13日目①
今日は土曜日だから学校が休み。でも、うずうずしてじっとしていられない。
だって華楓ちゃん無事かわかんないんだもん!病院行ったのに追い返されちゃって。どうしたらいいの~!?
そう思っているとスマホが鳴る。
誰かから電話だ。
「もしもし?」
「もしもしフジコー?電話かけてくれてホントありがとー!」
「もしもし。ううん。こちらこそ。電話出てくれてよかった。」
フジコまじで好き。本当にありがたい。
「昨日も電話してたけどさ。やっぱりそわそわしちゃって。」
「やっぱりそうだよね~。ね、一旦合わない?」
「あ、そうだね。ノワも誘ってどっかいこっか。ファミレスでいいかな。」
「うん!じゃあ後でまた連絡するね!」
「はーい。じゃあまた後で。」
そわそわしてるのは私だけじゃなかった。やっぱりどうしても心配になっちゃうよね。あ、ノワにも連絡しなきゃ。
『今日ファミレス行かない?
学校の近くのいつものとこ』
『激アツ
何時?』
「11時くらいかな。」
「おけ!」
ノワとも会う約束を取り付けたので、家を出る準備を始めた。
何か手を動かしてみる。やることがなくなると、急に華楓ちゃんの顔が頭に浮かぶ。
嫌な想像をしてしまい、またやることを探して手を動かす。
そわそわしてしまい、予定よりだいぶ早く家を出た。
学校の近くにあるファミレスは、平日に行くと同じ制服を着た人がたくさんいる。今日みたいな休日に来れば、学生だけでなく家族連れなども多くおり、大変にぎわっている。
「やほ〜!」
「あ、アヤチおはよう。」
「おはよー!」
この2人といると日常が戻ってくる感じがするから好きだ。ファミレスの中に入り、メニュー表を眺める。
うーん。パスタもいいけどハンバーグもいいな。ドリアも捨てがたい……。
「ウチはハンバーグ!ドリンクバーみんな飲むっしょ?」
ノワは早々に食べるものを決めてオーダー表を描き始めている。フジコはここにくるといつもパスタを食べるから、多分今日もパスタだ。私だけ頼むのを決めるのが遅い。2人とも何も言わずに待ってくれるけどね。
「アヤチ今日は何にすんの?」
「うーん。ドリアかなぁ。みんなでピザも食べない?」
「いいね。そうしよう。」
今日はたくさん食べるって決めてきたからいいんだ!後でデザートも頼んじゃおう。
「ノワ明日バイトあるの?」
フジコが口を開く。
「ない!サイコー!」
「じゃあ明日もみんなでどっか行かない?」
「それいい……!金欠だからあんま遠出とかはできないけど……!」
「ま、またここでもいいっしょ。アヤチんちも言えば空けてくれそうだしな。」
「まあね〜!じゃあうちにする?」
「そうしようか。お母さんに伝えておいて。」
「家にあるお菓子かっさらってくるわ!」
「ほどほどにね!!」
やっぱりみんな気が気じゃないんだと思う。一人でいると考えちゃう。それか私が気を使われてるだけか。分かんないけど、一緒にいれるならよかった。
そう思っていたらスマホが震えた。
いちごちゃんから着信だ。どうしよう。何かあったのかな。手が震える。
「お、いちごっちじゃん。退院決まったんかな?」
「ふふ。そうかもね。」
2人のそんな言葉に力が抜ける。そうだよね。その可能性もあるもんね。でもいつもより肩に力を入れながら電話に出た。
『もしもし。いちごです。今日この後ってお時間ありますか?』
「時間?あるよー!どうかしたの?」
「いえ。大したことでもないのですが、皆さんに見て欲しいものがあって。他のお2人ももしお時間大丈夫でしたら来ていただきたいのですが……。」
「あ!今3人で一緒にいるんだ!だからみんなで行くね!何時くらい?」
「そうなんですね。お邪魔してしまっていたら申し訳ないですし、急ぎではないので今日でなくても大丈夫です。もしいらっしゃるようでしたら12時以降ならいつでも大丈夫です。いらっしゃる前に連絡いただけるとありがたいですが。」
「了解!みんないるし、今日お邪魔するね!じゃあ1時くらいに行くね。」
「分かりました。お待ちしてます。」
「はーい!じゃあねー!」
そうして電話を切った。ノワとフジコからは熱烈な視線が注がれる。
「呼び出しか?」
「呼び出しって言うと人聞き悪いけど……!見てもらいたいものがある?とかで家に来てほしいって。今日みんなでいるから行くねって言っといた!2人とも予定平気だよね……?」
「うん。大丈夫。」
「うちも平気!見てほしいものってなんだろ。気になりすぎ。」
「それな。なんだろ。」
華楓ちゃん関連の何かなんだろうけど……。思い当たる節はない。忘れ物とかだったら見てほしいものとは言わないだろうし。ほんとになんだろう。
「アヤチ、さっき電話で1時からって言ってた?」
「あ、そう。ご飯食べ終わってゆっくり行ったらそのくらいかなぁと思って。大丈夫だった?」
「もち!」
「私も平気。」
結局今日も華楓ちゃんのことを考えて、華楓ちゃんの近くに行く。やっぱり、もう近くにいるべき存在になってるんだよね。あー、早く華楓ちゃんに会いたい。
「お待たせいたしました。こちらハンバーグと、パスタと、ドリアと、ピザですね。ご注文以上でよろしいですか?」
お喋りをしていたら、すぐに料理が届いてしまった。まだドリンクバーすら取りに行っていないのに。
「大丈夫です。ありがとうございます。」
「ごゆっくりどうぞ。」
店員さんはそう言って私たちの席を去った。
「来るのはっや!いや来るのが早いんじゃなくてウチらのお喋りが長いのかもしれんけど。」
「多分お喋りが長いだけだね……。ドリンクバー行こ!」
ドリンクバーで各々好きな飲み物をコップに入れ、みんなで「いただきます」をする。
やっぱりドリア美味しい〜!ここのメニューは安くて美味しいから最高なんだよね。
ピザも6等分して、みんなで分けた。
「うま〜!飯も頼めばよかったなぁ。」
「ご飯にそのハンバーグは絶対美味しいね。美味しくないはずがないね。」
「だよな〜!でもフジコいつもパスタじゃね?ハンバーグ食べたことあんの?」
「ないね。」
「え!1口食べな!うまいから!」
そんなこんなでファミレスを堪能していた。こういうなんともない日常がどうしようもなく好きだ。
結局みんなお腹いっぱいになっちゃって、デザートはあきらめた。いつもそうだ。何も学ばない。
「じゃあ華楓っちんち向かうかぁ。なんか見せたいものがあるとか言ってたんでしょ?楽しみになってきたわ。」
「確かにね。何見せられるんだろう。」
「なんかそういわれるとドキドキしてきた~!」
そうしてみんなで華楓ちゃんの家までの道をたどる。
もうそろそろ、赤や黄色に色づいた木々は裸になりそうだった。
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