3日目②

「ここがコンビニ……!実は行ったことがなくて。家の近くにあることはあるんだけど。」

「そうなんだ!まあ、ちっちゃくて使いやすいスーパーみたいな?感じかな笑。ま、入ろ!」

「うん。」

コンビニに入ると軽快な入店音が鳴った。

その音に華楓ちゃんはビックリしていたみたいだけど、やっぱり初めて入るコンビニに興味津々といった感じだ。

「お菓子こっちだよ!」

「あ、うん。」

お菓子コーナーに入っていく。チョコとかスナック菓子とか、色々あるけど何にしよう?

「なんか好きなお菓子とかある?」

「好きなお菓子……。うーん。あ、このチョコレートは好きだったと思います……!小さい頃にお母さんがくれたのを覚えてて。懐かしい。」

そう指さしたチョコレートは、苺型のチョコレートだった。

「これ、美味しいよね。分かる。私はねー、そうだな。これにしよっかな!」

私が手に取ったのはじゃがいもをスティック状にしたお菓子。これも美味しくて学校帰りとかによく買って食べちゃうんだよね。

「それは食べたことない、かも。食べてみたいです……!」

「うん!半分こしよ!」

「ありがとう……!このチョコも半分こ。」

「うん!」

そう言って、にこにこしながらレジに向かった。ここのレジ、お金入れるのだけセルフレジなんだけど大丈夫かな……?

レジが空いたので私が先にお会計に行く。

隣で華楓ちゃんがお会計を始めたのが分かるけど、できるかな……?なんだか親のような気持ちになってくる。

華楓ちゃんはあわあわしていたけど、店員さんに促されてどうにかお会計を済ませられたみたい。よかった。

「買えたよ。自動の機械なんだね。あれも初めてでした……。」

「買えてよかった!じゃあ、カラオケ向かお!」

「うん……!」


最寄りのカラオケ屋はそんなに大きくは無い。

流石に平日だから部屋が埋まってるってことはないだろうけど……でも大丈夫かな。

「いらっしゃいませー!ご利用時間はお決まりでしょうか。」

「2時間で!」

「はい。学生証などお持ちでしょうか?」

「持ってます!あ、華楓ちゃんも。」

「あ、はい。」

学生証を出すと、学生料金で通してくれた。

「105のお部屋になります。ドリンクバーは無料ですのでご利用ください。」

「ありがとうございまーす!105だって、どこだ?」

「えーっと、あっち、かな。」

華楓ちゃんが指さしたところにはプレートがあった。

150〜180と書かれている。

確実に違う方向だ、と思って少し笑ってしまった。普段こういうところ来ないだろうし、道とか苦手なタイプなのかも。

「多分そっちじゃないかも。こっちじゃないかな!」

「あっ、本当です。こっちっぽい。私、あんまり外出することがないので道って得意じゃなくて。」

「そうなんだ。でも今は私がいるから安心だね!間違えないようにしなくちゃ。」

「えへへ、そうだね。安心です。」

「でもその前に!部屋に行く前にドリンクバーで飲み物とってっちゃお!」

「あ、はい……!」

ここのドリンクバーは割と種類が豊富だ。飲み物だけでなく、アイスバーもついている。

「わ、アイスまである。でもその前に飲み物を。わぁ、コーンスープなんてあるんですか……!?」

「あはは!そうそう。コーンスープもあるの。飲んでる人、あんまり見たことないけどね笑。」

「あ、そうなんですね。でも、飲んでみたいです。ちょっと寒いし。」

「カラオケはよく来るけど、私もコーンスープは飲んだことないな。確かにちょっと寒いし丁度いいかも。試しに飲んでみよっと!」

ドリンクバーの横に置いてあるコップを手に取り『 コーンスープ』のボタンを押す。ザーっと注がれていくコーンスープの匂いが甘くて美味しそうだ。

「美味しそうだね!」

「うん……!私もやってみます。」

華楓ちゃんもコーンスープを入れていた。押すだけで飲み物が出てくる機械に感動しているようにも見えた。

「美味しそうです。」

「うん!飲み物これだけじゃあれだし、メロンソーダでも持ってこー。」

「あ、じゃあ私も。烏龍茶……でもメロンソーダも飲んでみたいです、、。」

「じゃあ1口あげるよ!」

「え、いいんですか……!?」

「うん!烏龍茶持ってきな。」

「うん……!」

コーンスープ2つとメロンソーダ、そして烏龍茶を持って105の部屋に向かう。よく行ってるから見慣れている。華楓ちゃんはデンモクやマイク、テレビやその下にある機械など、色々なものを見ている。

「じゃあーはいっ!これマイク。とりあえずお菓子開けよーっと。」

「あ、チョコも開けます。これ、1つどうぞ……!」

「ありがと!じゃあこれもあげるね!」

そう言ってお菓子を交換する。苺チョコの甘い味が口いっぱいに広がった。

華楓ちゃんを見ると、予想どうり固まっていた。

「美味しい……!」

「でしょ?ここ置いとくから食べてね!」

「あ、ありがとう。私のも置いておくので食べてください。じゃあコーンスープ、飲みたい。」

「あっ!そうだった。冷めないうちに飲んじゃお!じゃあ……乾杯?笑」

「乾杯……?ふふふ。」

コーンスープを乾杯して1口飲む。思ったより滑らかかも。家で飲むコーンスープよりサラサラ。ドリンクバーのやつだからあんまり期待はしてなかったけど、思ったより美味しい。

「美味しい、です……!すごい、あの機械からこんなに美味しいものが出てくるなんて。」

「んね!思ったより美味しかったかも。また今度来たときも飲もっかな〜。っと、メロンソーダも飲む?」

華楓ちゃんがメロンソーダをじっと見ていたので、飲みたいんだろうなと思ってそう言うと、ぱあっと顔を輝かせた。華楓ちゃんって意外と分かりやすいよね。

「はい……!じゃあいただきます。」

ごくごくという音としゅわしゅわという音が調和する。いい音!いつも通り少し固まった後に華楓ちゃんは口を開く。

「わあ、美味しい……!しゅわしゅわってこんな感じなんですね。面白い。」

「確かにちょっと面白いよね。飲みたいとき飲んじゃっていいからね!っと、じゃあ曲入れる?なんか歌える曲ある?」

「あ、えっと……。この曲なら歌えると思います。あ、全然上手ではないので……。もしよければ、歌えるなら、一緒に歌ってほしい、です。」

「あはは!いいよいいよ。一緒に歌お!じゃあ送信っと。」

華楓ちゃんが選んだ曲は、ちょっと前にやっていた映画の主題歌だった。バンドの曲なんだけどそんなにバンド感がある訳でもなく、とっても綺麗な曲だ。

華楓ちゃんが息を吸う。そして歌い出す。私も一緒に歌う。

華楓ちゃんの声は、混じり気のない綺麗な声をしていた。不純物を全く含んでいないような真っ直ぐな声、そして震えながらも真っ直ぐな歌い方。もちろんたまに音程も外すし、歌手みたいかって言われたらそういう訳ではないんだけど、聴いていてとても心地の良い歌だった。

歌い終わって華楓ちゃんがふるふるしながら聞いてくる。

「大丈夫、でしたか?ちゃんと歌えてましたか?」

「うん!すっごい綺麗な声だね!感動しちゃった!」

「え、いや、そんな。私だって感動してたんですから……!真っ直ぐで力強くて、でも儚さもあって。素敵な歌声。」

「な、なんかそう言われると照れるなぁ。まあ、こんな調子でゆっくり歌ってこ!2時間もあるし。」

「うん……!」

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