第54話 交戦-2
騎士団の面々が村の外に野営を張る中、神子たちを外には置けないと、リテラートたちは空き家となっていた建物を借りる事になった。空き家となってからも他の村人たちが手入れしているのか、食堂には大きなテーブルも置かれ何も不便のない場所に有難さを感じる。
食事を終えた後、久しぶりの対面に何処か照れくささを感じる中、明日に控えた進行に離れていた間の互いの情報を共有する事になった。アカデミーに残ったティエラには、簡易の通信用玉が持たされていて、姿は見えないがその場には立ち会っている。アカデミーの研究所で作られたそれは、シルファが中心となり、カーティオも意見をだしていた。
「それ、まだ実験段階だから、良く聞こえないとかあったら言って。研究所に意見としてあげるから」
カーティオの言葉に分かったと玉の向こうで答えたティエラの声は、傍に居る時と遜色なく聞こえる。他の面々もそれに感心しつつ、少しだけ、ティエラが居ない事を残念に思った。
「では、明日の進行の前に情報の共有をしよう。大方、出発前の話し合いで出来ていると思うが、その後、今日までで皆に伝えておく事はあるだろうか」
言いながらリテラートは同じテーブルに着く仲間たちを順に見ていく。場所は変わっても、何時もと座る位置は一緒な事に、不思議と安心感を抱く。
「じゃぁ、俺からいいかな」
テーブルの上に魔力を纏った矢を出したリデルは、少し身を乗り出し、そして隣に座るウェルスを見た。
「これは、俺が女神ミルから使命と共に授かった矢だ。ティアナを時の狭間から解き放ち、彼女が選んだ者を後継とする為に使えと、言われた」
それからリデルは、ソリオと共に体験した森での出来事を話した。話を終えた時、ウェルスが動揺していないかと心配だったが、彼はとても落ち着いていた。まるで彼は自分がそうなのだと知っているかのようだった。
「じゃぁ、次は僕。僕が見た記憶は、クラヴィスが持っていた封印石に関わる事だ」
フォルテがリリーから得た記憶を話し出すと、リテラートをはじめ、アカデミーにいた面々が驚きの表情を浮かべてクラヴィスを見つめた。しかし、フォルテの話が終わっても、それだけでは、クラヴィスが一体どういった存在なのかは分からない。
「クラヴィス、君は一体……」
窺うような声音と共に、何処か確信めいたものを持っているカーティオの視線をクラヴィスは真っ直ぐに受け止めた。
「じゃぁ、少し昔話をしようか。ルーメンに伝わる神話の真実を」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます