10日目①

ピリリリリ。

アラームが鳴る。もうちょっと。あと5分だけ、と思いつつスマホを見ると6時半。いつもよりちょっと遅いけど、間に合わないことはないな。

すると、とある通知が目に飛び込んできた。

『おはよう。

すこし体調が回復して、お医者さんと家族から電…』

華楓ちゃんからの連絡だ!

二秒前まで眠くて眠くて仕方なかったのに、通知を見て目がカッと目が開いた。

なんだろう。体調が回復したって書いてあるからいいことかな!

通知だと途中までしかメッセージを見られないからアプリを起動してその全文を読んだ。

『おはよう。

少し体調が回復して、お医者さんと家族から電話ならしていいと言われました。

もしよければ、皆さんとお電話できればと思います。

私は基本的にいつでも電話できますので、お昼休みや放課後にお時間合えば連絡していただけたら嬉しいです。』

わ、回復してるみたいでよかった!

電話もできるって、嬉しすぎる!

早く準備して学校行かなきゃ!できたら朝休みにちょっとだけ電話したいなぁ。

とりあえずおはようとスタンプを送り、返信をした。

『回復してるならよかった!

できればすぐ電話したいくらいなんだけど……。

ノワとフジコに怒られちゃうから我慢!

朝休みにできれば電話するかも?

お話しよ~!』

よし!それじゃ、早く準備しなきゃ!

華楓ちゃんパワーでいつもより二倍くらい早く動いて朝の準備を終わらせた。

いつもより遅く起きたのに、いつもより早く家を出た。


「おはよう!」

「おーおはよ!なんか今日ちょっと早くね?」

「おはよう。確かにいつもより5分以上早いね。珍しい。」

「そうなの!超急いで準備してきた!あのね、華楓ちゃんがみんなと電話したいって!」

「華楓っち!?妹さんとかから許可もらったん?不良華楓っちきたか?」

「ちゃんと許可もらったみたいだよ~!お医者さんからも良いって言われたんだって!」

「おー!てかアヤチウキウキ過ぎん?昨日と大違いじゃん。」

「ほんとに。英語の課題忘れたー!って騒いでたのに。今日はウキウキ過ぎて課題忘れてるんじゃないの?」

「忘れてません!昨日忘れちゃったから、昨日のうちに準備しておきました~!」

「お、えら。ちなみにウチは忘れた。」

「ノワー?」

「ひい、すみませんすみません。プリントはあるんです!」

「わかったわかった。あとでね。」

「フジコ様!」

「ノワはもうそろそろフジコになんかすごいことしたほうがいいよ。ってそんな話じゃなくて!華楓ちゃんに電話していい?」

「もち!早く電話しよーぜ!」

「そうだね。声聞きたいし。」

華楓ちゃんに、『今電話していい?』とメッセージを送る。

もしかしたらご飯食べてたりするかなぁとも思ってたけど、すぐに既読が付いた。

「あ、既読付いた。」

「お、いける?てか華楓っちと四人のグループ作らん?」

「確かに。なんでかそのグループは作ってなかったね。私作っとくよ。グループ名何がいい?」

「ん~、アップルパイ!」

「了解。」

多分皆で食べたフジコ作アップルパイが美味しかったからっていう安直な理由だ。3秒で私たちのグループ名はアップルパイになった。

フジコがグループチャットを作ってくれているうちに、華楓ちゃんから返信がきた。

『今大丈夫です。』

「華楓ちゃんいけるって!かけていい?」

「もち!」

「いいよー!」

二人に了承を得て

『かけるね!』

とチャットを返す。

ティロリロリン、ティロリロリン。

「あ。えと、聞こえてますか?」

「お!華楓っち~!聞こえてる!元気!?」

「華楓ちゃーん!久しぶり!」

「久しぶり~。」

「わ、皆さん。おはよう。私はそこそこに元気です。」

華楓ちゃんの声だ〜!日曜日の誕生日パーティーぶりってことは3日ぶり?たった3日しか経ってないのに、すっごく嬉しい。

「華楓っちだー!元気になってきたなら良かった良かった。あ、今ウチら4人のグルチャ作ったから見といて!」

「えっと、ぐるちゃっていうのは……?」

「あ、グルチャなんて言われてもわかんないよね。グループチャットのことで、一人ひとりじゃなくて、みんなで一緒に喋れるの。普通に学校でみんなで喋ってるののチャット版って感じかな。ちなみに電話もできるよ。」

「わあ、すごい。そんなものがあるんですね。入れていただいてありがとうございます。」

「逆に今までなんでなかったんだろうってレベルだから!作れてよかったよ~!」

「マジそれな?てかあると思ってたわ。」

「ほんとに。」

「そうなんですね。ありがとうございます。」

「いえいえ。」

「華楓っち戻ってきたときにはすごいもん用意してる予定だから楽しみにしといて!」

「すごいもの、ですか?」

「そこまですごくはないかもしれないけど……。でも、楽しみにしてていいよ!」

「はい、楽しみにしておきます。」

「えへへ。なんか嬉しいなあ。」

「うえ、またアヤチがなんか言ってる。」

「あはは、いいじゃん。私はアヤチが幸せそうで何よりだよ。」

「ふふふ。私も嬉しいですよ。皆さんとお話しできるの」

「華楓っち~!いい子過ぎ!守りたい!」

「何言ってんのノワ。」

「皆さんは本当に楽しい人たちですね。」

「でしょ~!まあウチがいるからね。」

「はいはい。というか、カエちゃん朝ごはん食べた?病院食ってどんなの出るの?というかおいしいの?」

「まだ食べていません。もうそろそろ来ちゃいますね。」

「あ、タイムリミットヤバい感じ?」

「いえ、朝のチャイムが鳴るまでなら大丈夫なはずです。」

「ならよかった!それで、病院食美味しい?私、ちっちゃい頃に入院した時、すっごい美味しくないの食べた記憶あるんだよね。」

「美味しいですよ。家のご飯と比べてしまったらそれにはさすがに劣りますけどね。」

「そりゃそうだ!華楓っちのケーキバカ美味かったもん!なんならアレに勝てるもんないっしょ!」

「ばかうまい……?ですか?美味しかったならよかったです。私もあのケーキ大好きです。」

「ほらノワ〜!バカとか言わないでよ〜!」

「すまんすまん。華楓っちの前では控えなきゃ華楓っちが穢れてくからな。」

「えっと……?好きに喋ってください……!」

「あはは!ありがとありがと。てかさぁ、今日アヤチが華楓っちと電話出来るからってチョーウキウキなんだよ!?」

「え、そうなんですか?」

「え、あ、いや!まあね。そりゃ嬉しいでしょ!」

「えへへ。私も嬉しいです。……。あ。」

ツー、ツー。華楓ちゃんの方から電話が切られた。

「あれ、間違えちゃったのかな。」

「多分そうだろ。華楓っちやってそう。あ、切れちゃいました!どうしましょう!みたいな。」

「あはは。まあ、やってそうかも?でもどうせもうそろそろチャイム鳴るし、ありがとうまた後でねって連絡入れとくね。」

「ありがとう!」

ちょっとの時間だったけど、華楓ちゃんの声も聞けたし、思ったより元気そうだったし。よかったぁ!

急に電話切れちゃってちょっと残念だったけど、もっと回復して会えるようになるといいな!

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