2日目②
「お弁当、どこにある?机の横?」
「あ、うん。そう。」
「りょーかい!取ってくるからちょっと待っててね!」
「うん。ありがとう。」
階段を出来るだけ早く上ったら、自分の教室に着いた時には息切れ寸前だった。そんな私にノワとフジコが話しかけてくる。
「おーい、大丈夫かー笑?」
「大丈夫でーすー!」
「というか白丘さんは大丈夫だったの?頭打ったって聞いたけど。」
「あ、うん!大丈夫そうだった。私は今から華楓ちゃんに、お昼を届けに行くのです!」
「おー、優しーじゃん。」
「それで、ごめんなんだけど、今日は華楓ちゃんと一緒にお昼休み食べようと思って!」
「そんなに白丘さんと仲良くなったんだ。全然いいよー。」
「うちも構わんよ。」
「ありがと!じゃあ行ってくる!」
「いてらー!」「行ってらっしゃーい。」
いい友を持った、としみじみ感じつつ、お弁当を取りに華楓ちゃんの机へ向かう。
机の上にはもう5限目の授業が準備されていて、その上に茶色いカバーが掛けられた本が置かれていた。
きっちりと左側に揃えられていたからきっと几帳面なんだろうな。
机の横にあるお弁当袋の中身を覗き、本当にお弁当が入っているかを確認する。
中身はちゃんとお弁当だったので、それと私のお弁当を持って慎重に、でも急いで保健室に向かった。
「お待たせ!」
「あ、ありがとうございます……!」
「持ってきたよ〜。はい!」
そう言ってお弁当を手渡す。
さっきは見る余裕がなくて見ていなかったが、お弁当袋はお寿司柄だった。
本当にお寿司好きなんだなぁと心の中で思っておく。
「ありがとう……!」
「じゃあ、いただきます!」
「いただきます。」
自分のお弁当も広げ、蓋を開けるといい匂いが広がる。さっきまで必死だったから忘れてたけど、お腹すいたぁ。
「そぼろだ!やったぁ!」
今日のお弁当は、昨日の余りのそぼろご飯だった。
お弁当にそぼろ入ってるの嬉しいんだよね。
「そぼろ、好きなんだ。」
「うん!」
箸でそぼろをつまみ口に入れる。箸だと食べにくいんだけど、おいしいからそんなことも忘れちゃう。
お弁当を味わって食べていると、ふと華楓ちゃんのお弁当が目に入った。
「華楓ちゃんのお弁当、すごい美味しそうだね!」
「すごく美味しいです。お母さんが料理上手で。」
華楓ちゃんのお弁当は、ご飯に煮物、お魚や野菜などがしっかり入っていて、恐らく全てお母さんの手作りだろう。家のお弁当みたいな冷凍食品は一つも入ってなさそうだ。
「ほんとにすごい凝ってるね。おいしそう。」
「あ、なにか一つ、食べますか?」
「え!いいの!?」
「もしよければ、ですが。」
「じゃあお言葉に甘えて一つだけ!どれならいい?」
「全然どれでも構わないです。」
「え!?ほんとにどれでもいいの!?じゃあねー、この煮物の里芋貰おうかな!」
「うん、どうぞ。」
「やったぁ!いただきます!」
華楓ちゃんのお弁当箱から、煮物の里芋を一つだけとって口へと運ぶ。
「美味しい〜!」
華楓ちゃんのお家の煮物は、売り物?ってくらい美味しくてビックリした。
お母さん、相当料理上手なんだろうな〜。
「美味しい!めちゃくちゃ美味しい!お店で出てくるやつみたいだよ!」
「そう、かな。お母さんに、言っておくね。」
「うん!めちゃくちゃ美味しかったです!って言っといて!」
「うん。」
「あ、私だけ貰いっぱなしなのもあれだし、私のもなんか一個いる?うちのは冷凍ばっかだけど笑。昨日の残りのピーマンの肉ずめくらいなら!美味しいはず!」
「え、いいんですか……?」
「うん!よければ是非!」
「じゃあ一つだけ、いただきます。」
華楓ちゃんが私のお弁当から口へとピーマンの肉ずめを運ぶ。多分華楓ちゃんちの料理には劣ると思うけど、でも私のお母さんだって、料理上手だし?多少は、大丈夫なはず!
