6日目③
「あの、コーヒーカップって、あの真ん中のハンドルで自分で回せるの……?」
「そうだよ!回しすぎると目回っちゃうから気をつけてね。」
「うん。気をつけなきゃ。」
小さい頃はブンブン回してお母さんに目回っちゃったよ〜!とか言われたなぁ笑
コーヒーカップの列はそこまで混んでいなかったので、あまり並ぶことなくたどり着くことができた。
「よし!回すぞ〜!」
「あ、まだ回らないんだね。始まったらたくさん回そう。程々にね。」
私たちは水色のコーヒーカップに乗り込んだ。
華楓ちゃんがハンドルや周りの様子をキョロキョロ見回している。きっと物珍しいんだろうなぁ。私からしたら、そんな風にしてる華楓ちゃんの方がよっぽど珍しいけど笑。
コーヒーカップに人が入りきったようで、アナウンスが始まった。
「みなさんこんにちは。コーヒーカップへようこそ!コーヒーカップは、自分でハンドルを回して、動かすことができます。が、回しすぎて頭がクラクラ、なんてことがないようにお気をつけくださいね。それではスタートします。もうしばらくお待ちください。」
「わぁ、楽しみ。」
「ね!楽しみ!」
そしてまたアナウンスが鳴った。
「それではスタートします!お気をつけて行ってらっしゃい!」
ガタッという音と共にコーヒーカップが回り出す。
そして軽快な音楽が流れ出した。音楽とともに私の心は踊った。
「回せるようになった……!」
「よし!回そ!」
「うん。」
2人でハンドルを回す。これ、思ったより力いるんだよね。回れ回れー!
「わ、目が回ってきた、かも。」
「うわぁ!それは危ない。回ってるの止まれ〜!」
そう言ってハンドルを固定しようとするが、思ったより勢いがある。止まれ〜!
「わ、止まってきた。」
「止まってきたね!やっぱ回しすぎはだめだぁ笑」
「あはは。そうだね。でも楽しい。」
「じゃあいっかぁ!」
コーヒーカップって、回しすぎちゃダメだって思っても回しすぎちゃう。それが醍醐味みたいなところあるけどね。くるくると回り、風の心地良さも感じたところで、音楽が小さくなってきた。
「それではもう少しでコーヒーカップが止まります。完全に停止するまでそのままでお待ちください。」
愉快な音楽は止まり、くるくると回っていたコーヒーカップも私たちも静止した。
「終わっちゃったね。楽しかった。」
「ね!終わっちゃったぁ。でも楽しかった!」
コーヒーカップを降り、少し歩いたところで、華楓ちゃんが立ち止まった。
「ん?どした?」
「あれ、食べてみたい……!」
華楓ちゃんの目線の先にはキッチンカーがあった。ポップコーンとチュロスを売っているお店だ。
「ポップコーンとチュロス!食べよ食べよ!丁度おやつ時だし!何味にしよっかな〜。」
「何味があるの?」
「えっと、ポップコーンはキャラメルしかないって。チュロスは、シナモンとチョコ味があるって書いてあるよ!」
まだキッチンカーの前にいるだけなのに、甘い匂いが立ち込めていてもう美味しそうだ。
「シナモン味かチョコ味。どっちも美味しそう……。」
「んね!迷っちゃうなぁ。ポップコーンは多分ひとり1個買うと多いだろうから1個買って半分こしよっ。」
「うん。あ、それならチュロスも2種類買って半分こっていうのは……?」
「それいいじゃん!そうしよ!すみませーん。」
「はい。ご注文は?」
「キャラメルポップコーン1つと、チョコとシナモンのチュロス1つずつください!」
「かしこまりましたー。」
店員さんにお金を払うと、ポップコーンを大きなカップの中に入れてくれる。キッチンカーの前を通った時にも感じたけど、甘い香りがより漂ってくる。美味しそう〜!
「お待たせ致しました、ポップコーンとチュロスになります。」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます。」
もらったポップコーンもチュロスも少し暖かい。出来たてかな?早く食べたい〜!
「早く食べよ!」
「うん。チュロス食べようかな。いただきます。」
「いただきます!」
華楓ちゃんはシナモン、私はチョコのチュロスを頬張った。
「うん!美味しい!」
華楓ちゃんも固まりつつ
「美味しい。」
と目を輝かせて言っていた。
チュロスって遊園地に来た時くらいしか食べないけど本当に美味しいよね。お祭りの屋台とかでも売ればいいのにって思うくらいには好き。
2人でもぐもぐとチュロスを食べ、半分くらい食べたかな?というところでチョコとシナモンを交換した。
「こっちも美味しい!どっちも食べれて幸せ〜!」
「本当に。どっちも美味しい。幸せ、だね。」
「うん!」
そう言って2人で笑いあった。この瞬間がいつまでも続けばいいのにと思った。
私たちの関係は明日で終わり。どうしよう、華楓ちゃんにまた来週も仲良くしてねって言ってみようかな。拒まれちゃうのかな。どうして1週間……?
1週間でいいのでって言われた時は、それだけの時間でも仲良くなれるのが嬉しかった。でも今はそれだけじゃ足りないと思ってる。
「ポップコーン食べてもいい……?」
「え、あ、うん!食べよ食べよ!」
「うん。」
華楓ちゃんがサクッという音を立ててポップコーンを食べた。
「美味しい。あ、どうぞ?」
私が固まっていると、そう言ってポップコーンを1つ渡してくれる。
「んふふ。ありがと!」
ポップコーンを口の中に入れるとやっぱり甘さが口の中に広がった。
「ねえ華楓ちゃん、明日で私たちの友だちって終わりなんだよね?」
「あ……。うん。そう、だね。」
華楓ちゃんのその受け答えは心なしか少し寂しそうに聞こえた。1週間って設定したことを後悔してたりしないかな?だとしたら嬉しいし、これからも仲良くしたいんだけど……。
「本当に明日?なんか来週も、とかないの?」
「うん。明日。」
そう話す横顔はどこか美しさを帯びていた。ポップコーンの甘い味が口からすぅっと消えていく。
華楓ちゃんはきっと明日ってちゃんとキリをつけてる。私がそれを妨害しちゃダメだよね……。
「じゃあ明日どうしよっか!ていうか今思ったけど、華楓ちゃんって誕生日もうちょっとじゃない?」
「そうだね。誕生日来週。」
「だよね!じゃあちょっと早い誕生日パーティーしない?」
「お誕生日パーティ……!そんなことしてくれるなんて……。でも、誕生日パーティーするの私だけになっちゃう。なんだか申し訳ない。」
私だけ申し訳ないって思ってるんだろうけど、そんなことどうでもいい!
「私がお祝いしたいだけ!いいでしょ?」
「そう言ってくれるなら……!」
「やったぁ!じゃあノワとフジコも呼びたいな。ダメ?」
ノワとフジコと華楓ちゃんと私の3人で遊びたいっていうのは、ただの私の欲望だったりする。だって絶対楽しいもん!
「え、そんなに祝ってもらっていいの……?もちろんみんながいた方が楽しいとは思うけど……。」
「聞いてみるよ!やるとしたら家かな?ちょっと、っていうか結構狭いけど私の家でもいい?」
「もちろん……!わぁ、お友達に祝ってもらえるなんて幸せ者だね。ありがとう。」
「ありがとうはまだだよ!明日、楽しみにしてて!」
「うん……!」
明日で最後……。全力で楽しむんだ!
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