8日目①
朝起きて1番初めに思ったことは、昨日楽しかったなぁということだった。
寝ぼけながら昨日貰ったキーホルダーを眺める。
今日学校行ったら華楓ちゃんもう話してくれないのかなぁ。
そもそも1週間って何!?ずっと思ってたけど!!
話しかけてもいいかなぁ。でも気まずくなる自信がある……!
うーん、とぐるぐる悩んでいると、お母さんに
「なにしてるの!?早く学校行かないと遅れるわよ!」
と言われてしまったので、
「はぁい。」
と生返事をして学校に向かった。
鞄にあやめのストラップを付けようかすごく迷ったけど、家の鍵を入れている小さなポーチに付けておくことにした。あんまり目立つところに付いてると色々考えちゃいそうだしね。
「行ってきます!」
と言っていつもより少し遅い時間に家を出た。
「おはよう!」
「お!今日遅いじゃん!おはよー!」
「ほんとに。いつも早いから今日休みかと思った。おはよう。」
2人はもちろんいつも通りだ。華楓ちゃんは?今日いるかな?
キョロキョロと教室を見回してみるが、華楓ちゃんは見当たらない。
でもトイレ行ってるとかまだ来てないかもしれないし!きっと来るよね!
「ホームルームするぞー。早く座れー。えーっと、今日は白丘が休みだ。最近寒くなってきたから体調気をつけろよー。」
担任は淡々と事実を述べたが、私は驚愕していた。華楓ちゃん休みか……。もしかしたらあるかもなと思ってたけど、やっぱりこの後なんかある?
転校とかそういう感じ?
1週間って言ってたのもこの何らかの理由のせい?
担任に聞いたら教えてくれるかなぁ。家まで行くのはさすがにウザイよね。電話とかメールは?いやウザイかぁ。
うーんと考えていると、ノワとフジコが私の机の前に来ていた。
「なんか考え事してるでしょ。私の目は誤魔化せないよぉー。」
「フジコぉ!なんでもお見通しなんだから!」
「いやぁ〜!フジコが鋭いのもあるけどアヤチが分かりやすいってのもあると思うけどな!笑。ウチですら分かったわ!」
「嘘〜!」
私ってそんなに分かりやすい!?でも確かに2人とも、私が落ち込んでるとき遠回しに元気づけてくれてるかも。いい友を持った……としみじみしつつ、どこまで話そうか、と考えを巡らせる。
「で、何があったの?こんな落ち込んでるの珍しいよ。」
「そうだそうだー!」
「えへへへへ……。えっと、華楓ちゃんのことなんだけど……。」
「あー華楓っち?確かに今日来てないな。そんなんで落ち込んでたん?笑」
「だからノワ!落ち込んでる人にそういうこと言わないの!」
「ふはは!いや、いいよいいよ。ノワっぽくて助かる笑。来てないから落ち込んでるって言うのもあながち間違ってないし。一限始まるまでに話終えられる自信ないから、お昼休みでもいい?」
「もちろんよ!任せときな!」
「任せて任せて〜。何でも聞いちゃうし、なんなら今日限定でジュース奢ってあげちゃう。」
「ガチ!?ウチはどうしよっかなぁ。オレンジジュースとかにしよっかなぁ。」
「ノワに言ってないから!アヤチに言ってるから!しかも今日オレンジジュースじゃ寒いよ?」
「それもそっか!あはは!」
もう12月直前。ノワのいつものオレンジジュースの飲みっぷりは、お腹壊さないか心配になるくらいだ。
「あ、もしかしたらカエちゃん風邪とかかもよ?昨日遊び過ぎたかなぁ。最近気温も下がってきてるし有り得ると思わない?先週も風邪ひいてたし、ぶり返したとか?」
「確かに!華楓っち、昨日楽しすぎて風邪引いちゃったみたいです……。昨日すごく楽しかったのに心配かけてすみません……。とか言いそうじゃね!?」
「ふはは!確かに言いそう笑。それはそれで心配だけど!」
2人のいつも通りの空気感が今の私にはとても嬉しかった。華楓ちゃん、風邪は風邪で気にかかるけど……。まあ、そういうことにしておこう。あんまり考えてても何かが良くなるわけじゃないだろうし。
