4日目②
華楓ちゃんの家は昨日聞いた通り、商店街を抜けたらすぐ白丘という表札の家があった。
え、本当にここ……?
その家には大きくて豪華な門があり、門の先には広い庭がある。プールやゴルフの練習場があるのがここからでも見える。楓の木も立っており、赤色に色付いた葉が風に舞っていた。そしてその庭の先に、まるで物語に出てくるかのような大きいお家がある。
お家っていうか、ちょっとしたお城くらいの大きさだよ!?私からしたら!本当にここだよね!?
華楓ちゃんはお金持ちのところの子なんだろうなとは思ってたけどここまでとは……。なんというか、圧巻。
こんなスーパーの袋持って入っていいところ!?どうしよう、なんかもうちょっと服装とか整えてくればよかったかな。
こんな身構えてても仕方ないか。よし、ピンポン押そう。
そう決意し、大きな門の隣にあるインターホンを押す。そのインターホンは、心なしか少し重かった。
ピーンポーン。
そしてこの沈黙が長い。はやく誰か出て〜!
『はい。』
その声は、大人の女性の声に聞こえた。お母さんかな?
「あ、えっと、私、白丘華楓ちゃんの同級生の者です。先生に頼まれてプリントを渡しに来ました!」
『ああ、華楓が言ってた人だ。私出るから斉藤さんはいいよ。いいってば。あ、いま門を開けるので待っていてください。門が開いたらそのまま家まで入ってきてもらって大丈夫です。』
「はい!ありがとうございます!」
次に出たのは若い女性だった。さっきの人とは違う。さっきの人は斉藤さんっていうのかな……?あれかな、家政婦さん的な……?こんなに大きい家だもん。いてもおかしくないよね。
ギシィ、と重い音を立てて門が開く。自動だ……すご……。恐る恐る門の中に入り、庭を歩いていく。
ギシィ、と急に後ろから音が鳴ったのでビックリした。門が閉まる音か。初めての経験すぎて起こること一つ一つに驚いてしまう。
庭を歩いていき、玄関口に着いた。門の前からでは分かりにくかったが、玄関口もかなり広い。なんだか綺麗な装飾も施されていて、異空間に来てしまったかのようだ。
ガチャッ、と玄関扉から音がする。
「どうも。華楓の妹です。華楓から話は聞いてるので。どうぞ。」
「あ、ありがとうございます!お邪魔します……!」
華楓ちゃんの妹と名乗るその人は、華楓ちゃんと同じように黒髪で、髪を下ろしている。身長は私よりも全然低くて童顔だ。可愛らしい雰囲気だが、喋り方などから鋭さを感じられる。
そしてその後方に、エプロン姿の女性が立っていた。この人が斉藤さんかな。歳はそこまで若くは無いが清潔感があり優しい雰囲気の女性だ。
家の中に足を踏み入れると、高級感のあるカーペットや額縁に飾られた絵画が向かい入れてくれた。なんか、高そうな匂いがする……。
「いちごさん、私が案内しますよ。」
「いやいいの。華楓の友達とちょっと喋ってみたいし。斉藤さんは掃除の続きしてきて。……すみません、案内します。3階です。」
「あ、はい!あの、これ!苺と林檎、買ってきたのでもし食べるようであれば食べてください。」
「ああ、ありがとうございます。斉藤さん、これ準備しといて。」
「かしこまりました。」
そうして華楓ちゃんの妹さん、恐らくいちごちゃんは、私のことを案内してくれた。案内された先にエレベーターがあった時はまた驚いてしまったけど。
エレベーターに乗り、2人になる。無言が何となく気まずい。そんな時、妹さんは口を開いた。
「あの、失礼だとは思いますけど、あんまり華楓と関わらないでもらえますか?」
……。え……。ど、どういう、こと?急にそんなことを言われ、私の脳は停止する。
「えっ……。あ、えっとぉ……。」
言葉の意味を理解しきれず、というか理解することを脳が拒んで、彼女の言葉が頭の中でぐるぐると舞う。
「いや、あの、すみません。なんでもありません……。聞かなかったことにしてください。すみません。3階、着いたのでご案内します。」
どういうこと……?やっぱり私じゃ不釣り合いだよね……。そういうこと!?どうしよう、帰った方がいいかな。でも案内してくれるって言うし、華楓ちゃんに行くって言っちゃったし、せめて顔だけでも見よう。
「ここです。それでは。」
「あ、ありがとうございます!」
華楓ちゃんの妹は案内を終えるとすぐに下の階に戻っていってしまった。なんというか、不思議な人……?
とりあえずさっきの事は忘れよう!聞かなかったことにしてくださいって言ってたし、その通りにしようっと。よし。部屋ノックすればいいかな……?
コンコンコン
「華楓ちゃん?」
「あ……!来てくれたんですね……!どうぞ入って。」
「お邪魔しまーす。」
そう言って入った部屋は私の部屋の3倍くらい大きな部屋だった。うちのリビングくらいあるんじゃない?そんな大きな部屋にベッドとたくさんの本棚、机が置かれている。そして大きなピアノがズドンと置かれていた。豪華でシンプルな部屋ではあるけど、どことなく華楓ちゃんっぽい。
でもこの大きな部屋を見てしまうと、やっぱり私なんかと仲良くするべき人じゃないのかもって思っちゃうな……。あの言葉を聞いたあとだし……。
「こんにちは。」
「あ、やっほー!元気?大丈夫?」
「ちょっと熱があるだけ。大丈夫……。」
そう言う華楓ちゃんの額には、冷却シートが付けられている。顔も少し火照っているのか、少し赤いような気がした。とりあえず今は華楓ちゃんに元気になってもらうことに注力しよう。
「あ、これ。ノワが華楓ちゃんにって。」
「え、なんですか……?わぁ、小波さん優しいですね。多分明日には学校行けると思います。お礼伝えなきゃ……。」
「あ、明日には来れそうなんだ!よかったよかった。」
ガチャッ、と部屋の扉が開く。妹さんだ、と少し身構えてしまう。
「持ってきてもらった苺と林檎、持ってきた。」
「あ、ありがとうございます!」
「ありがとう苺胡(いちご)。」
「それじゃあ失礼します。」
ふぅ、と一息つく。やっぱりちょっと緊張しちゃうな。
「あの子は私の妹のいちごです。しっかりしてて優しいすごくいい子。」
「いちごさんって言うんだ!可愛い名前だね。ね、すごいしっかりしてる子だなって思った。じゃあ苺、食べる?」
「うん。あ、これ、買ってきてくれたんだよね。ありがとう。苺と林檎、好きって言ったから……?」
「うん!喜んでくれるといいなと思って。」
「ありがとう……。そんな、迷惑おかけします。」
「いいのいいの!病人は安静にしてなさい。」
「うん。」
いただきますと言って華楓ちゃんが苺を頬張る。
「美味しい……。」
「んふふ。良かった。」
「食べないの……?」
「え、あ、華楓ちゃんに持ってきたものだし、私はいいよ。あんまり長居するのも申し訳ないし、顔見れたし果物も渡せたからもう帰るね!お大事に〜!」
「え、あ、またね……?あ、ありがとう……!」
そう言って逃げるように豪邸から出ていってしまった。妹さんの言葉が心に刺さりっぱなしだ。『あんまり華楓と関わらないでもらえますか』、か……。
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