第12話 正月の予定
騒がしいクリスマスも終わり年末に入る。
安達家では年末の大掃除も終わり正月になるまで特に何も無い日が続くことになる。
「直人正月に予定はあるのか」
重低音のよく通る声で直人にそう質問をしたのは直人の父の和人である。
「父さんの仕事の関係で挨拶回りに行くことになっている。お前に将来にとっても大事なことだ直人も来なさい。先約が入っているとなれば別だが」
直人の正月の予定は埋まっている。
クリスマスの日、3人と別れる際に正月の予定についても立ててしまっていた。
神社に初詣に行ったあと陽の家で遊ぶことが決まっている。いつものように直人の家では無いのは和人がいるからである。
一応こういうことになることを危惧して約束通りにならないかもしれないことを伝えておいたが、直人は約束を破るつもりは無い。
「ごめん父さん。その日は友達と初詣に行く予定があって」
友達と言う単語に和人の眉がピクっと上がる。
帰りが遅くあまり家に帰ってこない和人は直人が友達を家にあげ、一緒に遊んでいる姿を見たことは無い。だから直人に友達がいるなど思っていなかったのだろう。
ましてや直人に友達が必要だとすら思っていない。自分と同じ道を歩ませる操り人形でしかないのだ。
「それは当日じゃないと駄目なのか?」
先約があるならと言っていたくせにこう言うあたり、断られないとでも思っていたようだ。
「先約があるならいいんじゃなかったの?」
「お前の将来に関わることだぞ。どちらがお前にとってのメリットになるかなどお前の頭ならわかるはずだ。そんなこともわからないように育てた覚えは無い」
息子に反論されたことに自分のプライドが気づ付いたのか語気を強めて威圧する。
和人が直人を自分の思い通りに動かすための手段の一つだ。
こういう時に仲裁に入ってくるはずの母は買い物に出かけていて居ない。おそらくそれも和人の計算のうちだろう。
「友達との約束なんだ。いくら父さんの頼みでも友達に迷惑はかけられない」
「いつからそんな遊びにうつつを抜かすような男になったんだ。お前の最優先事項は勉強だろう。·····はぁ·····転校も視野に入れるしかないな·····」
その言葉を聞き何も反論出来なくなる。それほどに今の直人にとって友達という存在が大きいのかわかる。
「わかった·····父さんについて行くよ」
「わかってくれたならいい。それと息抜きをするのは構わん。だかお前の最優先は勉強だ。いいな」
「·····はい」
自分の部屋に逃げ込むように向かう。
陽たちには直接言えそうもないためメッセジーで「父さんの仕事の都合で行けなくなった」とだけ伝えた。夏希と千智からはあとから言われそうだが父の都合と言っておけば陽は理解してくれるだろう。
直人が小、中学生の時ならここまで考えることななかっただろう。
千智な夏希から連絡何件も来るであろうことを予測してスマホの電源を落としておいた。
連絡ももう来ていないだろう頃にスマホの電源を入れる。
メッセージのアプリを開けばあらゆる通知が一気になだれ込んでくる。
千智と夏希のメッセージを避け陽のメッセージにだけ目を通す。2人のメッセージに既読を付けることを恐れたためだ。
陽からは初詣の日程をずらすということと2人は何とかしておくから安心しろということだった。
自分を理解し頼りになる友がいることにありがたさを感じる。
友が心配してくれることが暖かいものだと感じる。
予定だけ陽と確認を取っておき再びスマホの電源を落とした。
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