11日目②
「白丘華楓さんのお見舞いですね。ここにお名前とお時間をお書きください。病室は8号棟11階の8113号室でございます。この入館証を首からかけておいてください。お帰りの際にこちらにお返くださいね。」
病院は大分広くて、この受付に来るまでに少し迷ってしまった。やっと受付にたどり着き受付を済ませた。
「やっと着いたー!えっと、何号室だっけ?」
「8113号室。8号棟の11階だって。すごい上だね。ノワ、あんまり騒がないようにね。」
「分かってるってー!」
「8号棟あっちっぽい!行こ行こ!」
2人の手を引いて華楓ちゃんの待つ場所に向かう。
「カエちゃん驚いてくれるかな。」
「いや驚くっしょ!心臓止まるくらいビックリするよ!」
「心臓止まったらダメでしょ!でも、ちょっとくらいは驚いてくれるといいなぁ。あ、ここじゃない?」
エレベーターに乗り、11階についた。壁に大きく8と書かれているからここで間違いないだろう。
それらしきところを歩いていると、『8113 白丘華楓様』と書かれたプレートがある部屋に着いた。
「おー!ここじゃん!」
ノワはそのまま勢いよくドアを開けた。
「かーえでっち〜!」
ドアを開けた先には、病室とは思えないような部屋が広がっていた。ベッドには入院着を着た華楓ちゃんが横たわっていたが、声を聞いてむくりと起き上がった。
「わ、わあ……!来てくれたんですか……!?こんな遠くまで……!」
「そうだよ華楓っち〜!元気そうでよかったわ。」
「カエちゃーん。思ったより元気そうでよかったよ。」
「ほんとによかったよぉ〜!あ、これお土産!」
さっきコンビニで買ったお土産をそのまま渡す。なんか、袋とかコンビニすぎて恥ずかしくなってきた。紙袋とか用意すればよかった。なんせ、この病室、普通の病室じゃないんだもん。
「え、そんな。来てくれたのに加えてお土産まで。申し訳ないです。」
「いいからもらいなって!貰ってくれたほうがウチらも嬉しいしな!」
「じゃあ、ありがたく受け取っておきます。本当にありがとう。」
「いいえ〜!久しぶりに華楓ちゃんに会えて私も嬉しいし!」
「私も会えて嬉しい……。でも何で?誰に聞いたんですか?」
「いちごちゃんに聞いたの。お見舞いに行ってもいいって言ってくれて。」
「ああ、いちごが。いきなりだったから少し驚きました。」
「驚かせたかったからな!それは成功だったってわけだ。」
4人で話していると、ここが学校のような気がしてくる。
それにしても大きな病室だ。華楓ちゃん以外に患者さんはいない。そして病室っぽくない。普通の家、というかちょっといいホテルみたいだ。ベッドが置いてあって、大きな机もある。部屋の中にお風呂もありそうだし、何しろ景色がすごくいい。絶対VIP用の部屋じゃん。
ノワは一通り喋ると、
「てかすげー部屋だな。ホテルじゃん。」
と言い出し、フジコも
「ノワがドア開けた時、間違えてお医者さんの住んでる部屋かなんか入っちゃったかと思った。」
と言っていた。病室って言うと、1つの部屋にベッドがいくつも置いてあって……というイメージがあるから、やっぱり驚いてしまう。でも、ベッドは可動式のものみたいだし、横に点滴もモニターも置いてある。病室っぽさがあるのは入院着を着た華楓ちゃんとその周りの機材くらいだ。
ベッドの上には、くまの人形が置いてあった。華楓ちゃんの部屋に置いてあった気がする。ベッドサイドの棚には、本が何冊かとノートが置いてあった。勉強してる、とかなのかな。
「カエちゃん、もうすぐ学校戻れそうなの?」
「うーん。断定はできない、かな。まだ分からないといったところです。」
「そうなのかぁ。ウチの元気半分くらいあげたいけどな!それでも全然元気でいられる自信あるし!」
「それじゃ華楓ちゃんがノワみたいになっちゃうじゃん!」
「え、ウチが二人いたら嫌……?」
「そういう訳じゃなくて!」
「ふふふ。私が小波さんになったらどんなふうになるんだろうって想像してみようとしましたけど、全く想像がつきませんでした。小波さんはその100%元気のままでいてほしいです。私も頑張って治しますので。」
「え〜、華楓っちまでそんなこと言うのー?ま、そのくらい戻ってきてほしいってことよ!」
「ふふふ。嬉しいです。なんだか、私はみなさんにたくさんのものを貰っているのに、何も返せませんね。」
「何言ってんの〜!アヤチを見てみ?こんっなに嬉しそうな顔してんだから。」
「私そんなに嬉しそう!?」
「うん。大分ね。」
「まあ嬉しいけどさ!そんなに!?」
「うふふ。嬉しそうにしてくれて、私も凄く嬉しい。」
「えへへ。じゃ、いっか。」
「華楓っちのことになるとすぐこれだもん!」
「アヤチは分かりやすいからね。まあ、貰うとか返すとかそういうのじゃないんだよ。もちろんその気持ちは嬉しいしありがたいけど、友だちってそういうものだと思うよ。少なくとも私たちに限っては、ね。」
「フジコいいこと言う〜!」
「茶化さないでよ。恥ずかしくなってきた。」
「そういうもの、なんですね。私、今まで友だちという友だち、いなかったから。本当に嬉しい。でも、嬉しすぎるから、やっぱりみんなにもなにか返したい。」
「やっぱ華楓っちいいやつ〜!そう言われちゃったらね、期待しとくわ!」
「期待はほどほどにしとくけど……、華楓ちゃんがそう言ってくれるなら、それもそれで嬉しい!」
「そうだね。また学校来てくれるのが1番嬉しいけどね。」
「ふふふ。学校に行ける日が来たら、楽しみにしていてほしいな。遅くなっちゃったり……できなかったりもするかもしれないけど。」
華楓ちゃんがそんなこと言ってくれるなんて、嬉しくてニマニマしちゃう。
「ま、どれだけ遅くなってもいいしな!卒業しても集まるつもりだし!」
「ふふふ。そうですね。卒業したら、みんなで旅行とかも行けるんですかね。海外とか。泊まりでどこかに行ったりできると考えると嬉しいですね。あとは、お酒を飲める歳になったら、みんなでお酒も飲みたいですし。卒業しても集まるってことは、一緒にやってくれるってこと、ですか……?」
「もち!」
「想像すると楽しみだね。」
「うわー、妄想広がるー!」
「嬉しい……。あ、すみません。もうそろそろ看護師さんが来る時間なので……。」
「あ、そうなん?いつまでもいるとこだったわ笑。」
「じゃあそろそろ帰ろうか。元気なカエちゃん見れたことだし。」
「なんだか曇っていて雨が降りそうなので、気をつけて帰ってくださいね。」
「うん、ありがと!またね、華楓ちゃん!」
「じゃあね。ありがとう。」
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