第41話 ベロチュー

 ヤンキー3人組を殺して手に入れた黄色い2つのキャップ。

 そこに書かれている文字を見る時、カードを開封するような何とも言えないワクワクした気持ちになる。

 何が出るかな、何が出るかな、タラリンタラリンタラタラ。

 1つ目は【サイレント】。

 なるほど。たぶんゴミである。

 俺だってゲームはする。

 黙らして呪文の詠唱を出来なくさせる効果を持っているのだろう。

 詠唱なんてしなくてもスキルは出る。

 たぶんゴミだ。

 いやいや、そんなゴミスキルが世の中にある訳ねぇーよ。


 帽子を被れば使用方法はわかる。

 俺は帽子を被ってみた。

 ゴミでした。

 唇に触れて「黙れ」というのが発動条件。

 そしてスキルが発動したら30分は黙ってしまう。

 いつ使うねん。


 それじゃあ、もう一つの方を開封してみよう。開封とか言っちゃってる。

 もう一つのキャップの文字を見てみよう。

 なにがでるかな……タラリンタラリンタラタラ。


【命令】。


 レアスキルっぽい。

 あの金髪デブのスキルやな、と俺は思った。

 命令する、とよく言ってたもんな。

 それじゃあ、これ、まさか、エッチな目的で使えるスキルなんじゃないか?

 やべぇー、とんでもスキルきたやん。

 いや、エッチなことで使うとか、そいう訳じゃないけど、命令して相手にナニカをさせる。最高やん。


 それじゃあ、いただきます。

 帽子を被った。

 発動条件は自分より弱い相手を倒すこと。命令する時は命令すると宣言すること。相手の怯え度によって命令できる度合いが変わってくる。


 ゴミやん。


 それって、そのスキルを持っていなくても使えるやん。

 これを女の子に使った場合、発動条件を満たした瞬間から最低なゲス野郎やん。


 ゴミ2つが手に入った。


 訓練でも使えん。

 そして俺はお姉ちゃんとの訓練で扉ガードを覚えた。

 扉ガードというのは、ただただ攻撃されそうになったら扉でガードすることである。

 お姉ちゃんが本気で殴っても扉は壊れなかった。


 あの日以来、お姉ちゃんは俺を殺さなかった。白石さんも混じって、スキルの活用方法をお姉ちゃんと模索した。

 俺を殺したのはプロモーションだったらしい。

 あの動画は何十万も再生された。

 動画の概要欄には父親のメールアドレスを添付していたらしく、訓練所を貸してほしいと冒険者から100件近くのメールが届いて父親は大慌てである。


 日中のクソダンジョンは訓練所として大盛況だった。


 冒険者は訓練する場所を欲していた。だけど家で訓練することはできない。そんなことしたら家が壊れてしまう。公共の場所で訓練したら一般人に被害が出てしまう。だから本番で強くなるしかなかった。

 でも訓練所があれば自分のスキルの使用方法を色々と試せる。

 事故で死ねば父親に寿命が入る。

 良いところ尽くしである。


 俺の目覚めがいい。

 わざわざ父親は死ななくて良くなった。

 お父さんは自分ができることを仕事にできた。

 あのクソダンジョンが、家族を傷つけないように運営されていた。

 お姉ちゃん様様である。

 目覚めだってよくなる。


 夜。

 俺はあることに思い至った。

 白石さんと俺は一緒のベッドに入っていた。

 彼女が隣にいるからベッドの中は暖かくて、甘い匂いがした。

 外から漏れる街灯の光で彼女が起きていることがわかった。


「白石さん」と俺は言った。


「なに?」

 と彼女が尋ねた。


「お姉ちゃんに手伝って貰ったら簡単に両親の仇のダンジョンを攻略できるよ」


「……だね」


「フシギダネですか?」


「ダネダネ」

 と白石さん。


 フシギダネってそんな鳴き方だっけ?


 クスクスと俺達は笑った。


「ダーリンと一緒に攻略したい」

 と彼女が言った。


「なんで?」


「一緒に攻略してお尻を舐めてもらうねん」

 と白石さんが言った。


「なんなんそれ?」


「ダーリンが、そんなこと言ってたやん」


「高圧洗浄機で穴の奥まで洗ってな」

 と俺が言う。


「だから、そんなんしたら死ぬわ」

 と白石さんが言って、クスクスと笑った。


「ダーリン、何で私とエッチせいへんの?」


 俺は白石さんを見つめた。


「したいけど……」


「まだ私がダーリンのことを本気で好きじゃないって思ってるの?」


「……ちょっとだけ」

 と俺が言う。


 ちょっとだけ思っている。

 それ以上にエッチしないのには理由があった。

 俺は意外と頑固者なのだ。

 Bランクダンジョンを攻略するまでは彼女とエッチしない、と決めていた。

 彼女の目的を達成した時に告白して付き合ってエッチがしたい、と思っている。


 隣に可愛い女の子が眠っているので、もちろん毎晩ギンギンである。

 だから白石さんが寝た後に、彼女の隣でアレをすることも、たまにはある。

 たまにじゃない。1日1回はしている。たまに2回目に突入することもあった。


「ダーリン、大好き」


「俺も大好き。……好きやから白石さんを大切にしたい」

 と俺は言った。


 俺を利用しようとするのは結構結構コケコッコー。しょーもないギャグすみま千円。

 コロコロコミックみたいなギャグを入れてしまった。


 白石さんが目的が達成したら去ってくれても俺はかまわないと思っている。本当は嫌。めちゃくちゃ嫌。だけど仕方ないやん。


「もし白石さんか親の仇のダンジョンを攻略して、俺が用済みになって、白石さんが去った時に俺は白石さんを傷つけないようにしたい」


「私、めっちゃダーリンの唾液飲んでるねんで。もう傷つくもクソもないわ」


「わかった。その分、俺に唾液飲ましてくれたらええやん」

 と俺は言って、口を開けた。


「口開けて待たんといて。嫌や」


「白石さんの唾液がほしい」


「嫌や。キモいって」

 と彼女が言いながら、起き上がった。


 そして俺の大きく開けた口の中に、舌を入れてきた。

 たっぷりと唾液が含まれた舌が、俺の舌と絡み合う。


「知ってるねんで。私の隣で毎晩のようにオナってるのん」と彼女が言った。


「コレもおかずにさせていただきます」

 と俺が言う。


「キモいって」と白石さんが言って、クスクスと笑った。


 そして、またベロチューをした。

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