第9話:白、初めての錬金術

「それにしても、薬草が全く違うなんて・・・」

この調子だと、初級ポーションのレシピも違うと思うんだよ!

錬金術ギルドに行ってレシピを手に入れないとね。


道行く人に尋ねながら錬金術ギルドに到着。

建物自体の作りはどこのギルでもそれほど変わらない。

正面がカウンターで、右側が依頼書の掲示板、左側が売店。

ここで、まっすぐに売店に行ってはダメ。

錬金術のレシピは錬金術ギルドに登録してない人は購入出来ないんだよ。

だから、最初に向かうのは正面のカウンター。


「ギルドの登録ですか?」

冒険者ギルドのカードを受け付けのお姉さんに渡す。

「申し訳ありませんが、登録は出来ません」

え?

なんでなんだよ!?

「だって、錬金術スキルが無いじゃないですか」

なるほど。

でも、ユニークスキルの『神魔創薬』があるんだよ?

「これは錬金術関連のスキル何ですか?」

そう言われると自信がないけど、『創薬』って書いてあるからお薬が作れるんじゃないかな?

「少々お待ちください・・・」


小部屋に呼ばれてギルドマスターとお話の流れかな?

「では、こちらの部屋でお待ちください」

何度も経験した流れなんだよ。


「何か特殊なスキル持ちなんですって?」

おや?おっちゃんじゃないんだね。お姉さんだったんだよ・・・

「とりあえずギルドカードを確認させてね」

お姉さんにギルドカードを渡す。


「この『神魔創薬』ってスキル?ユニークスキルなのね・・・道理で聞いたこともないスキルなわけだわ・・・」

私自身もどんなことが出来るスキルかよくわかってないんだよ。

でも、『創薬』って名前に入ってるってことはお薬が作れるようになるスキルなんじゃないかな?

「なるほど。それで錬金術のギルドにやってきたと・・・」

ユニークスキルって世界に私一人だけのスキルってことでしょ?

だったら自分で色々と試行錯誤するしかないと思うんだよ・・・

「確かに、名前だけ見ると薬の作成に関係しそうね・・・」

そんなわけで、初級ポーションを作ってみようと思ったんだよ。

「作ってみればいいんじゃない?」

そのために初級ポーションのレシピを買いに来たんだよ。

で、レシピを買うためには錬金術ギルドの登録が必要だよね?

「レシピを買うことが出来るのはギルドのメンバーってのは間違いじゃないけど、初級ポーションのレシピは売ってないわよ?」

どういうこと!?

「だって、錬金術師になるための試験だもん、錬金術を目指した時点で誰にでも公開してるってことよ」

確かに。それもそうなんだよ。


「はい、これがレシピ。それと材料と機材も使っていいわ」

錬金術ギルドのマスターが何もかもを手配してくれた。

「私も興味が出てきたのよ、あなたのスキルに・・・」


これがレシピ。

材料は薬草ときれいな水。これは変わらないみたい。

作り方も、薬草をすりつぶしてきれいな水で煮出して濾せば完成。

私が知ってる『普通』の初級ポーションとまったく同じだ。


まずはここにある機材で普通に初級ポーションを作ってみる。

鑑定スキルも錬金術スキルもないけど、数えきれないほど作ったものだから・・・

多分これで初級ポーションの完成なんだよ!

「見せてみて?」


名前:初級ポーション

品質:最高品質

説明:HPが20回復。


一応、初級ポーションになったね。一安心なんだよ・・・

「一応どころじゃないわよ!?最高品質じゃない!」

まあ、ここまでは想定の範囲内なんだよ。問題はこの先かな?

「最高品質の先なんてないわよ?」

あるんだよ?

伝説級とか、神話級とか・・・

でもね、初級ポーションはそうじゃないんだよ。


「でも、リーゼちゃんは精霊使役のスキルがありませんよ?」

そうなんだよね。精霊さんの手助けが無いわけなんだよ・・・

そうすると乾燥させるのはどうすればいいかな?

ポカポカでサラサラの魔法が使えないと不便なんだよ・・・

「私も魔法よりの構成じゃないですからね・・・」

私は魔法は色々使えるんだよ?

でも、今の私が魔法を使うと乾燥じゃなくて黒焦げになるんじゃないかな?

「多分黒焦げですねこの街全体が・・・」

元々都市殲滅級の魔法なんだっけ?


「物騒な話をしてるみたいだけど、薬草を乾燥させればいいの?」

まあ、どうにかなると思うんだよ。


『多重展開、耐熱障壁、ファイアストーム、ミニマムエフェクト!』


どんな感じかな?

うん、いい感じに乾いてるね。

本当はこのまま何もかも魔法で行きたいところだけど、さすがに精霊さんの支援が無いと厳しいね。

ここからは手動で薬草を部位ごとに分解して粉末に。

お鍋を用意してもらってきれいな水をお玉で3杯。

火にかけて、少し水が温まってきたところに薬草の粉末をスプーンで葉っぱ1、茎1、根っこ3杯入れてかき混ぜる。

最後にこれも手配してもらった水あめをスプーン1杯入れて完全に混ざるまでかき混ぜる。

火を止めて、粗熱を取ってから布巾で漉して完成。


これを鑑定してみて欲しいんだよ。

「なんかまるで手順が違ったけど、初級ポーションの材料ではあったわよね・・・」

まあね、隠し味は追加したけど。


名前:リーゼロッテの薬

品質:☆☆☆☆☆

説明:HPが320回復。MPが160回復。状態異常回復。部位欠損回復。蘇生効果(死後60分以内)。若返り1歳。甘い香り。ほんのり甘くてすっきり爽やか、まろやかな味わい。


よし、これなんだよ!

『神薬調合』じゃなくて『神魔創薬』だったからちょっと心配だったけど、この程度のお薬が作れれば十分なんだよ!


「これって、エリクサー?」

ただの初級ポーションなんだよ?

作るところ見てたでしょ?

「見てたからこそ、信じられないのよ・・・」

まあ、深く気にしたらダメなんだよ。

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