第10話 俺だけレベルアップ
目を覚ます。
自分の体に違和感を覚えた。
別の人の体を借りているみたいな違和感だった。
寝ぼけた視界に自分の腕が見えた。
俺の腕ってこんなに筋肉質だっけ?
俺の体に大きな異変が起きているように感じた。
何が起きているのかはわからん。
起き上がり、服を脱いだ。
スポーツなんてした事がない俺の体は細いだけで筋肉質ではない。
だけど俺の視界に見える体は鍛え上げられたアスリートのような筋肉をしていた。
俺に何かが起こっている。
そして寝る前に見たノートのことを思い出す。
俺は円卓の上に置いていたノートに手を伸ばした。
経験値を獲得しました、と文言が書かれていた。同じような文言の合間に、レベル〇〇に上がりました、と書かれている。
最終的なレベルは9になっている。
現実の世界ではレベルアップという概念は存在しない。
もちろん鍛錬して強くなったり、経験を重ねて強くなったりすることはある。
ただそれだけである。
でもノートに書かれているのは俺がレベルアップしているということだった。
もしかして俺だけレベルアップ?
でも魔物を俺は倒していない。
もしかしてゲームのように同パーティーが近くで敵を倒したから、おこぼれ経験値をもらえたりするんだろうか。
とりあえず考えの途中だけどマッスルポーズをしてみる。
マッチョになったら誰でもやりたいことである。自分の筋肉を誇示したい。ココに鏡があったら自分の体を舐め回すように見るのに。
色んな部位に力を入れてマッスルポーズ。
レベルが上がってノートが使用できるようになった、とノートには書かれている。
もしかしたら一定レベルになれば他の道具も出現するのではないだろうか?
ベッドの上で飛び跳ねた。
「俺チートやんけ」
めちゃくちゃ大声で叫んだ。
「よっしゃーーー。俺、チートや。俺チートや。俺チーママや。早よママになりたいわ。えっ、私のために出資してくれはるの? 私の店を持たせてくれはるの? 嬉しいわ」
と訳のわからんことを叫ぶ。
自分でも理解していないので、他の人に聞かれたら頭のおかしい奴と思われるかもしれない。
「俺のターンが来たわけや」
と俺は呟いた。
「これでアイツにもアイツにもアイツにも仕返しができる」
イジメっ子ヤンキーをボコボコにすることを想像してみた。
っで? 俺は何で攻撃するの?
「俺のターン終了」
と俺は呟いた。
「攻撃する方法がないやんけ」
今のところ攻撃方法はパンチとキックのみ。
そして部屋の外にいるズッコケ3人組のことを思い出す。ただただ3人だからズッコケ3人組とテンポがいいので思っただけである。彼等にズッコケ要素はない。
置いてきぼりにされたら俺には攻撃の手段がないので、死ぬしかない。
今まではイヤイヤダンジョンに付いて行くだけだったけど、経験値が貰えてレベルが上がるなら喜んで付いて行こう。
俺に攻撃手段がないから、ズッコケ3人組には魔物を倒して貰わなくちゃいけなかった。
扉を少し開けて、外を見た。
甲冑を着た男? 顔がわからないから女かもしれん。大剣を持った強そうな甲冑が3人を襲っていた。
金髪の立花は血まみれで倒れていた。内臓がデロリンと出ている。
それでも生きているらしく、立花はポーションを抉れた臓器にかけようとした。
だけど甲冑にバレて首を
そして残された体も、飛んで行った頭も消えた。
ダンジョンで死ぬと入り口で蘇る。だから死体は消えてしまうのだろう。
ピアスヤンキーの岡崎も甲冑の一撃で倒れた。
フルヘイスヘルメットまで被った白石花がサンダーを放出しながら後ろに下がって来た。
甲冑にはサンダーは効かないらしく、ビクともしなかった。
後づさっている白石さんが、たまたま俺のところに近づいて来る。
岡崎の首も刎ねられて、消えた。
甲冑が大剣を握りしめて、白石さんに向かって走って来た。すごいスピード。
俺は咄嗟に白石さんの腕を取り、1人部屋に彼女を入れて扉を閉めた。
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