2日目①

「おはよう……。」

「華楓ちゃん!おはよう!」

一緒にカフェに行った次の日、華楓ちゃんは自分から挨拶をしてくれた。

今までは1人でずっと本を読んでいる子ってイメージだったし、誰かと話しているのすら見たことがないレベルだったのに、話しかけてくれるなんて……!

なんだか嬉しい。

でもそれは華楓ちゃんも一緒だったみたいで、ふわふわの黒髪の下で小さく微笑んでいた。

今日は用事があって遊びには行けないみたいだけど、お昼ご飯くらい誘っちゃおっかな!

いつも一緒に居るみんなとはいつでも一緒に食べれるしね。華楓ちゃんは1週間だけだから。

「2人とも、おはよう!」

「おはよう!も〜今日もギリッギリじゃん!」

「えへへ。だってお布団が離してくれなくって〜!」

「いやそれな?もうそろ12月だしな〜。この寒さで布団から出ろってのは無理だわ笑。うちもキツイ。」

「でしょ〜?」

今話してるのは小波夏乃葉(さざなみなのは)、あだ名はノワ。キラキラJK!みたいな子だけど、1年の時に1番最初に話しかけてくれたんだ。2年になった今でも仲良し!

「ねえねえ2人とも、明日の放課後暇?」

「え?うちはヒマだけど。」

「あー、私予定ある。ごめん!」

「おお、珍しいね。彼氏とか?もしかして抜けがけー?」

もう1人は目黒富(めぐろふじ)、あだ名はフジコ。おっとりしてるけど所々鋭い子。今年席が前後になって仲良くなったんだ。

「残念ながら違いますー!うちのクラスの白丘華楓ちゃん、いるでしょ?昨日仲良くなったの。それで、明日遊び行こうねって約束してるんだ!」

「ええ!白丘さん!?超意外。」

「それは意外。でも生徒会で一緒とかじゃなかった?」

「そうそう。それで、昨日一緒にカフェ行ったの。楽しかったし、めっちゃいい子だし、かわいい。」

「えー!なんかズルい〜。うちも白丘さんと仲良くなってみたい〜!なんか、どんな子なのかめっちゃ気になる!」

「いや〜、それがね〜」

キーンコーンカーンコーン

「あ、やべ担任来る。戻りな戻りな。」

「あとでまた聞かせてね〜。」

「うん!」

実は1週間の友だちなんだって言おうと思ったけど、チャイムに遮られちゃった。

まあ、それどういうこと!?って突っ込まれるのは目に見えてるし、言わない方がいいこともあるのかも?

華楓ちゃんも言われたくないとかあるかもだし。

今まで話したことで、話して欲しくないやつとかあったかな……!?大丈夫だったかな!?

そんなことを思って華楓ちゃんの方をチラッと見てみると、彼女も私のことを見ていた。

華楓ちゃんは、はっ!とした表情になって下を向いてしまった。かわいいなぁ笑。

話聞かれてたかな。別にやましい話してた訳じゃないからいいんだけどね。

下を向いてしまった華楓ちゃんを見て、明日のカラオケ楽しみだなぁと思った。


4時間目、体育でバスケをした。

私は運動神経が悪い訳ではなく、でもトップクラスにいい訳でもなく、そこそこにできるくらいの位置にいる。

ノワは運動神経がいいから、ああやってカッコよくできたらなぁって、補欠でコート内を見ているときに思う。

そういえば華楓ちゃんは見学みたいだ。思えば見学していることの方が多い気がする。

たまーに参加してるのは見たことあるけど、体力テストでボール投げが3メートルだったのは記録係をしていたから知ってる。

わたわたしながらバスケしてる華楓ちゃんも、ちょっと見てみたいけど。

「あ!危ない!」

「キャー!」

ドン、ドン、ドン、とボールが跳ねる音が隣のコートから聞こえる。

ボーッとノワとフジコのこと見てたから、別コートのことは全く見えていなかった。私が見ていたコートの人たちも、なんだなんだと試合を中断して別コートの様子を伺っている。

「白丘さん、大丈夫!?」

そんな声が聞こえてきて、咄嗟に立ち上がる。

「華楓ちゃん!?」

あとから聞けば、隣のコートで試合をやっていたらボールが飛んでいってしまい、華楓ちゃんの頭に当たったんだとか……。

「あ、えと。大丈夫、です。ありがとうございます。ほ、保健室に、行ってきます。」

華楓ちゃんは逃げるように保健室に向かおうとしたが、頭をぶつけた子をひとりで行かせるのは流石に危なすぎる。

「あ、私、付いてくよ!いま補欠で試合出てないし!華楓ちゃん、大丈夫?」

「え、あ、大丈夫。そんな、悪い、よ。」

「大丈夫ならよかった。いいから行くよ!」

華楓ちゃんの手を引いて保健室へ向かう。

「本当に平気?頭痛くない?変な感じとかしない?」

「ちょっと痛いけど、そんなにじゃないよ。ありがとう。さっきは、たくさんの人に、囲まれちゃって。戸惑ってただけ。ごめんなさい、こんなので。」

「あ、そういうことだったのね。よかったぁ。なんか顔赤いし、口も回ってないのかなって思って。打ちどころ悪かったかなとか思っちゃったよ〜!」

「人前苦手で……。」

「あはは。そうだよね。ごめんごめん。別に責めてるわけじゃなくて。心配してただけだから。」

「あ、ありがとう。」

保健室につくと、保健医の先生が対処をしてくれた。

安静にしていれば問題はないけど、昼休み中は様子を見ておくようにとのこと。よかったぁ。

「あ、あの。ありがとうございました。もう4限も終わってしまって、授業にも最後まで参加できなくて、申し訳ないです。」

「大丈夫大丈夫。先生も分かってくれてるし、なんなら感謝されたくらいだから。体育科のうちの担任、大袈裟だからさぁ、白丘は無事か!?大丈夫か!?とか言ってんの笑。大丈夫ですって言っといたよ。」

「本当に、ありがとう。」

「いーえ!あ、そうだ!もうお昼休みだしお腹空いたよね。華楓ちゃんはお弁当?学食?」

「お弁当。」

「じゃあ取ってくるよ!一緒に食べよ!」

「え、いいんですか……?小波さんや目黒さんは?」

「あの2人は大丈夫!私が華楓ちゃんと一緒に食べたいの!」

「じゃあ、一緒にお昼、食べよう。」

「うん!」

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