第12話 女性と共闘
白石さんと共闘してダンジョンから出ることになった。
彼女の能力はサンダーである。電気ビリビリ10万ボルトだった。立花や岡崎と同様に武器にも電気を付与することは可能だけど威力が下がるらしい。
「強い武器がドロップしたら使ってもええけどな」と彼女が言う。「今のところは放出するのが一番強い」
「範囲はどれぐらいっすか?」
と俺は質問した。
ダンジョンで死なないように彼女の能力を知っておきたかった。
「あれ? 自分のスキルは教えへんくせに、私のスキルは知りたいん?」
と彼女が茶化す。
「もう俺のスキルは知ってるじゃないですか? ココからは2人です。死なずにダンジョンから出るために必要な情報をください」
「範囲は10メートルぐらい」と彼女は言った。
「ちなみに私は3人の中で一番弱い」
「十分強いっすよ」と俺は言った。「単独で魔物を倒してたじゃないですか?」
「すぐに魔力切れになってサンダーが出いへんようになる」
と白石さんが言う。
俺も魔力切れになったことは何度もある。魔力が切れたらスキルは使えないし、気分が悪くなるのだ。
「魔力切れになったら俺の部屋で休めばいい」と俺は言った。
「そうやな。ありがとう」と彼女は微笑んだ。
その声は数時間前に死ぬほど気まずくなった者が発するような声じゃなかった。
これが年上の女性のコミニケーション能力なのか? それとも数時間前の会話は忘れたのか?
「必ず扉の前で攻撃してください。そして倒せない魔物がいたら俺の部屋で待機しましょう」と俺が提案する。
「オーケー」と彼女が言った。
もしかして、さっきの気まずさを払拭するために、勤めて明るく接してくれているのだろうか?
「さっきはキツイこと言ってごめんなさい」
と俺は謝った。
「なにが?」
と白石さんが言う。
「仲間じゃないとかエトセトラ、キツイこと言って」
と俺が言う。
「ええよ。ホンマのことやもん」と白石さんが言った。
「これから山田君の仲間になれるように頑張るわ」
仲間になれるように頑張る?
「あっす」と俺は、ありがとうございますを濁しまくって言葉を発する。
「それとエトセトラって何?」
と白石さんが尋ねた。
もしかしてこの人ってアホなのかな?
「エトセトラって、その他色々ってことっす」
「勉強になった」と彼女が言う。
それと彼女には部屋から出る前に質問をしなくてはいけなかった。
「ココからは2人になりますけど、ドロップしたアイテムはどうしますか?」
と俺は尋ねた。
この返答次第で歩み寄りが違う。
「もちろんココからは2人で分け分けにしよう」と彼女が言う。
「ダンジョンで死んだ奴等に報酬を渡す気なんてないし」
「了解です」と俺は言った。
まだ歩み寄ってもいけそうやな、と俺は思った。
作戦通りに俺達は魔物を倒して行く。強い魔物がいたら俺の部屋で待機。白石さんの魔力が切れそうになったら俺の部屋で待機。
待機ばかりで進みは悪いけど寿命が縮むよりマシだった。
そして1日で3つのポーションを手に入れた。
完全に白石さんの魔力が尽きたから今日はココまでにしよう、ということになって俺の部屋に戻った。
「分け分け」
と白石さんが言って、俺に1つのポーションを渡す。
「そしてこれは、今回の報酬の分」
と彼女は言って、さらに俺にポーションを差し出した。
当然の権利だと思う。
だけど、ちゃんと折半してくれて報酬まで貰えるなんて、ちょっと感動である。
「あっーす」と俺は頭を下げた。
「もう敬語はいらんよ」
と彼女が言った。
「わかりました」
と俺は敬語で答える。
「敬語使ってるやん」
と彼女が言う。
「急に敬語を使うなって言われても、ムズいっすよ」と俺が言う。
本当はフランクに喋るほど彼女に気を許してはいけないと思った。
「そう。私に気い使わんでええで」
と彼女が言う。
そして白石さんはベッドを見た。
「あれ? 山田君。ベッドに布団なんてあったっけ?」
と白石さんが言った。
ベッドを見る。
掛け布団が敷かれていた。
俺の部屋には掛け布団なんて無かった。
俺は円卓に置かれたノートを開く。
『経験値を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『経験値を獲得しました』
『レベル10に上がりました』
『掛け布団が使えるようになりました』
『経験値を獲得しました』
etc。
「掛け布団が使えるようになってる」
と俺は呟いた。
でも掛け布団にはどんなスキルがあるんだろうか?
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