「どう、かな?美味しい?」
華楓ちゃんにそう聞くが、答えは返ってこない。でも、顔を見れば答えはすぐに分かった。
「わっ。すみません美味しくて。固まってしまいました。」
「あははは。本当に面白い子だよね。」
「えっ。そ、そんなつもりは……。」
美味しくて固まっちゃうっていうのは昨日ので知ってたから、ピーマンの肉ずめ食べたあと固まっててちょっと嬉しくなっちゃった。
「ううん。本当に美味しいって思ってくれてるんだなって思って。」
「はい、美味しいです……!お母様にもお伝えください。」
「うん!きっと喜ぶよ。」
「あ、あと10分くらいでお昼休み終わっちゃいますね。急がないと。」
「あ!ほんとじゃん!急いで食べなきゃ。」
お昼休みって短いんだよねー。なんでこんなに短いんだろう。
まあ、これが授業の時間だったら長いんだろうけど。
ほんとに不思議。多分休み時間だけ時計が早く進むように出来てるんだよ。絶対そうだ!
「ごちそうさまでした!」
「わ、もう食べ終わったの?はやい……。あ、先に教室に戻っていて大丈夫ですよ。私は後から行くので。」
「いいよいいよ。ゆっくり食べな!それで一緒に教室まで行こ!」
「すみません。い、急ぎます。」
「あはは。ゆっくり食べなって。休み時間終わっても、授業始まりのチャイム鳴るまで五分あるし。間に合うよ。」
「はい。でも、できるだけ急ぎます。」
「うん。あ、今日は放課後用事あるんだよね。明日生徒会入りそうだけど、早く終わらせてカラオケ行こうね。」
口の中にご飯がいっぱいの華楓ちゃんがこくりと頷く。
「華楓ちゃんがどんなの歌うのか気になるな〜!楽しみにしてるね。私もなんか練習しとこうかな笑。」
また華楓ちゃんはこくりと頷く。
食べてるだろうから頷いてくれるだけで全然構わないというか、私がちょっかいかけてるだけだから全然いいんだけど、頷き方もなんだか楽しそうで嬉しい。
目を輝かせて勢いよく頷くんだもん。
友だちとしても嬉しいよね。楽しみにしてくれてるってことだろうし。
「食べ終わりました……!ごちそうさまでした。」
ごちそうさまでしたとほぼ同時に予鈴が鳴った。
「今から急げば間に合う!」
「は、はい……!あ、先生、ありがとうございました。もう大丈夫です。」
「あ、白丘さん。それなんだけどね、頭の方は大丈夫そうではあるんだけど、お母さんに連絡したら念の為帰ってくるようにって。お迎えに来てくれるみたいだからここで待っててね。」
「ああ、はい、そうなんですね。分かりました。」
「あ、あなたもありがとうね!お昼まで持ってきてくれて。」
「いいえ!全然!」
「そこでもう一つお願いなんだけど、白丘さんの荷物類持ってきてくれないかな?」
「はい!お任せ下さい!」
「ありがとう!担任の先生には私から伝えとくから安心してね。ただ、次の教科担当の先生に伝えに行く時間は無いから、この、白丘さんの早退届を授業担当の先生に渡しておいて。」
「分かりました!」
私は急いで教室に戻り、次の教科担当の先生に華楓ちゃんの早退届を渡した。
「あら、白丘さんは大丈夫なの?」
「はい!大丈夫そうではあるって保健医の先生が言ってました!でも親御さんが念のためってことで迎えに来るみたいです。」
「あら、そうなのね。授業ちょっと遅れても許すから、廊下は走らないで荷物届けてらっしゃい。」
「はい!ありがとうございます!」
先生に言われなければ廊下走ってるところだったな。
廊下は走らず、早歩きをして保健室に荷物を届けた。
「じゃあ、また明日!明日には治ってるといいね。」
「うん。お母さんが結構大袈裟なだけだから、大丈夫だとは思う。それではまた。授業頑張って、ね。」
「うん!ありがとう!」
華楓ちゃん大丈夫かな。ちゃんと治ってるといいけど。まあ、保健医の先生も大丈夫って言ってたし、きっと大丈夫!
明日のカラオケ楽しみだっ!
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