1日目②
キャラメルラテとスコーンを食べながら話をしていると、コップもお皿も、もう底が見えてきた。
華楓ちゃんがキャラメルラテを一口飲む。
コップから口を離すと、飲み物の上に浮いていたふわふわの泡が口についた。かわいい。
「んふふ。ねえ、ひげついてるよ。」
「え……!?ひげ、?」
「口のとこ。ラテの上にあった泡がついてる。」
そういうと口を紙ナプキンで拭った。
「わっ!恥ずかしい……。教えてくれて、ありがとう。」
「いーえ!」
結構おっちょこちょいな子なのかも?
そう思いつつ、私もひげができないようにキャラメルラテを飲みきる。スコーンも最後の一口を口に入れて噛み締めた。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした。」
甘くて美味しいキャラメルラテとスコーンを完食し、席を立った。
お腹も心もいっぱいだ。
お店を出て少し歩くと、華楓ちゃんが
「あれ……!」
と言って立ち止まった。なんだろうと思って見てみると、彼女の目の先にはガチャガチャがあった。
「ガチャガチャ?やる?」
「やりたい……!」
ガチャガチャ、小さい頃よくやったなぁ。今も見るとちょっとワクワクするんだよね。
のびるおじさん人形とか、野菜を切った時の音が鳴るキーホルダーとか、謎ガチャを見るのが楽しかったりするんだよね。
「わあ、かわいい。」
「あ、その猫のやつかわいいね!」
猫のかわいい小さなフィギアだ。猫好きなのかな?
「猫、好きなんです。」
「私も好き!でも犬派かなぁ。猫ももちろん好きだけどね!どっちもかわいいもん。」
「そうですよね。猫派か犬派かなんて決められない。犬猫派です。」
「それな?どっちもかわいいよね。」
そんな会話をしながらガチャガチャコーナーを歩いて行く。そうしていると、彼女が急に立ち止まった。
「これ!やりたい……!やります!」
と言って100円玉を入れたガチャガチャは、『お寿司さん』というガチャガチャだった。
お寿司に足と手が生えていて、変なポーズをとっている。顔も地味にいかつくてシュールだ。
こういうの好きなんだ。なんか意外。
「この炙りサーモンが欲しい……!出ますように!」
華楓ちゃんが欲しいと言っている炙りサーモンは、戦隊モノのシャキーンみたいなポーズをしていた。
なんか、私も欲しくなってくるな、なんて笑
華楓ちゃんが100円玉を2枚入れてガチャガチャを回す。
ガチャガチャッと音を立てて中身が回り、カプセルが出てきた。何が入ってるかな。炙りサーモンかな?
華楓ちゃんがカプセルを開けると、そこにあったのはマグロがグリコみたいなポーズをしているフィギアだった。
「マグロ……。」
「マグロだったね。なんか面白そうだし、私もやろっかな!」
そう言って財布を取り出す。100円玉2枚もあったっけな。あ、あった。
炙りサーモン、出ろ!と思いながら100円玉を2枚入れ、ガチャガチャを回す。
カプセルが出てきた。透明なカプセルだからなんとなく見えるけど、炙りサーモンな気がする!
「ねえ、見て!」
「わぁ!炙りサーモン……!!」
カプセルを開けると、シャキーンのポーズをした炙りサーモンが出てきた。
「これ、あげるよ。」
「え、いいんですか……?」
「うん!炙りサーモン欲しかったんでしょ?」
「うん。じゃあもらいたいです。その代わりに、これ、もらってほしいな。」
華楓ちゃんがそう言って差し出したのはグリコのポーズをしているマグロだった。
「あはは!私お寿司の中でマグロが1番好きなんだよね〜。嬉しい!ありがと!」
「いいえ。私の方こそ、炙りサーモン、大好きなので嬉しいです。ありがとう。」
炙りサーモン好きなんだ。今度お寿司屋さんにでも一緒に行きたいな。でも行けるのは1週間以内か……。
「あの、また明日も、どこか行きたい、な。あ、でも明日はダメな日だ。じゃあ明後日……!またどこか一緒に行ってくれる……?」
「うん!もちろんだよ!じゃあ今日のところはこれで帰ろっか。もう6時過ぎてるしね。」
「うん。」
「お家ってどの辺なの?」
「あ、えっと、坂水駅の近く。」
「え!?そうだったの!?私も坂水だよ!最寄り一緒じゃん!一緒に帰ろっ。」
「わっ……!そうなんだ……!一緒に帰ろう。」
最寄り駅が一緒だったなんて……!知らなかった!
もしかして家近かったりするのかな。
近かったら嬉しいな。
「坂水からどのくらい?」
「えっと、東口から歩いて5分くらい。」
「おお!結構近いかも。私は西口から歩いて10分くらい。小中学区隣とかじゃない?坂水東中とか?」
「あ、いえ。小学校中学校は私立だったので、地元じゃないんです。」
「あ、そうなんだ。」
中学が私立だったのに、公立のうちの学校来たんだ。なんかあったのかな、とか思っちゃうけど、今楽しそうにしてくれてるからいいや!
「あ!電車、あとちょっとで来るって!急げ!走れる?」
「あ、うん。」
もう電車来てるじゃん!やばい!間に合えぇええ。
「2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。」
「はあ、はあ。間に合ったー!大丈夫?」
「はあ、はあ、大丈夫。間に合ってよかった。」
「うん!」
「あ、あの、明後日も付き合ってくれるん、だよね。」
「うん!どこ行こっか。どっか行きたいとことかある?」
「えっと、カラオケっていう場所に行ってみたくて……。」
「カラオケ!いいね、行こ行こ!」
華楓ちゃんとカラオケかぁ。どんな歌歌うんだろう?どんな声で歌うんだろう?
ちょっとワクワクしてくる。
そして、行ってみたいって言い方からしてきっと行ったことがないんだろうな。
楽しんでくれるといいけど!
「本当……?やった。じゃあ、約束です。」
「うん。約束!楽しみだなぁ。」
「私も、楽しみ。」
そんな会話をしつつ電車に揺られていると、坂水駅に着いた。
「坂水駅〜坂水駅〜。お出口は右側です。」
そのアナウンスを聞き、電車から降りる。
華楓ちゃんもいつもここを通ってたのか〜と思うと、なんか親近感が湧く。
「東口だよね。わたし西口だからここでかな!」
「あ、そうだね。じゃあ、今日はありがとう。1週間、よろしくお願いします。」
華楓ちゃんはそう言って頭を下げた。
そう言われて思い出したけど、1週間の付き合いなんだった。急になんかちょっと寂しくなる。
「そんな頭下げなくてもいいのに〜!あはは。こちらこそありがとう!楽しかった。1週間よろしくね!またね!」
「はい……!また明日。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます