6日目②

「何、食べようかな。」

お昼ご飯を求めてお店に入ったが、メニューが豊富すぎて選べず頭を悩ませている。

「ね!何食べよう。あ!うどんとかラーメンとかある!寒いしそっち系にしようかな……。」

「いいね。私もそうしようかな。」

結局私たちはうどんを食べることにした。あったかくて美味しそう!

「いただきます!」

「いただきます。」

ズルズル、と麺をすする。ん〜!美味しい!友だちと遊園地で食べてるっていうのもあってより美味しい!

華楓ちゃんの方を見ると、麺をすするのに手こずっているみたいだった。

「麺、すするの苦手で。」

「そうだったんだ!ゆっくり食べよー。」

「うん。ありがとう。」

ゆっくりとお喋りしながらお昼ご飯を食べる。うどんは具が沢山入っていてあったまるし、お腹にも溜まるし、最高に美味しかった!

「ご馳走様でした!美味しかったね!」

「ご馳走様でした……!美味しかった。」

「次どこ行こっか。なんか行きたいとことかある?」

「えっと……苦手だったら全然大丈夫なんですけど、お化け屋敷に行ってみたいなって思って。」

「お化け屋敷!全然得意じゃないけど、入ってみたくはなっちゃうんだよねぇ。全然いいよ!でも覚悟はした方がいいよ。」

お化け屋敷、1回だけ入ったことあるけど、没入感が凄くて、そこまで怖くないだろうって鷹を括ってたのに結構怖かった記憶がある。

「覚悟……!襲われないように気をつけなきゃ。」

「うん!気をつけなきゃ食べられるー!」

「それは気をつけなきゃ……!」

ここのお化け屋敷、どのくらい怖いのかなぁ。あんまり怖すぎないといいけど……。


「ここがお化け屋敷……!すごい。怖そう。」

「すごいね!ほんとにめちゃくちゃ怖そう……笑。」

いざお化け屋敷の前に来てみるとおどろおどろしい雰囲気が漂っていて、その空気だけでもう怖い。華楓ちゃん、この感じだとこういうの全然平気なのかも……?

「じゃあ入ろっか!怖いけど入るしかない!」

「うん……!」

お化け屋敷に入ると、スタッフさんが説明をしてくれた。中に入ると、外にいるよりも寒く感じた。やっぱり遊園地は夏に来るものなのかもしれない。

スタッフさんがこの館の世界観を静かなトーンで語り始める。

「この館では、毎年人が死んでいます。なぜかは分かりません。もちろん、毎年のことですから対策はしております。まずここには基本的に人が入れないようにしてあります。ですがなぜだか毎年、ここに訪れて亡くなる方がいらっしゃるのです。そしてあなた達は、この館やその周囲の森の管理人の元で働く新人です。管理人に、あの館を調べてこいと頼まれてしまいました。管理人に言われては仕方がありません。館を訪れ、どんな状況なのかをしっかりと目で見て、確かめてきてくださいね。それでは、お気をつけて。」

そんな怖すぎる話を聞いたあと、私たちの目の前にあった門がキィ……と音を立てて開いた。怖い、怖すぎる。

「すごい。本当にそこにいるみたい。」

「ほんとにね〜……。怖ぁ。」

華楓ちゃんはズカズカとお化け屋敷を進んでいく。早いよ〜!待って〜!

お化け屋敷を進んでいくと、蔓が伸びた壁におんぼろの床、消えかけの電球という廊下に出た。

「うう、こわい。」

「大丈夫……?」

「うん。だ、大丈夫!!!って言えばきっと大丈夫。」

「うん。大丈夫……!」

大丈夫、大丈夫と思いながら廊下を進んでいく。華楓ちゃんが前に立って進んで行ってくれるから、後ろからくっついて進んでいく。華楓ちゃんがこういうの平気なのは意外だったけど、大丈夫な人でよかったって本当に思う。お化けダメな人とじゃ多分1歩も進めない。

