20話 私は私を
怪物が現れた場所の調査および、魔法少女の証言をまとめた書類を見ながらの情報収集は、淡々と行われた。
返納列車の車両の前から数えて3番目の車両で、記録係の3人と魔法界の北海道担当者の男性は書類を見ながら意見を交わす。
『魔法界の魔法少女を急遽増員し____』
『これは緊急事態として報告してですね____』
そんな緊張感あふれる会話をしている隣の車両に、返納列車の3人と空と名乗った人間の魔法少女はいた。
「うわっ! また負けたー! 空ちゃん格ゲー上手すぎ!」
「っしゃあ! 掴み技さえ決まればこういうの簡単なんだよ」
ゲンと空は、20年ほど前に発売された格闘ゲームで遊んでいる。それを少し離れたところで、追加の茶菓子と飲み物を用意しながら、カワタレとくれなは聞いていた。
「あれ何回目だよ。ゲンに懐きまくってるな」
「ゲンさん、面倒見がいいですからね」
「しかし、あの空って子の素があぁでよかったよ」
空は最初の、俗にいうお嬢様口調から砕けた口調になっている。なんでわざわざ口調なんか変えたんだとカワタレが聞いたところ「魔法界の人に舐められないように」だそうだ。発想がまるでひと昔前の不良のようだ。
「あの『わたくし』アンド『ですわ!』口調で話し続けられてたら、忌々しいあのクラロイドの顔がちらついて集中できなかった。あいつがこの世に2人もいたら気が狂う」
「私もカワタレさんが、いつ魔法を空さんに放つか集中できませんでした……」
そんなことしないって、なんて言いながらふたりはコップと菓子盆がのったおぼんを運ぶ。
「あ、ふたりともありがとう。あのさー、くれながおすすめしてくれたこの芋のお菓子、美味いね」
「ほんと? 空さんがよければ、もっとたくさん食べてね」
くれなはにこにこと、空に飲み物を渡した。妹がいたらこんな感じだろうか、と思ったことは内緒だ。
聡子のときとは異なり、空はくれなのことを怖がる様子はない。
『おねーさん、変わった魔力してるね。私、子供の頃から家に魔法界の人がいっぱい来てて魔力に慣れてるから、そういうのすぐ分かるんだ。なんか、びりびりする感じ』
くれなが自己紹介したときに、空はなんてことのない口調で言った。
『こ、怖くない? 私のこと』
『ううん。むしろ強そーって感じで、かっこいいと思うよ』
くれなはまばたきを2回して、安堵したように「ありがとう」と花が咲くような微笑みを零す。その表情を見てカワタレも嬉しそうに「この子にいいお菓子出そう」と呟いた。
くれなは知らないことだが、カワタレはとても安心した。聡子のお迎えをしたとき、くれなの魔力の影響について甘く見ていた所為で、彼女を傷つけてしまった。本当は今日も少し不安だった。人間の対応はすべてカワタレが自分ですべて行う気でいた。
でも空は目の前で、「くれなって呼んでいい?」とくれなに手を差し伸べている。それが、自分のことのように嬉しかった。だから、苦手意識なんてものは感謝の念に上書きされてもうそこにはない。
カワタレはおぼんを置いて、空の頭を撫でる。
「第一印象はどうなることかと思ったけど、どこぞの高飛車女と違ってちゃんとお礼が言える子でよかった」
「わ、カワタレ、頭ぐしゃぐしゃにすんなし!」
「オラオラ、もっとぐしゃぐしゃにしてやるー」
軽やかな笑い声とともにふざけ合うふたりを、くれなはあたたかい目で見守る。
「ねーくれなも格ゲーやろ! それかパーティ系のやつやる? ゲンがさっき持ってきた中にあったよね」
乱れた頭のまま、空は床に散らばるゲームソフトをがさがさと漁る。
「おい空、その前にカワタレ様ともう一戦やるぞ。次こそ負けない」
「えー、カワタレすぐ突進してくるから分かりやすいんだもん」
