが個室はない。
「何分奴隷を一時的に保管する施設でしたので・・・」
なるほどね。ここで十分よ。自由に手を加えてもいいのかしら?
「もちろんです。こちらが権利書になります」
権利書があるのか・・・無断で作った違法建築かと思ったんだよ・・・
「ではお引渡し致します。鍵束はこちらです」
ちなみに敷地はどの辺まで使っていいの?
「未開拓の森なので開拓さえしてしまえば・・・」
明確な区切りもないの?大丈夫なのかしら・・・
さて、ここから始まるのよ。
元奴隷の勇者パーティーの誕生よ!待ってなさいね魔王!
「ご主人様、まさか私たちが魔王を討伐に?」
そうよ?
私たちが勇者の軍勢になるのよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます