7日目②

「ピザも、目黒さんが作ってきてくれたアップルパイもシフォンケーキも、全部美味しいです……!」

華楓ちゃんは少食みたいでそんなにたくさんは食べてなかったけど、1口食べる事に幸せそうな顔をしていてこっちまで幸せになった。

あんまり食べない華楓ちゃんの分、私とノワとフジコで「太っちゃう〜」って言いながら食べた。

フジコが作ってきてくれたお菓子は本当に美味しくて、いつか本当にお店とかやり出すんじゃない?って思うくらいだ。

「フジコの作るお菓子マジでうまいから!今度はガトーショコラとかどーよフジコさん。」

「ノワが食べたいだけでしょ笑。でもガトーショコラいいね。今度作ろっかな。」

「やったぜ!」

「ねぇねぇ、華楓ちゃんは好きなお菓子とかないの?私は作れないけどさ、フジコにねだっとくから!」

「え〜、私?自分で作るのも楽しいよ?」

「だって上手くいったためしないもーん。私がバレンタインで作ったお菓子知ってるでしょ?」

「ああ、確かに……。」

確かにって何よ!って言おうと思ったけど、反抗できるほどのクオリティじゃないので黙っておくことにした。ちなみにカッチコチで黒いカップケーキを生み出した。黒いとこ取ればおいしかったもん!

「私の好きな食べ物……。うーん。あ、マカロンは大好きです。」

「マカロンかぁ。難しいんだよね、あれ作るの。でも来年のカエちゃんの誕生日にでも作ってみよっかな!」

「フジコの作るマカロン美味そ〜!早く来年になれー!」

「ノワのために作る訳じゃないから笑。」

そんなやりとりをする私たちを見て華楓ちゃんはにこっと微笑んでいた。2人には華楓ちゃんとは今日で終わりなんだ、なんて一言も話してない。

だから来年の話なんてしてるけど、本当にその来年はあるのかなって私は思っちゃう。普通に聞けば楽しくてワクワクする話なんだけど、この状況で聞くと寂しさの方が勝ってしまう。

「あれ、おーい、生きてるかー?あ、もしかしてマカロン嫌いだった?笑」

「いや、違う違う!私何気にマカロン食べたことないなって!」

「食べたことないなんてそれは人生損してるよね、カエちゃん?」

「あ、そ、そうですかね。でも本当に美味しいです、よね。」

華楓ちゃんも何だかたどたどしい返事をした。きっと私たち2人が思っていることは一緒だ。でもなんで同じことを思っているのに華楓ちゃんは今日で終わりなんて言うんだろう。

もしかして転校する、とか……!?

でも転校ならまた会えるし、連絡先も繋がってるから友だちでもいれるし……。

あ、もしかして海外!?

華楓ちゃん家族なら有り得るなぁ。

そんな想像をしながら頬張るアップルパイはなんとなく寂しい味がした。


もうそろそろあんなにあったご飯が無くなる。こんなにいっぱい食べられるかな?とか言ってたくせに全部平らげる勢いだな、これ。

でもご飯食べてお開きじゃつまんないし、なんか皆でやりたいな。

「ねぇ、そろそろご飯食べ終わるし、ゲームでもする?それとも映画でも見る?華楓ちゃん、どっちがいい?今日の主役は華楓ちゃんだし!」

「え、私……!?えっと、どうしよう。うーん、じゃあゲーム、してみたいかな。」

「おっけー!4人でできるやつと言えばこれじゃない?」

そう言って有名なパーティーゲームのカセットとゲーム機を取り出す。いつも3人でやってたから、4人でやるのは初めてだ。

「いいじゃん!やろーぜ!」

このゲームは、サイコロを振って出た目だけ先に進めるんだけど、止まったマスにミニゲームがあったりギミックがあったりするっていうちょっと変わったすごろくのようなゲームだ。基本的には運ゲーなので、初心者の華楓ちゃんにも優勝の余地がある。