「あはは! カワタレほんっと格ゲー弱いもんね。俺にすら勝てないのに空ちゃんに勝てるのかね?」
「勝てるのかね?」
「お前らうるさい! 次こそ勝つに決まってるんだが!?」
かくして、またゲーム大会が始まる。くれなはゲームをほぼやったことがないに等しいので見学だが、わくわくと楽しそうにレトロなテレビの画面を見る。
「空はゲーム詳しいな」
「うん。私のお父さんがこういうの大好きなんだよ。うちの家は自分で言うことじゃないけど、魔法界にスカウトをたくさんうけてきた人が多くて、子供も必ず魔法少女になるし、しかも金持ちなんだけどさ」
「ほんとに自分で言うことじゃないな」
「お父さんが自由な人だからそんな厳しくないんだよね。家訓は『自由に、したたかに』なんだ」
へー、と一同が声を上げる。
カワタレは口には出さないが、珍しいな、と感想を抱く。代々魔法界にスカウトを受けたり、代々魔法少女に子供がなったりする家は、大抵敷居が高いというか、名家としてのプライドが高い家が多い。
空の名字は羽根野。羽根野家といえば、聡子の実家、日立海家と並ぶ名家だ。でも確か、今の当主である空の父は、当主にしては珍しく婿養子だった記憶がある。空の父の実家は羽根野家よりも何倍も大きな、有名な「
ゲームのキャラ選択画面で、空が小さく、口を開いた。
「あのさ、あの薄い茶色の髪の人、名前なんていうの?」
おずおずと、どこか慎重な声だった。薄い茶色の髪の持ち主は、今この列車にいる者の中には雅しかいない。
「雅さんだよ」
くれなが答える。
「苗字は?」
「さぁ? 考えたこともなかったな。魔法界の者は苗字なくなったし、本人も名乗ったことない」
カワタレの言葉に、空は小さく「ふーん」とコントローラを操作しながら呟く。
「あの人、そっくりなんだよね。うちにある家宝の肖像画の女の人に」
*
____いつか弟をこの家から逃がして、私があいつらに死にたくなるほどの復讐をしてやる。
時はさかのぼり昭和の時代、鳳凰堂雅は由緒正しい家に、長女として生まれた。
『女は外で魔法少女になり、家では男に尽くせ』
それが父の口癖。雅の体はひとつしかないのに、男の役目も女の役目も行うようきつく言う男。思い通りにいかないことがあると無関係の雅を殴るくせに、自分はいつも自室で新聞を読むか、関係者との飲み会に行くだけ。
『魔法少女だからって見た目も行動も女らしくしちゃだめよ。あんたは不細工でそんなもの意味ないんだから。もっと堂々と。魔法少女は戦士なんだから、長女として勇ましくいなさい』
それが母の口癖。自分はもう魔法少女になれないから、まるで自分の人生の2回目を行うように、雅にあれこれ文句をつけてくる。少しでも女らしいこと、たとえば料理や化粧をするだけでひどく怒鳴る。しかし雅を陰で「もっと容姿のいい娘がほしかったわね。息子にも娘にもなれないできそこないが」と嗤う。
子供の頃から、魔法少女になった高校生の頃までずっと、自分が何なのかわからないと悩む日々が当たり前のように続く。表面上では笑顔で接しながら心を押し殺して、毎日夜に泣いていた。自分がバラバラになっていく感覚。女らしくするな、女らしくしろ、毎日交互に言われていく。
そんな中で、人としての感情を失わないでいることができたのは、小さな光があったから。
『姉さま、僕この前、学校で友達に姉さまのことを褒められたんですよ! かっこいいお姉さんだねって! えへへ、僕も自分のことのように鼻が高いです!』
可愛い可愛い小学生の弟、大地。この子さえいれば何もいらないと、ずっと思っていた。
大地は父にも母にも愛されていた。彼は生まれながらに魔力が高く、しかも聡明で容姿も端麗。両親にも魔法界関係者にも、将来は魔法界の官僚だ、なんて言われるほどだった。
