10日目②

「アヤチ、なんか今日テンション高くね?」

「え!?そうかな!?」

「フジコもそう思わん?」

「思うよ。多分朝カエちゃんと話したからだね。分かりやすい。」

「え、私ってそんな分かりやすい!?」

「分かりやすいっしょ!分かりやすすぎ!」

「まあ、分かりやすくて助かるけどね。」

「えー!」

まあ、華楓ちゃんと喋れて嬉しかったのは確かだけど!

「でも、二人だって嬉しいでしょ?華楓ちゃん、元気そうだったし。」

「まあな。早く学校戻ってくるといいな。」

「そうだね。」

華楓ちゃん、今何してるんだろう。

そんなことを思っていると通知音が鳴った。なんだろう。

「え、いちごちゃんからだ。」

「お、華楓っちの妹ちゃんだよな?そういえば連絡交換してたっけ。」

「アヤチ、妹さんから一応交換しといていいですか?って言われて、帰り際に交換してたよね。華楓ちゃんになんかあったのかな。」

「え、そうなのかな……!?えっと内容は……。」

『あやめさん。

急に連絡してしまってすみません。

今日の朝、華楓が誰かと電話していたと看護師さんから聞きました。

もしかしたら皆さんかもしれないと思ったので連絡しました。』

「え、今日電話したの皆さんですか、だって。あれ、許可もらってたんじゃないのかな……?」

「わーお、華楓っちやっぱワルだったんか?」

「カエちゃんに限ってそんなことはないと思ってたけど……。いちごちゃんからそんな連絡がくるってことはやっぱりそういうこと?」

「わかんない。え、なんて返せばいい?」

「えー、ウチらです!すみません!っていっときゃいいんじゃない?」

「いいかなぁ。」

「うーん。まあ、カエちゃんが責められちゃうのは嫌だしね。」

「そうだよね。じゃあそう言っとく!」

『いちごちゃん連絡ありがとう!

今日電話したのは私たちだよ

勝手に電話してごめんね!』

はあ、華楓ちゃん大丈夫かな。体調良くないだろうに怒られたりしたらかわいそうだよぉ。

あ、返信きた。はや。

『やっぱりそうでしたか。

皆さんを責めたいわけではないです。

華楓、何も言わずにそういうことしたので驚いて。』

「やっぱり華楓ちゃん嘘ついてたみたい。」

「え、返信早くね?わーやっぱ華楓っちも人間だな。」

「そりゃそうだよ。病院で一人なんて飽きちゃうよね。」

「だよねぇ。華楓ちゃんは悪くないですって言っとかなきゃ。」

「だな!」

『ごめんね、勝手に電話して

華楓ちゃんは悪くないから!』

いちごちゃんも親御さんも、分かってくれるといいけどなぁ。

過保護っぽいから許してくれるのかわかんないけど、家族みんな華楓ちゃんには甘そうだからなぁ。大丈夫だ思うけど……。意外とお母さん怖かったりして。

「アヤチ、またなんか来てるよ。」

「あ、ほんとだ。」

『華楓が、私が許可を得たと嘘ついたって言ってました。

大丈夫です、責める気はありません。

ただ、珍しいというか初めてだったので。』

「華楓ちゃん、許可もらったって嘘ついたこと言ったみたい。」

「やっぱり嘘だったのかぁ。見破れなかったね。」

「嘘つくの下手そうなのになー!まあ、いちごっちには隠し通せなかったみたいだけど。」

「いつの間にいちごっちとか言ってんの!?えーどうしよ、華楓ちゃんと会えるの遅くなっちゃうかな。」

「でも回復すればいい話じゃない?」

「フジコ天才か???」

「確かに言われてみればそうじゃん!」

「もー二人とも何考えてたの?」

三人で笑いあっていると、華楓ちゃんはすぐに帰ってくるような感じがした。

笑いあっていると携帯がまた震えたのですぐにメッセージを確認する。

『今日会えますか?

