第3話 恋人のフリ1
例の事件の次の日。事件の日が金曜だったこともあり今日は事件の深堀をする会議をすることになった。
その日のうちに話し合い出来なかったのはお互いどうしたらいいかわからず気まづくなってしまい、千智が足早に帰ってしまったからである。
インターホンが鳴ったので玄関に向かってドアを開けると私服姿の千智。
「や、やっほー!」
千智は手をヒラヒラさせて元気に挨拶するがいつもの覇気がない。顔が少し赤みがかっているように見えなくもない。
早く入るように促すがいつものようにズカズカ入ろうとはしない。平静を装っているが実際恥ずかしさで死にそうなのだろう。
ソファーに座らせ頼まれた飲み物を準備する。今回は麦茶でいいらしい。
リビングに戻ってみると千智は昨日のようにテレビゲームをつけようとはせずソファーに座っている。会議という名目のため少しは自粛しているようだ。
少し離れて直人もソファーに座る。お互い飲み物を一口飲んで一息つく。
「んで、昨日の話なんだけど·····ごめん途中で帰っちゃって」
「いいよそれなら。あのまま話してもお互い会話にならなそうだったろうし」
「それもそうだね。てか、ほんとに⋯いいの?」
直人は少しドキリとしたがあくまで平静を装う。
「ああ、フリをするんだろ?彼女の」
「そう!フリよフリ!」
千智の声のボリュームがいきなり大きくなる。いや、いつものボリュームに戻ったという方が正しい。傲慢な態度で腕を組んでこちらを見てくる。
「なんでちょっと威圧的なんだ」
少し気まずかった空気が和む。これなら安心して話を切り出せそうだ。
「んで、俺は何をすれば?」
「んー、考えたんだけどお試しというか練習期間が必要かなって。いきなり私たち付き合っちゃいましたーって言っても無理あるじゃない?」
「なるほどな。中村にしてはよく考えてるな」
「そりゃあの2人の将来がかかってるわけで。てか足立私に厳しくない?夏希にはやさしいのに」
「目には目を歯には歯をってこと」
「はー?」
直人は人によって言葉を使い分ける。本音と建前、表と裏という訳では無いが、直人に対する態度にはそれ相応の態度で接することにしている。なので陽や千智には雑に、夏希には丁寧な対応をとる。どちらも直人であり猫を被っている訳では無い。
「んで話戻すけど、その練習期間の間で俺らの形なりそういう基盤を作っておこうってことだな?」
「んまそんな感じ。とりあえず学年上がる時くらいに発表くらいかな。だからあと3ヶ月くらい?」
「了解。でも俺彼女いた事ないからなんもわかんないぞ」
「そこは任せんしゃい。この恋愛マスターに!」
「中村おまえ瀬良さんに彼氏いたことないって聞いたことあるぞ」
「うるさい黙れ」
ソファーのクッションをものすごい勢いで顔面に投げつけられる。千智が鬼の形相をしていたため一旦平謝りしてこれ以上は何も言わないでおいた。
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