第4話 恋人のフリ2

 会議はそう長いことしなかったため時間ができ2人で対戦ゲームを始める。ゲームは直人が勝ち続け一息つこうとしても勝つまでと千智が離さない。しかし何度やっても直人が勝つため千智も諦めついてやっとのことで休憩が取れる。


「てか安達さー、なんでそんな髪長いの?切れば?」


 スマホ片手に千智に髪について聞かれる。直人はあまり外に行くことが好きではなく、外に出る機会は学校と買い物だけでいいと考えている。そのため美容院に行くのは極力最小限に抑えたい。


「めんどくさいっていうか」

「いやいや、そんな長い方がめんどいでしょ。長すぎて鬱陶しい。」

「俺の自由だろ別に」

「恋人のフリするっていうのに彼氏がこれじゃなー。もっとこう前髪上げてみるとか?」

「おい、ちょっ!」


 千智が直人の方に近づき直人の長い前髪をかきあげる。直人は急接近した千智の顔に驚いて声を上げてびっくりする。


「意外と髪質いいな。なるほどなるほど。ふーん」


 千智が空いた方の手を顎に当ててなにかに納得する。かと思ったら今度はスマホを持ちこちらに向けシャッターを切る。

 千智が直人の前髪をかきあげたままスマホを操作した後こちらをじっと見る。


「なに顔赤くしてんの?」

「っえ?いや、してない」


 千智の顔が近づいたどこら辺からだろうか、いつの間にか顔が紅潮していたようで必死に誤魔化す。


「無理あるって」

「うるさい。ちょっとトイレ」


 ソファーから立ち上がりこの場から逃げ出す。


「えー待ってよー。あ、もしかして私の事好きになっちゃった?」

「なわけないだろ」


 ちょうど千智の後ろに回り込んでいたので軽くチョップを喰らわしてトイレに向かう。


 直人が否定したのは本心からであり虚言ではない。千智がたまにしてくるスキンシップに直人もドキッとすることはあるがそれが恋の範疇かと言われればそうではない。

 半年ほど付き合ってきたがその間に恋心が芽生えることはなかったため、これからも芽生えることはないと考えている。だからこそ恋人のフリという役目に不安を覚えているのは確かだ。


 トイレから帰ってくると千智が直人を見るなり不敵な笑みを浮かべている。


「来週のどっか夏希と陽連れてここ集合ね」


 またろくでもないことを思いついたのだろうと不安を持ちつつ、陽と夏希がいるならストッパーになるだろうと渋々承諾した。

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