今日でなくてもいいですが。

お会いできる日があれば一度お話ししたいです。

できれば皆さんで。』

「ねえ!お会いしたいって!今日みんな空いてる?」

「今日!?チョー急じゃん。ウチは6時からバイトだけど、ちょっと喋るだけっしょ。いけるいける。」

そう、ノワは居酒屋でバイトしている。そこまでシフト入ってるイメージはないけど、それなりに頑張ってるらしい。華楓ちゃんの家から30分くらいあれば行けるだろうから大丈夫かな。

「絶対遅れないで行くんだよ。私も平気。」

「もち!」

「じゃあ5時半くらいまで?」

「だな。」

「おっけー。一応それも言っとくね。」

『今日みんないけるよー!

ノワがバイトらしいから5時半くらいまでなら!

学校終わってそっち向かうの4時前くらいになるけどいい?』

『大丈夫です。

お待ちしていますね。』

すぐに返信が来たので2人にも伝える。

というか、私が年上だからかなんなのか分かんないけど、いちごちゃんのメッセージめちゃくちゃ堅くない?華楓ちゃんもこんな感じだから単純に似てるだけかな?だとしたらちょっとかわいいかも。


学校が終わり、華楓ちゃんの家に向かう。

「何話されるんだろうなー?」

「ほんとにそれ。ちょっと怖くなってきたぁ!」

「あはは、大丈夫だよ。私たち悪いことはしてないもん。」

「だ、だよね!堂々としてなきゃ。」

「なんか彼女の両親に挨拶行く彼氏みたいでおもろいwww」

「やめてよー!そんなに緊張してないし!」

茶化されながら豪邸までの道のりを歩いた。

何度来ても慣れない玄関口。インターホンを押し、門を開けてもらう。

家までの道のりから、楓の木が見えた。

「あの楓めっちゃ綺麗じゃね?前来た時より赤くなってる気がするわ。」

「ほんとだー!綺麗!華楓ちゃんの名前にちなんで植えたのかな?」

「そうかもね。だとしたらいちごの畑もありそう。」

「え、めちゃありそう。いちごの旬っていつだ?」

「食べようとしないでよ。」

「わはは!いいじゃんよー!」

風が赤い葉を散らす。緑色の芝生の上に落ちた赤色の楓がなんとも素敵だった。

玄関口まで来たらいちごちゃんが出迎えてくれた。

「みなさんこんにちは。すみません急にお呼びしてしまって。」

「いいよいいよー!いちごっちもそんな堅くなってないで、フランクに話しなー?」

「いちごっち……?あ、いえ。硬くなっているわけではなくて、なんとなく。急に呼んでしまったのは事実なので。」

「全然気にしてないから大丈夫だよ。それで、カエちゃんは?」

「ああ、華楓は元気そうにしています。そこまで長くならずに帰って来れそうです。」

「よかったー!……で、電話の話は……?」

「ああ。朝の。皆さんだったんですよね。電話かけたの。」

「うん。やっぱりマズかった……?」

「あ、いえ。皆さんを責めるつもりは一切ありませんから。電話もしてもらって構いません。華楓がそこまで仲良くなれる人がいるのは、私も嬉しいですから。」

「まあ、マブだからな!」

「そう言っていただけるならありがたいです。それで、今日お呼びしたのはひとつ理由がありまして。」

「え、なになに?やっぱりなんかマズいことした……!?」

「いえ、違います。母が、華楓とそんなに仲良しの友だちがいるなら話してみたいって言うんです。」

お、お母さんが!?

「いちご、話は終わった?お母さん、出ていってもいいかしら?」

「あ、ちょっと待ってよ。今話してる途中だったんだから。」

いちごちゃんの背後から綺麗な女性が出てきた。黒髪のウェーブ髪に引き締まった清楚な服装をしている。華楓ちゃんが大人になったらきっとこんな風だろう。

「あら、皆さんこんにちは。急にお呼びしてすみませんね。華楓の母です。よろしくね。」

「は、はい……。」

突然のお母さんの登場と、その気高い雰囲気に飲み込まれてしまいそうになった。

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