『魔法少女のときの姉さまは、女神様みたいです。普段も綺麗だけど、魔法少女のときはもっと!』
『ふふ。魔法少女になると、自動で化粧が施されるんだよ。でも、ありがとう』
それ故に、雅と大地は隠れて交流を深めた。隠れて仲良くしていたのは雅の意志だった。表立って仲が良いところを見せると、大地まで両親に軽んじられてしまうのではないか、と不安だった。
一緒に遊ぶ時間は少なかった。でも互いの学校や雅の魔法少女の任務の合間に、ふたりは屋敷でかくれんぼをして、一緒にアニメを見て、たまに大地の友達を交えて野球をした。ただただ楽しくて、そのときだけは全てを忘れることができた。
だが、そんな時間も徐々に失われていくほど、鳳凰堂家は後ろ暗いことに溢れていく。
最初は父の愛人の子について。父の愛人を名乗る女が鳳凰堂家の屋敷にやってきた。それも、大地と同じ年頃の男の子を連れて。
『素晴らしい! この子は100年に一度とでも言うべき位の、魔法の才がある!』
愛人の子は大地以上に、優秀な子だった。ただそれだけのことで、家の敷地に愛人とその子供が住む別邸ができた。そこからその子を次期当主とする話がでたのは、すぐのことだ。当然、母は怒り狂った。逃げるように父は愛人と愛人の子の住む別邸に入り浸った。
母の怒りの矛先は、雅と大地に向いた。ある日、高校から帰ってくると、母が庭で何かを燃やしていた。燃えていたのは、雅と大地の教科書や、ふたりが友達と撮った写真、ふたりでこっそりと貸し借りした、おこづかいで買った漫画。
『お前らができそこないだからこんなことになったんだ! もう屋敷は出るな! ひたすらこの家の為に尽くせ!』
毎日のように怒鳴られ、殴られ、物を投げられる。雅は、もう母は、今まで見てきたどんな怪物より恐ろしい生き物になってしまったと絶望した。
雅は魔法少女の任務のとき以外は、外に出ることを禁じられた。任務のときも監視が付いたが、同じチームの友達に会うことができた雅はまだ良い方だ。大地は家庭教師以外の誰とも会うことができなくなった。母が雇った家庭教師の女は、気に入らないことがあるとすぐに大地を殴った。母もそれを許容していた。
それを、雅と親しくしていた使用人たちが、雅に泣きながら話してくれた。
『雅様、私たちも解雇されてしまいました。あなた様の味方でありたかったのに、申し訳ございません。どうか、この家から大地様と一緒に解放されることを、何もできない弱者の分際で願っております……』
雅は、覚悟を決めた。この家の全てに復讐する覚悟だ。
____いつか弟をこの家から逃がして、私があいつらに死にたくなるほどの復讐をしてやる。
絶望は怒りに変わり、覚悟になった。
そして来たる日、魔法少女の任務帰りに、変身したまま大地を迎えに行った。いつもは監視がついて、任務帰りも大地に会うことは禁じられていた。けれど、事情を知ったチームメイトが魔法界の担当者に話をつけて、己の姿を透明にする魔法のローブを2つ貸してくれた。
雅は何もしていなかったわけじゃない。日頃から優しくしてくれる魔法界の担当者と、大切なチームメイトが協力してくれて、魔法界で暮らす手はずは整った。
だけど、何もしていなかったわけじゃないのは、
父は先手を打ち、大地の部屋に魔力を感知したら発動する罠を仕掛けていた。それも、大量の魔法の刃物が侵入者に襲い掛かる強力な罠を。
雅は大地を庇い、重傷を負う。血まみれになりながらも、雅は大地を抱えて走り出した。たくさんの父と母の手先が追いかけてくる。それでも。
『姉さま、怖い……!』
『大丈夫。姉さまが大地を自由にする……!』
雅は大地の手を引きながら、広い屋敷の、この牢獄の出口に向かって走った。