『キーンコーンカーンコーン』
「あ、やべ予鈴だ。一限何?」
「日本史だね。」
「うわマジか課題やってねぇ。プリント貸して!今日順番的に先生に当てられる日なんだよ!」
「ジュース奢りね。はい。」
「フジコ様〜!ジュースでもなんでも奢りますー!感謝ー!」
先週と何も変わらないような。でも変わりすぎたような、そんな感じがした。
4限が終わり、2人が私の席に来てくれた。
「やっと昼〜!今日マジめっちゃ長かった。てか今日の時間割終わりすぎん?7限あるしさぁ!」
「ほんとにそれな?7限何するんだろう。どうせよく分かんない調べ学習とかするだけだよぉー!」
「面倒だねぁ。で?アヤチはどうしたの?忘れてないからね?」
「ああ……。華楓ちゃんのことなんだけど……。」
「なんか知ってんの?」
「知ってるっていうか、よく分かんないことがあって。意味分かんないと思うんだけど聞いて。
私、1週間前から華楓ちゃんと仲良くなり始めたでしょ?」
「そうだよね。急に仲良くなって1週間遊び倒してたイメージある。」
「そうそう笑。それ実は理由があって、華楓ちゃんに『1週間でいいので付き合ってもらえませんか……?』って言われたんだよね。それで、1週間だけ友だちって感じになって……。いやほんとによく分かんないんだけどさぁ!」
「何それ!?1週間限定友だちだったん!?」
「いや、もちろん私はそれから先も仲良くしてくれたらなぁって思ってたし今も思ってるよ。華楓ちゃんって多分、今まで友だちとかが多くいたタイプじゃないから、友だちのハードルが高くて1週間って言ってたのかなぁ、なんて思ってたんだけど、今日学校来てないもんだからどうしたんだろうって考えちゃうじゃん?」
「それはそう思うわ……。不思議な子だなぁとは思ってたけどより不思議度深まった。今日何で休んでるのか担任に聞いてみたら?」
「教えてくれるかなぁ。なんか個人情報だから!とかって隠されたらもっと不安にならない?」
「そんなん分かんないじゃんか!一旦聞いてみようぜ!聞いて分かんなかったらメール、その次は電話、その次は家まで凸だな!」
「ノワっぽい笑。でもいいんじゃない?もし今日で友だちが終わってたとしても、クラスメイトではある訳だし、迷惑とかでは無いんじゃないかな。」
「そっかぁ。じゃあ一緒に担任のとこまで来て!」
「もちろんよ!行こーぜ!」
そうして私たちは職員室へと向かった。担任を呼ぶと、
「おお、3人そろってどうしたー?」
と言って廊下に出てきた。思い切って、
「あの、白丘さんって今日何でお休みなんですか?」
と聞いてみる。すると、
「あー、白丘か!体調不良って聞いてるぞ!白丘も仲良くできる奴がやっとできたみたいで俺は安心してるよぉ。これからも仲良くしてやってな!あ、プリントとか今日配られたものあったら誰か届けてくれないか?緑川とか家近いだろ。」
「あ!めっちゃ近いです!行きます!」
「おー、助かるよ!さすが生徒会!」
「あはは……。あ、それだけです。ありがとうございました。失礼します。」
「はいよー!」
職員室のドアを閉め、顔を見合わせる。
「風邪なら良かったじゃん!良くはねぇけどな!笑」
「そうだね。今日カエちゃんち行く理由もできたし、聞いてよかったね。」
「うん!でも今日私生徒会あるんだ……。」
「あ、そっか。月曜だもんね。どっかで集合してく?それとも一人で行く?」
「集合してこ!一人じゃ心細い感じあるし。」
「りょーかい!んじゃ終わったら連絡してな〜!」
「うん!」
2人のおかげで、少しは気持ちが落ち着いた。華楓ちゃん、大丈夫かな?今日は7限までだからあと3時間も授業がある。集中できる気がしないよ〜!
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