8日目②

6限が終わり、生徒会室へと急ぐ。

明日からテスト期間で作業ができないから、今日のうちにできる限り終わらせておきたい。

今日やる仕事は、部長会の資料作成の続きだ。今日中に終わらせないと間に合わない。そもそもテスト期間中に部長会やるのがおかしいと思うんだけどさ!なんでそんな忙しい時に!

早く終わらせて帰りたいけど、そう早くは終わらないよなぁ〜。

「緑川。」

「はい!」

生徒会室に向かっていたら、生徒会長が話しかけてきた。

「白丘は休みって聞いたけど。風邪か?同じクラスだったよな?」

「そうらしいです。」

「あーそうかぁ。仕事頼もうかと思ってたんだけど無理だな。それにしても風邪は心配だな。季節の変わり目だから緑川も気をつけろよ。」

「はーい。」

生徒会室の鍵を開け、パソコンを開いて進捗を確認する。先週の私が頑張っておいてくれたから多少は楽かも。

気合いを入れて、会長と一緒に作業に取りかかる。華楓ちゃんのことが気がかりだからか、全然作業が進まない。早く終わらせて帰りたいのに〜!

カタカタカタ、とパソコンのキーボードを打つ音と、シャッシャッとシャーペンを紙に走らせる音が静寂の中に広がる。

カラカラカラ〜、とシャーペンを軽く投げた音が聞こえた。

「緑川、進捗どうだ?」

「全然進みません。あー、今日中に終わるかなぁ。」

「そんなにか。どれどれ。うーん、このくらいならやっておこうか?自分の作業はもう終わったし、部長会の資料作成、1度やった事があって慣れているからやっておくよ。」

「え!?いや、流石に申し訳ないし……。」

「いいからいいから。私より成績悪いだろ。テスト期間入るんだから、帰って勉強でもしな。」

生徒会長は、多分全部お見通しだ。私が悩んでることを見抜いてる。気を使ってそう言ってくれてるんだろうなってことくらい、私にも分かる。

「生徒会長が成績良すぎるだけだから!でも、お言葉に甘えてもいいですか……?」

「任せろ任せろ!」

「ありがとうございます!本当に!」

「はいよ。できたら一応確認飛ばすな。」

「了解です!ありがとうございます!それじゃあ申し訳ないですが……お疲れ様です!」

「お疲れ〜。」

生徒会長は手をヒラヒラさせながら作業に戻っていた。イケメンすぎる……。普通に惚れそう……。

っと、そんなことを考えている暇もない!ノワとフジコに生徒会終わったよって連絡しなきゃ!

『生徒会終わった!どこいる!?』

『お!早いじゃん!』

『ノワと一緒に教室いるよ〜』

教室で待っててくれたんだ!親友たち、本当に感謝。教室まで最速の早歩きで向かう。

「お待たせ!」

「お疲れ〜!もっと遅くなると思ってたわ笑。早く終わったん?」

「いや、生徒会長がやっといてくれるって言うからお言葉に甘えてきちゃった。まじ感謝。」

「流石生徒会長って感じだね。ありがたい。」

「マジカッケーわ。でもラッキーじゃん!そんじゃ、早く華楓っちのとこ行こーぜ!」

「うん!」


3人で私の下校ルートを歩く。

「あ、ノワとフジコは華楓ちゃんち行くの初めてだっけ?」

「そうそう。さっきね、ノワと、私たち華楓ちゃんちに行ってもいいのかなって話してたんだ。仲良くなったのも本当に最近だし。」

「そーそー。でもまあ良いっしょ、友だちだしってことになった笑。」

確かにそうだよね。そうは言っても、私も仲良くなり始めたの1週間前だしそう変わらないか。

でもちょっと気がかりなのは妹さんのこと。前、変な感じになっちゃったからなぁ。追い返されちゃったらどうしよう。学校の手紙渡しに来ましたって言えば追い返されることはないか。

「ねぇねぇ、華楓ちゃんって妹がいるんだけどさ。」

「妹いんの!?一人っ子かと思ってた。」

「ね。妹いるの、ちょっと意外かも。」

「んね、私も最初はそう思ったし今でも思ってる笑。で、前に家に行った時にその妹さんとばったり会ったんだけど、そのときちょっと気まずい感じになっちゃったんだよね。」

「家のお姉ちゃん取らないでくれます?的な?笑。妹と気まずくなるってどんなよ。」

「でもノワの言ってるのでそんな間違いないかも。あんまり近づかないで欲しい、みたいなこと言われたね。」

「えー!ヤバ!ガチでいるんだそんな妹。めっちゃ華楓っちのこと好きなんじゃん?それなら問題ないっしょ。お姉ちゃんが大好きな人ですよ〜って言ってやろ。」

「そうそう。大丈夫だよ〜。」

やっぱりこの2人に着いてきてもらってよかった。大丈夫かな?って色々考えちゃうけど、2人が付いてたら無敵になれる。大丈夫だ!って思えてくる。

「じゃあ大丈夫だ!」

『次は〜坂水〜、坂水〜。』

電車を降りて、いつもの反対口へと向かう。

ノワとフジコがたわいも無い話をしてくれるから、いつも通りでいられた。ここに華楓ちゃんがいたらなぁ……と考えてしまう瞬間もあったけど、きっといつかその時が来る!と信じることができていた。

華楓ちゃんの家が近づいてくる。大きすぎる豪邸が目に入る。

「あれだよ。」

と私が華楓ちゃんの家を指さすと、

「え!?デカすぎん!?ヤバ!?こんな豪邸現実にあるん!?」

「いや、これはびっくりしちゃう。流石に豪邸すぎる。」

と2人がその大きさに驚愕していた。

そりゃそうだよね。私だって初めて来た時有り得ないくらい驚いたもん。今来てもびっくりするくらいの大豪邸に華楓ちゃんは住んでいる。

「びっくりするよね〜。私も最初来た時ほんとにここで合ってるかなってめっちゃ思ったもん。」

豪邸の目の前に3人でぽつんと並ぶ。インターホンを押して応答を待った。この時間がいつも以上に長く感じられた。

「はい。どちら様でしょう。」

出たのは妹のいちごちゃん……ではなく、恐らく家政婦の女性だ。斉藤さん、だったかな。

「あ、華楓ちゃんのクラスメイトの緑川彩明……と、小波夏乃葉と目黒冨です。プリントを渡しに来ました。」

「承知いたしました。今門をお開けします。」

ギィ……と重い音を立て、門が開いた。

「ヤバ!自動で開くのこれ!?」

「わーすごい。」

2人は自動で開く門に呆気にとられていた。

3人で玄関の方へ行くとドアが開き、50代くらいの女性が顔を覗いた。

「華楓さんのご友人ですね。私、家政婦の斉藤と申します。どうぞおいでくださいました。中へどうぞ。」

「あ、ありがとうございます!お邪魔します!」

3人でぎこちない動きをしながら豪邸の中へと入っていく。応接室だろうか。机と椅子がしっかりと用意された場所に通された。私、ノワ、フジコの順に座る。

広い部屋でドギマギしながら待っていると、奥から声が聞こえてきた。

「あ、華楓の友だち来たの?」

この声の持ち主は、妹のいちごちゃんだ。

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