あともう少しで出口をくぐるところだった。、バン! と乾いた音が鳴った。大地が追っ手のひとりに、銃で撃たれた。倒れる大地を雅は必死に抱える。慌てて傷を治そうとポーションを飲ませても、傷は治らない。当時は魔法界の魔法少女ではなかったので、傷を癒す魔法も使えなかった。
『大地、大地……! 大丈夫だからね……!』
雅はひたすら止血しながら、弟の名を呼んだ。雅の体も刃物が複数刺さっていて、姉弟の血がどくどくと混ざりあって止まらない。雅は大地を抱えて走る。走ろうとしても、魔法少女でもない人間の追っ手が追い付くことができるほどに、遅い速度でしか進めない。
『能無しの馬鹿息子と馬鹿娘が! ここで死ね!』
父の怒声と、襲い掛かってくる追っ手ども。雅も大地も深手を負っている。逃げ切ることはもう、不可能に近い。ついに雅は、足を止めた。
もう父には愛も情も残っていない。自分たちを殺そうとしているのだと分かって、唇を噛む。止まらない大地の血に、泣きそうになる。
雅は黒い沼に足元から沈んだような気がした。こんなのあんまりだ。自分はまだしも、どうして大地がこんな目に。
『たす、けて、姉さま』
ぶちり、と雅の中で何かが千切れるような音を立てた。
大地のか細い声が、雅の中の引き金を引いた。
ゆらりと地に弟を寝かせて立ち上がり、雅は鬼の形相で振り返る。
『____どうせ地獄に行くのなら、道連れに、ここを地獄に染めてやろうか』
魔法少女が一般の、普通の人間に力を振るうことはご法度である。与えられた魔法の力は、正義の為に使う。雅が子供の頃から教えられてきた常識。
そんな常識も正義も罪も、全て怒りに塗りつぶされた。
気が付くと、敵どもの血だまりの中で雅は立っていた。彼女の白とピンクのフレアドレスは、赤黒い返り血で全身が染まっていた。
雅は大地を抱え、最後の力を振り絞って、全力で駆けだした。魔法界の担当者と待ち合わせしていた場所へ。
そして魔法界の担当者に全てを話した。自分は罪を犯したから魔法界の機関に出頭する。裁きはいくらでも受ける。その代わりに、弟だけは助けてほしい、と。血を吐きながら伝えた。
雅は魔法界の罪人として逮捕された。後悔はなかった。聞くところによると、大地は一命をとりとめたそうだ。半殺しにした憎き追っ手の山も、永劫に許さない父も助かって、奇跡的に死者はいないらしい。大地が助かったことは当然よかったと安堵したが、そのほかの者たちも助かったのは雅にとって奇跡でも何でもなかった。大地以外全員死ねばよかったのに、と、魔法少女として落第点の感情を抱いていた。
けれど、雅が裁かれることはなかった。雅の家の哀しい事情を、チームメイトと魔法界の担当者が事細かに伝え、減刑をするべきだと何度も訴えたことで、情状酌量の余地があると判断された。
当時、魔法界の騎士団で部隊長をしていたクラロイドに、雅は監視されて生活することになった。
『雅さん、弟さんの平穏を願うなら、わたくしを利用してみない? わたくしが貴方を鍛えて、強い魔法少女にしてあげる。そうすれば、才のある貴重な魔法少女を虐げたとして、未だしぶとく生き残る実家に、恥をかかせることができるのではなくって?』
クラロイドに対しての第一印象は、変な女、だった。だがふたりで生活していくと、クラロイドの努力家なところにどこか救われていく自分に気づく。時に厳しく、でもその何倍も優しい、彼女に。
クラロイドも親に虐待されていた。サニーに拾われて我が子のように育てられるまでは、苦しい思いをしてきたそうだ。だから、雅のことを放っておけないと、監視役を買って出た。
クラロイドは好きなことを一緒に、目いっぱいさせてくれた。料理も、おしゃれも、街で遊ぶことも。女だからやるんじゃない、女だからやれと言われ続けたたことを、クラロイドは「そんなの関係ありませんことよ!」と跳ね除けて一緒にやってくれたし、やらない選択肢をくれた。姉がいたらこんな感じなんだろうか、と思うことが何度もあった。