そしたら突然部屋の中から、うぉー……という声が聞こえた。

「ヒィッ!」

「うわぁ。」

そうして障子の隙間から顔がのぞく。

「うわぁぁぁぁ!!!」

「わっ……。び、ビックリした。」

「ほんとに!もうこわぁ……。」

華楓ちゃんはこれまた意外と平気そうだ。遊園地行ったらめちゃくちゃ楽しめるタイプなのかも。ノワとかと合いそう。でもノワはお化け無理か。フジコはお化け得意だった気がする。皆で遊園地来たら最強に楽しめるのでは?と思いつつ、何気に明日で1週間なんだよなぁと、こんなところで考えてしまう。でもその考えはお化け屋敷の恐怖ですぐにどこかへ行ってしまった。

「先、進む……?」

「う、うん!進もう進もう。ジャンジャカ進んでこう。」

早く進んで早く外に出よう。立ち止まってちゃだめだ!そう思い、華楓ちゃんの肩をガッシリ掴み着いていく。先頭を普通に歩ける華楓ちゃん、強い。

「次、この部屋かな。」

「分かんないよぉ!あれ、それスタッフルームじゃない!?」

「あ、本当だ。危ない。教えてくれてありがとう。よかったです。」

「あはははは!なんか面白くて怖いのちょっとなくなったかも笑。」

「それならよかった、のかな。」

「でも怖いことには怖いから、早く先進もう!」

「うん。えっと、こっち、だよね。」

「だね!」

そうしてまた館の中を進んでいく。

足元を髪が触ったり、横から息が吹きかけられたり、急に人が落ちてきたりした。

その度に、うわぁぁぁ!とか、ひぇぇぇ!とか、はっっっ!とかって言って、その声で華楓ちゃんを驚かせた。

「わっ。びっくりした。」

「あぁぁー!ごめん!おっきい声出してびっくりするよね!でも怖いもんは怖くて…うわぁぁぁ!」

「わっ。あはは。大丈夫だよ。なんかちょっと面白い。」

「え、面白い!?面白くないよー!」

「うふふ。でももうそろそろゴールみたい。」

「ほんとだ!光が見える!あそこまで頑張ろ!」

「うん。」

光が見えたらもう怖くない。もう着く!すごい長く感じたぁ。

「タノシカッタカ……。」

「ひぃっ!」

頭上から声が聞こえ、上を向いたらそこには首を吊った人間がいた。管理人さん!この館ダメです!もう取り壊しましょう!怖すぎます!てか新人にこんな所に行かせないでください自分で行ってくださいー!

「サヨナラ……。モットアソビタカッタ……。」

「さよなら!!!華楓ちゃん、早く行こ!!!」

華楓ちゃんの方を向くと、律儀に首吊りの人に手を合わせていた。こんなところで手を合わせる人初めて見た。なんだかちょっと笑っちゃう。

華楓ちゃんが顔を上げて私の方を見た。

「うん。出よう。」

「うん!」

私たちは光へと向かう。どんどんその光の強さは増していき、とうとう外に出ることができた。

管理人役だと思われるスタッフさんが話しかけてくる。

「おお、帰ってきたか。死体はあったか?」

「ありましたよぉ!もうこの館は取り壊した方がいいと思います!」

「いやでもな、この館は死者たちが生きる場所なんだ。私もその1人だからね……。

取り壊せるはずがないんだ。死体があるならまた仲間が増えたみたいだな。あ、今日の任務は終了だ。あとは好きにしてくれ。まあここで暮らしてもらっても構わないがな。ガハハ!」

怖っ。管理人さんも幽霊だったってこと……!?最後の最後までちゃんと怖かった……。


「すごかった。こんなに作り込まれてるなんて。」

「ほんとにね!めっちゃ怖かったぁ……。ちょっと休憩しよ!休憩!なんか優しいアトラクション乗ろ!」

「うん。優しいアトラクション……。これとか……?」

「コーヒーカップ!いいね!そっち向かおう!」

「うん。」

そうして私たちは恐怖の館から脱出し、コーヒーカップのエリアへと向かった。

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