3日目①

「あ!白丘さん昨日大丈夫だったん?なんか5限から早退したって言ってたからビックリしたわー!」

「え、あ。えと、大丈夫、です。」

「ほらほらノワ。白丘さんビックリしちゃうでしょ。でもほんとに大丈夫そうだね。よかったよかった。」

「あ、ありがとう、ございます。」

朝学校に行ったら、そんな光景が広がっていた。

ノワとフジコが華楓ちゃんと喋ってる!?

今まで関わりがないと思ってたからビックリだ。

「3人とも、おはよう、?」

「おーやっと来たか。今日もギリギリじゃん。」

「え?あ、うん?うん。おはよう?」

「あっははは!ビックリしちゃったかぁ。最近白丘さんと仲良くしてるって言うから、どんな子なのか気になって話しかけてみただけだよ。」

「でもノワがグイグイ行くから引いちゃって。」

「こらぁ!私の友だちに悪いことするんじゃなーい!」

「うわぁ!やめろ!くすぐるな!うわっはははは。」

「で、白丘さん、昨日は大丈夫だったの?」

華楓ちゃんはあわあわしてしまっている。

友だちが友だちと仲良くしようとしてるのは嬉しいけど、そりゃノワのこのテンションでこられたらビックリするよね。

「だ、いじょう、ぶ。」

「大丈夫そうだったよ!保健医の先生も大丈夫って言ってたし。お母さんが心配で迎えに来てくれたって感じだったよね。」

私がそうフォローするとこくこくとうなずいた。

「白丘さん、かわいい。」

フジコが華楓ちゃんの顔をまじまじと見ながらそんなことを言うもんだから、華楓ちゃんもどこを見ればいいのか分からないと言った感じで目を泳がせている。

「あっははは。本当にかわいいな。」

「はいはい、からかい過ぎないでね。」

「まーちょっとずつでもさ、仲良くしてくれると嬉しいわ!」

「うん。そうだね。あ、嫌だったらいいけど笑。」

華楓ちゃんがこくりとうなずく。

「がんばり、ます。」

「おお!ありがと!いつか遊び行こー!」

また華楓ちゃんはうなずく。けれどもその動作は、うなずいたのか下を向いたのか分からないくらい小さなものだった。

なんだか、いつもは割と普通に喋ってくれるようになったから、仲良くなる前の会話みたいでちょっと新鮮だ。壁がなく喋ってくれるのって私だけなのかもって思うと嬉しくなる。

そんな風ににこにこしていると、

「なにニヤついてるの?」

とフジコに言われてしまった。

「ん?なんでもない。」

なんか嬉しいだけだもんっ!

「あ、今日昼休み生徒会だ。華楓ちゃん、早くご飯食べて一緒に行こ!」

「あ、うん!」

上、下、上、と大きく頷きはにかむ。

黒くてふわふわの前髪から覗くその笑顔もふわふわとしていた。


昼休みになり、すぐにお弁当に取り掛かる。

お昼に委員会がある日は必ず1人でご飯を食べる。

だってみんなと食べたらどうしても話が弾んじゃうから。ほんとは一緒に食べたいけど!

今日のお弁当はのり弁だ。のりが蓋にくっついて取れない。急いでるのに!と思って、諦めて張り付いた海苔だけを取って食べる。

これじゃただの醤油弁当だ。

いつもより5分くらい早く食べ終わって華楓ちゃんの席を見る。私の席は廊下側から2列目の真ん中らへん。華楓ちゃんは廊下側一番端の1番前だから、最近は授業中もつい見てしまう。

華楓ちゃんはまだ食べ終わっていないみたい。ちょっと待ってよう。

華楓ちゃんは、よそ見をすることもなく黙々とお弁当を食べている。

少しすると箸をしまい、お弁当の箱を閉じて手を合わせた。食べ終わったみたい。

私は、華楓ちゃんが食べ終わったことを確認すると席を立って廊下側1番前の席へと向かう。

「食べ終わった?一緒に行こ!」

「うん。」

そうして私と華楓ちゃんは生徒会室に向かった。

今日は部長会資料作成の続きだ。1週間後にあるから早めに完成させなくては。

生徒会室に着くと、会長がいち早く来て作業をしていた。会長は女子にモテそうな短髪クール女子だ。

今日の昼休みは、会長と私と華楓ちゃんで2年の生徒会幹部メンバーが集まっている。

ちなみに私は会計。華楓ちゃんは書記。

会計は部活予算の確認、書記は資料の文章作成などをしている。

あと2、3日で完成するかな。頑張ろう!

思えば3日前は3人で黙々とやってたのに、今は「どんくらい進んだ?」とか、多少の会話が生まれるようになった。

仲良くなれてるって実感出来る。

「キーンコーンカーンコーン」

生徒会長と華楓ちゃんと私で、集中して作業をしていると予鈴が鳴った。

もうそんな時間!?はやっ!あともうちょっとでここ終わるのに〜!

「わー!チャイム鳴っちゃったー!」

「もう少しで終わりそう……?」

「あとこれだけ!30秒で終わる!」

「おしいね。頑張って……!」

「うん。あ、でも早くしないと授業遅れちゃう!次なんだったっけ?」

「次は、情報だったと思う。移動教室だね。」

「そうだったぁ!よし終わった!急ご!」

「うん……!」

「2人ともお疲れ!とりあえず今日の分は終わりだな。次の授業急げ!」

「はい!会長!授業急がなきゃだね!」

「分かりました。」

情報の授業は、チャイムと同時にコンピューター室に入ってギリギリセーフだった。


6時間目終わりのチャイムが鳴る。

終わったー!

これで華楓ちゃんとカラオケ行ける!楽しみ!

「華楓ちゃん!」

「は、はい……!」

「行こー!」

「うん。楽しみです。」

2人でカラオケまでの道を歩く。学校の最寄りにカラオケ屋さんがあるんだけど、そこはうちの学校の学生たちで混むから、私たちの家の最寄りのカラオケ屋さんにしようって話になった。

帰りにカラオケ屋さんの前を通るんだけど、見たらやっぱり学生でいっぱいだったから、家の最寄りにして正解だった。

それにしても空が暗い。朝見た天気予報では雨は降らないって言ってたけど、どうだろう。

しかも折りたたみ傘が2ヶ月前くらいに壊れちゃって、新しいのまだ買ってないから折りたたみ傘すらないんだよね。

傘持ってないから、雨降らないで……!

「暗いね、雨降りそう。傘持ってないよー!」

「そうだね。雨、降らないことを願います。あの、私、あんまり歌える歌がなくて……。すみません。私がカラオケに行きたいって言ったのに。」

「んーん!いいのいいの!カラオケって歌うだけの場所じゃないし!あそこのカラオケ持ち込みOKだから、コンビニでなんかお菓子買ってこ!」

「コンビニでお菓子……!そうしよう。」

コンビニでお菓子買うこともあんまり無いのかな?

色々なことに新鮮な反応をしてくれるからこっちまで楽しくなれる。

よーし!コンビニもカラオケも、楽しんでもらうぞー!

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