第12話:黒、ランクアップ試験

「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!」


適当に依頼書を見繕って護衛か盗賊の討伐を探す。

その手の依頼がない日は錬金術も試してみた。

鑑定解析があるから、錬金術スキルが無くても作成が可能。

材料も自前で用意は出来る。

素材の品質のせいか、出来はいまいち。


「また盗賊の討伐ですか?」

そうよ。技の訓練に丁度いいのよ。

「パーティーは組まないんですか?」

組みたくないわけじゃないのよ?

「じゃあ、入ってみますか?リーゼちゃんを仲間に入れたいっていうパーティーは多いんですよ?」

でも、パーティーを頻繁に出たり入ったりすると印象がよくないじゃない?

「頻繁に出入りするのは確定なんですか?」

だって、私は連携とか取れないもん。

いつもの盗賊狩りもだけど、基本最初に眠らせてるからね。

仲間もみんな寝ちゃうと思うのよ。

そのあとは荷車に盗賊を縛って乗せるだけだもん、その手伝いは欲しいけど・・・

多分、ほかの人が求めてる冒険者の活躍とは違うんじゃないかな?

「毎回盗賊を生け捕りにしてたのはそういうことだったんですか・・・では、技の訓練というのは?」


たまに、盗賊でも眠りの魔法に耐えるのが居るのよ。

そいつらは強いってことだから訓練相手に丁度いいってこと。

敵の攻撃を避けたり、殺さないように手加減する練習だったり・・・

「ずいぶん変わった特訓ね・・・」

ところで、全然盗賊討伐の依頼が少ないんだけど?

「誰かがほとんど全滅させちゃったのよ・・・鉱山が人であふれてるって噂よ?」

うーん、犯罪奴隷を量産しすぎたかな?


「それなら魔物の討伐をします?」

熊とかならともかく、四つ足の獣は動きが人間とは違いすぎるからね・・・

「じゃあ、ゴブリンとかオークとかはどうです?」

そっちの方がまだましかな?

「この街じゃそれくらいしか依頼が出てませんからね・・・」

そろそろ他の街にでも行ってみようかしら?

ダンジョンとかどっかに無い?

それか、ドラゴンとか居ないかしら?

「ドラゴンとかおとぎ話の世界ですよ?」

もちろん、悪魔なんかも居ないわよね・・・


「なんだ、強い敵を求めてるのか?」

強い敵と言うか仲間候補かしら?

「仲間?ドラゴンや悪魔をテイムするのか?無茶だと思うぞ?」

こぶしで語り合えばどうにかなるんじゃないかしら?

「実際にいくつかの盗賊団を壊滅させてるだけあって説得力があるな・・・」


暇つぶしにランク上げに集中してみようかしら?

「今ランクEですよね?」

そっちの方が把握してるんじゃない?

「盗賊討伐が13回ですもんね。試験を受ければランクDに上がれますよ?」

じゃあ、試験受ける。手続きとかはお願い。


「なんでオレが?」

なんか誰も試験官をやりたがらなかったのよ。

「オレもやりたくないんだが?」

ギルドマスターなんだから仕方ないんじゃないかな?

なんだったら誰かに命令すればいいと思うんだよ。


ところで試験って何をするの?

「高ランク冒険者との模擬戦だ・・・」

ギルドマスターと戦って勝てばOK?

「べ、別に勝たなくても試合内容を検討して合格にはなるぞ?」

じゃあ、本気でやるね!

「いや、やめてくれ。オレが死ぬわ!」


じゃあ、ギルドマスターが好き勝手に攻撃して?

私はそれを全部避けるか防ぐんだよ!

「それならオレは死なずに済むか・・・」

開始の合図は?

「じゃあ、これが合図の代わりだ!」

そう言ってギルドマスターが突っ込んできたんだよ・・・大人げないなぁ・・・


ギルドマスターが持ってる武器は槍。

剣で近づくのが怖かったのかな?遠めの間合いから突きや薙ぎ払いで攻撃してくる。

でも、そんなのは私には当たらないんだよ!


-すげえ、ギルドマスターの攻撃を全部避けてる-

-偶然ってわけじゃなさそうだよね?-

-この時点で合格でいいんじゃないか?-


「くそう、乱れ突きやスパイラルチャージが1発も当たらん・・・」

そろそろネタ切れ?


-でもだんだんギルドマスターの攻撃が当たりそうになってきてないか?-

-違う、だんだん紙一重でかわすようになってきてるんだよ!-


もういいかな?

じゃあ、最後にちょっとだけ見せてあげる。

当たらないように頑張るけど、失敗したらごめんね?

「攻撃はしないんじゃなかったのかよ!?」


フル・アシスト、トレース・モーション:ギルドマスター!


自分の身体が自動的に動き出す。

先ほどのギルドマスターの攻撃をそのままなぞるように動く。


-おい、あれって・・・-

-ああ、さっきのギルドマスターの動きの再現だ!-


そう、再現。私の意思で動いてるんじゃなくて、あくまでもギルドマスターの動きの再現。

「自分の普段の動きだからどうにかさばけるが・・・」


ブースト・スピード:200%!


「きゅ、急に動きが速くなりやがった!」

どう?倍速再生よ?

「む、無理だこんなの・・・わかった、オレの負けだ!降参だ!」

じゃあ、合格ってことね?


「はい、ギルドカードの更新が終わりました。これでランクDです!」

おお!シルバーカード!

ランクDだとシルバーなんだよね。

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