「ゲーム機、初めて触りました……!これは一体どうすれば……。」

「あ、初めてか!えっとね、このボタンで移動で……。」

「ゲーム機今日初めて触ったのすげぇな。ちっちゃい時とか何して遊んでたん?」

「えっと、本を読んでもらったり絵を描いたり、ですかね。あとはお人形さん遊びとか……。」

小さな華楓ちゃんがお人形遊びをしているところを想像するととても絵になる。王子様とお姫様で、とかやってたのかなぁ。

「へぇー!ウチとは真逆行ってるわ笑。ウチはちっちゃいとき木登りとかしてたな!」

「き、木登り……!?危ないですよ、そんな。」

「大丈夫大丈夫!今元気に生きてるし!」

木登りする小学生のノワも容易に想像できる。きっと男子たちに紛れて立ち入り禁止のとことか入って怒られてたんだろうなぁ笑。

そんなことをだらだらと話しながら華楓ちゃんにコントローラーの説明をする。ふんふん、と頷きながら聞いてくれた。

「こんなもんかな!どう?分かった?」

「何となくだけど……。とりあえずやってみる……!」

「うん!分かんなくなったら聞いてね!」

「うん。ありがとう。」

そうしてゲームを開始した。最初はノワが6の目を出しまくって無双してたんだけど、途中のマスで最初の方まで戻されて、華楓ちゃんがトップに躍り出た。

ミニゲームも操作を教えながらやったら、慣れてる私たちよりも上手だったりしてビックリ笑。

フジコも心なしか華楓ちゃんを応援していて、結局華楓ちゃんが1位になった。

「わ!これは1番ですか……!?」

「そうだよ華楓ちゃん!すごい!」

「すごーい!おめでとカエちゃん。」

「くそぉ……最初のあれが無ければ……。でも初めてでこれはすげぇな。悔しいけどおめでとう!」

「あ、ありがとうございます……!嬉しいです……!」

華楓ちゃんがキラキラした目でこちらを見てきたので私まで嬉しくなった。

「じゃあ帰ろっかぁ。もうそろそろお母さんも帰ってくるでしょ?」

「そうだね。ちょっと、っていうか結構名残惜しいけどお開きにしよっか。お母さん仕事から帰ってきちゃうし。いやまあ帰ってきてもいいんだけど多分はちあわせたら雑談に捕まるから笑。」

うちのお母さんお喋りだから、捕まると30分くらい帰れなくなっちゃう笑。しかも夕飯食べてく?とか言い出すから早めに帰ってもらわないと。

「だな笑。じゃあ華楓っちの家まで送ってきな!確か歩きでそこまでかかんないっしょ?ウチらは先に片付けしてっから!」

「え、いいの?」

「もちろん。本日の主役最後まで送り届けて来てね!」

「ありがと!じゃあお言葉に甘えて、華楓ちゃん、行こ!」

「あ、ありがとう。2人も今日は本当にありがとうございました。プレゼントも大切にします……!クッキーもいただきますね。」

「いーえ!カエちゃんに楽しんで貰えたなら何より!」

「華楓っちとガッツリ遊べて楽しかったわ!また明日学校で!」

「私も楽しかったです。それでは失礼します……!ありがとう。」

「うん。バイバーイ!」

「じゃーな!」

2人に感謝しつつ華楓ちゃんの家に向かう。

「今日、本当に楽しかった。パーティー開いてくれてありがとう。」

「ううん!私も楽しかったから!ありがとね!」

明日からはもう一緒にいれないのかなって思うと寂しいけど、とりあえず楽しかったとだけ思っておくことにする。

今日楽しかったねって話をして華楓ちゃんの家までの道を歩く。明日の話はしないのが暗黙の了解みたいになっていた。

そんなこんなで華楓ちゃんの家の前に着いてしまった。なんとなく雑談をして引き止めたけど、その雑談もその場繋ぎのもので、そう長くは続かなかった。

「それじゃあまたね、華楓ちゃん!今日楽しかった!」

「うん。あの、最後に……。これはお礼です。」

そう言って、黒い箱に入ったプレゼントらしきものを渡してくれた。

「え!?あ、ありがとう!?」

「あの、今開けて。」

「え、あ、分かった!」

包装を解き、黒い箱を開ける。そこには花のストラップが入っていた。あやめの花だ。

「楓のストラップをもらったとき、考えてたことが同じでビックリした。あやめの花のストラップ、探しても売ってるの見つけられなかったから手作りしちゃった。意図せずお揃いみたいになったね。えっと、あやめちゃん……!」

「え……。」

今まで華楓ちゃんが私の名前を呼んでくれたことはなかった。初めて名前を呼ばれてちょっと、というかかなりびっくりしたし嬉しかった。なんで名前呼んでくれないんだろうってちょっと思ってたし、覚えてないのかなとまで思ってたから笑。

「え、あやめちゃん、だよね。合ってるよね。」

「あ、合ってるよ!ありがとう!ビックリしただけ笑。」

「よかった。今日いつ渡そうってずっと思ってて……。家まで送ってくれてありがとう。2人も待ってるだろうから行くね。」

「うん。ありがと華楓ちゃん!大切にするね!またね!」

「うん、こちらこそ……!1週間、ありがとうございました。さようなら。ありがとうあやめちゃん。」



つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る