電車の中の出来事

長島芳明

電車の中の出来事

 がら空きの電車の席に座ったら、目の前に同じ塾に通う女がいた。スマホ操作に夢中でこっちに気づいていない。



 他県の女で、私服姿を初めて見た。しかし話しかける気がない。たがが塾なのに、学級委員長のように傲慢に仕切る。積極的に塾の先生に議論をふっかける。塾なんて勉強できればそれでいい。ディスカッションの授業じゃないのに。



 俺が嫌っている女だ。


 だがしかし、靴下とスカートの間から見える生肌に目が行ってしまう。なんでミニスカートを履いているんだよ。足を組み直すんじゃない! 黄金の三角地帯に眼力のようなものを向けてしまうではないが。



 ああ。悲しき十代の少年よ。中学の時は念力でブラのフォックを外す能力を欲していたが……。



 彼女に気づかないふりをし、スマホでピクシブでちょいエロ画像を見ていた。



 やっぱり文句を言わない二次元が最高だ。



 おお、フォローしている神絵師様が新作画像をアップしたばかりではないか。



 うーん。エロい。特にパンツのシワの描写がいい。レースの描写も丁寧で、体温が伝わってくる。恋人ができたらこんな下着をつけてもらいたい。そんな妄想をしながらお気に入りマークを付けた。



「ねえ、あんた。私のパンツ見たでしょ」



 傲慢な女が眼の前に立っていた。神絵に夢中で気づかなかった。



「見てねーよ」

「スマホで隠し撮りしたでしょ」



 そう言って俺のスマホを奪って画面を見た。



「ちょまって、ふざけんなよ」

「こっちのセリフよ!」



 クソ恥ずかしーじゃねーか。神絵(エロイラストだけど)を見ていたのがバレてしまった。人生終わりだ。




 親に言って塾を変えてもらえばいいか。



「隠し撮りしてねーだろ。返せよ」



 すると、女は下を向いてぼそっと口を開いた。



「これ、私が上げたイラストなんだけど」

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電車の中の出来事 長島芳明 @gunmaNovelist

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