調査員のメール
20**/**/23
21:46:34
TO:T県派遣隊 隊長付〇〇班長
from:酒頭悦郎
夜遅いが、残業してるだろーな。
帰ってんじゃねえぞ。
俺はまだ仕事だぞ。このやろ。
紛れもなく怪異だったよ。
例の警官、ヤバかった。
早いとこ監置が終わったら記憶処理した方がいい。あれじゃホントに気の毒だ。
一応、支局長に報告ワンペあげれるくらいに、ベタ打ちで概要書いた。
見といてくれ。てか、早めに報告上げてくれ。
サボり魔の俺がワンペを書くくらいだ。
できることなら、早いとこ「封じ込め」をやった方がいい。
コイツは胸糞が悪い。
ーーーーーーー
T県下における局地的怪異
通称「思い出の家」
について
概要
T県Y市K町の山林に位置する。
M邸は、周囲を山林に囲まれている。
M邸の半径1キロメートル以内に特定の人物が進入することで、その人物は曝露者となる。
特定の人物
かつて自身が懇意にしていたが死別してしまい、その死や別れについて自責の念を抱えている人物に限られる。
曝露者は、山林からM邸に向け、その懇意にしていた人物(幻覚?)から誘導される。
M邸に到着した際、曝露者は家の中で懇意にしていた人物と再会する。
その実体は、再会を喜び、曝露者のトラウマや無念を晴らすかのように語りかける。
曝露者には一種の精神作用が働いており、現実離れした現状を受け入れ、懇意にしていた人物から離れようとしなくなる。
最終的には
「この家から出ると、失った人物は二度と助からなくなる」といった妄執に取り憑かれてしまう。
家からの退出を断固拒否するようになる。
被害状況
付近一帯で発生している失踪事件の被害者をリスト化し、過去を確認したところ、いずれも子や孫、教え子、配偶者との死別を経験しているものであった。
このM邸が関係している可能性は高い
確保済み生還者
〇警察への通報者…これは、通報者が「手招きする少女がいたが、よく見えなかった。」という状況で、かつ「確認しに家に入りたかったが、車椅子なのでポーチに上がれなかった」と述べている。
家に入らなかったのが生還した要因であると見られる。
彼には、曝露後に何らかの異常、反応は出ていない。
精神作用が及ぶ前に、失われた人間が現出することを示唆している。
〇機動隊員…連れ出された。その後、自責の念が強くなり、妹を助けられなかったのは、機動隊のせいだとパニックを起こすようになった。
酒頭がインタビューで確認済
端緒
T県警からの情報提供と、機動隊員のカウンセリング依頼
ーーーーーーーー
というわけで、もし退庁してなければ頼んます。
俺はこのメールの送信ボタンを押したら、飯でも食いに行く。
緊急ならTELくれ。
酔い潰れてなきゃ出るよ。
酒頭
思い出の家 差掛篤 @sasikake
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