12日目②

「あ、皆さん!」

「いちごっち〜!大丈夫!?」

「私は大丈夫ですよ。華楓は……分からないですけど。」

病院に着くと、元気の無いいちごちゃんが出迎えてくれた。場所が分かりにくいからと、病院のエントランスで待っていてくれた。

「こういうことは今までにもあったの?」

「全くなかった訳ではないです。でも、毎回ヒヤヒヤはします。」

「そっか。」

なんとなく背筋が伸びる。今までにもあったならきっと大丈夫だろう。そんな気持ちでいた。というか、そう思い込むしかなかった。

「ま、大丈夫っしょ!華楓っち案外強いよ!」

「うん、きっと大丈夫!」

「そうですね。じゃあ、とりあえず受付しましょうか。」

「うん。いちごちゃん、ありがとうね。私たちに声かけてくれて。」

「いえ。むしろ来ていただいてありがたい限りです。今日金曜日ですもんね。学校でしたよね。」

「全然問題なし!一回くらいサボったってどうってことないっしょ。」

「緊急事態だし、このくらいどうってことないよ!」

「いちごちゃんを一人で待たせる方が嫌だしね。」

「本当に心強いです。母はもう華楓のところにいます。母も皆さんがいた方が心強いでしょうから、早くそちらに向かいましょう。」

そうして受付を済ませる。

いちごちゃんは慣れているみたいで、スムーズに受付の人と話していた。皆さんは座っててください、と言われ、近くのソファで待っていた。

だけど、なかなか帰ってこない。

「いちごっち思ったよりこなくね?受付ってこんなかかったっけ?」

「いや、こんなにかかった記憶はない。いつものところと違うから手続きが違う、とかなのかな。」

「あー、ありえるね。まあ、もうちょっと待とっか!」

「だなぁ。」

またどうでもいい話を始めた。いまごろみんな何やってんだろうね、とかそんな話。多分、そんな話をしないと嫌なことを考えちゃうから。

「いや、でもやっぱさすがに遅くね?」

ノワがまたそう言い始める。確かに、もう10分くらい待っている。さすがに長すぎる。前に行ったときは何か手こずっているんだろうか。

「そうだよね……。私、様子見に行ってくるよ!」

「うん、よろしく。」

あまりにもいちごちゃんが来ないから、様子を見に行くことにした。

受付のほうに歩いていくと、いちごちゃんが立ち尽くしているのが見えた。誰かを待ってるのかな。

「どうしたの?」

「あ、あやめさん。今受付の方が確認に行ってくださっているみたいで。時間かかってすみません。」

「あ、そうなのね。しょうがないしょうがない。ちょっと心配になって見に来ただけ。なんの確認に行ってるって言ってた?」

「面会ができるかの確認です。本当に申し訳ないんですけど、実は結構無理そうな感じで……。」

「そうなんだ。やっぱ容体重いのかな。」

「そうかもしれないですね。そもそもこういう状況の時に親族以外を呼んだことがないので。こんなことになるとは全く思わず……。すみません。」

「そんなぁ!私もそんなことになるとは全く思わなかったし。しょうがないよ。確認に行ってもらっていけそうならラッキーってことで。」

「そうですね。」

いちごちゃんの表情は暗い。やっぱり申し訳ないとか思われてるのかな。

「私たちは勝手に来てるだけだから。もともと会えたらラッキーくらいの気持ちだし。気にしないで。華楓ちゃんが無事だといいなって気持ちがいっぱいあるだけ!」

「ありがとうございます。華楓、無事だといいな。」

「うん、多分大丈夫!」

そんな話をしていると、受付の人が戻ってきた。

「白丘さん、お待たせしました。現在白丘華楓さん治療中ですので、お会いいただくことはできないみたいです。お母様は白丘さんの近くにおりますので、そこまでならお連れできますが、お母様は娘のいちごだけ連れてきてとおっしゃっておりまして。」

「それ、理由とか聞いてますか?」

「いつ治るのかも分からないですし、真夜中になってしまうかもしれませんから、それはお友だちさんにもそのご両親にも申し訳ないからと、おっしゃっていました。」

「分かりました。ではその友人に話をしてきますので、受付少し待っていただけますか?」

「承知いたしました。」

いちごちゃんは向き直って、

「すみません。母に反抗して皆さんを中に入れることもできたかもしれません。でも、母の意見に納得してしまったので。皆さんにこれ以上迷惑はかけられません。」

「まあ、そうだよね。私も納得はするよ。何か変わったこととかあったらすぐに連絡くれると嬉しいな。」

「もちろんです。」

2人のいるところまで行くと、ノワがすぐに気づいて立ち上がった。

「あ、どうだったん?」

「どれだけ待ってもらうことになるか分からないので、皆さんには帰っていただこうということになりました。ここまで来てくださったのにすみません。」

「ああそっかぁ。でも悪いのはいちごっちじゃないから!いちごっちはまだここいんの?」

「はい、私は残ります。」

「おけー!じゃあ、華楓っちをよろしく!」

「もちろんです。」

「いちごちゃん、何かあったら連絡ちょうだいね。」

「はい。ありがとうございます。」

「じゃ!また近々会うと思うけど。」

「そうだね!またね!」

「じゃあね。大丈夫なように祈ってる。」

「ありがとうございます……!では。」

そう言っていちごちゃんは華楓ちゃんのところへ向かった。

「いや~、無事だといいなぁ、マジで。」

「そうだね……。あー!今日3人で電話しよ!多分気が気じゃなくて寝れない!」

「私も思ってた。そうしよう。」

「だな!じゃあとりあえずウチらが無事に帰んないと!」

また来た道の反対を行く。

華楓ちゃん、無事だといいなあ。ほんとに。

でもきっと戻ってくる。また同じ教室でおしゃべりしたり、みんなで遊んだりできるだろう。と、妄想を繰り広げていた。

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