人としての感情を取り戻していく感覚を身にしみて感じていた。笑顔も増えた。でも、大地には会わなかった。大地は人間界で幸せに暮らしていると聞いた。でも、会わなかった。会えなかった、というべきほどに。
雅はどうしても、大地のことを思い出したり、大地と同じくらいの年頃の男の子を見たりすると、頭が痛くなって動けなくなった。それだけではない。魔法界の映画や劇で銃が出てくると、大地が撃たれた時を思い出して息ができなくなった。風船が割れる音が銃声に聞こえて、道の真ん中でうずくまったこともあった。
あれだけ大事に思っていた弟のことを思い出すだけで、こんなに苦しくなってしまうなんて。大地と笑いあったささやかな春の日さえ、思い出すだけで申し訳なさと得体のしれない恐怖で涙が止まらなくなる。思い出したくない記憶の中に、最愛の弟の姿があることが雅をひどく苦しめた。
数年後、雅が釈放されると、クラロイドは就職先を紹介してくれた。
『わたくしがお世話になった家の娘さんが、大学の受験に落ちてしまって、何年もひきこもってるそうなの。家庭教師、してみない?』
その娘が、ルナだった。
最初はなんて贅沢な子なんだろうと思った。大きな屋敷に、何不自由ない暮らし。何よりも、優しい官僚の父母と魔法界の新進気鋭の音楽家で、ルナを溺愛する兄。雅が喉から手が出るほど欲しかった、優しい家族がそこにいた。
彼女も好きでひきこもりをしているわけではないと知ったのは、数ヶ月後、ようやくルナが雅に慣れてきた頃だった。
『ルナって名前は、サニー様に名付けてもらったの。あのお方が、『いつか自分を支えてくれる友人になってほしいから』って、お母さんが言ってた。でも、そんな期待に応えられなかった。なのにお母さんもお父さんもお兄ちゃんも、みんな優しいから、自分だけが薄汚くて醜い生き物に思えて仕方がない。毎日夢を見るの。大学の不合格通知の封を開ける夢』
彼女は自分を醜いものだと思っていた。愛に溢れているからこそ、自分の不甲斐なさに潰れそうになっていた。
愛は万病に効く薬ではない。愛ゆえに苦しむことだってある。雅が大地を想うがあまり、苦しくて仕方がないように。
そこからは、できることをひとつずつやっていく、というクラロイドが雅に与えてくれた温かい体験を、今度は雅がルナに与えたいと行動を始めた。ルナを贅沢者だと思う気持ちは、自然と消えていった。
彼女が望まないとき以外は、ルナと一緒に過ごすようになった。まずはお菓子作り、軽い運動、ルナが好きな小説を読むこと。少しでも「自分は醜い存在じゃない」と思うことができる体験を、ゆっくり、ゆっくり重ねていく。
やがてルナは、外に目を向けるようになった。
『僕、魔法少女になる。それで、働きながら児童文学作家を目指したい』
『働きながらは大変じゃない? ルナ、無理はしないで。何度も言うけど旦那様も奥様もお兄様も、もちろん私も、ルナの思うがままにしてほしいって、思ってるのよ』
『だからだよ。僕は今2つ夢があるから、もたもたしてらんないんだ』
『夢?』
『ひとつは、作家になること。もうひとつは、僕が立派な魔法少女になって、雅の実家を見返してやるの! お前らが捨てた雅にどれだけ救われたか、雅がどんなに立派な人だったか、思い知らせるんだ』
ルナの笑顔はどこまでも行けそうなほど力強く、ルナ、という月を意味した名前通り、眩しかった。雅が感極まってぽろぼろと涙を零し、ルナが大層慌てたことは、2人だけの秘密である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます